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異世界転移ノ魔術師々  作者: 両翼視前
第二襲 災炎嵐龍編
13/85

仮面の殺戮者は艶やかに笑う ――スマイル・イン・マスク――

2020/04/17

後半をヴェール視点に分かりやすくなるようにしました!

「食堂は閉店(へいてん)したわよ――こんな大火事(おおかじ)じゃあ継続(けいぞく)不可能ねぇ……」


 (キリエ)は独りで食堂に突撃した――中で仮面をつけた女性が口を歪ませながら佇んでいた。


 扉から窓付近に【絶対防御壁(バリケード)】が召喚される。

 どうやら、私を殺すまで逃がしてくれそうにもないようだ。


 仮面は覗き穴から妖艶に紅く滲むように光り、右手に刀を、左手にがたいのいいニヤ族の男の首の根元を持っていた。


 男の傷は酷かった――胸には刀で切り刻まれた傷、両腕は無残にも切り落とされているし、全身が焼け焦げていた。

 かろうじて息は残っているようだが――多分、もう助からない。


 辺りを見渡せばテーブルに座っている人たちも全身焼かれていた。炭になりかけ……ってところか。

 食事や友達との会話を楽しみにしてして来たものがいただろうに、こんな形で火葬されに来たわけではない。


「こんな殺し方、間違っている……」


 静かな怒りが私の中ではじけ散った。


魔術書(アルバ)ッ! 魔具召喚魔術(まぐしょうかんまじゅつ)――【旋風刃(せんぷうじん)】!」


 私は魔術書を瞬く間に出現させて、腰に旋風刃という刀を召喚させる。


 右手で構え、怒る気持ちを刀に込める。


 ――刹那の速さで仮面の女の目の前へ飛び込むように抜刀した。


 この間合いなら切れる……!


 そう思った矢先――仮面の女が男を身代わりに前へ突き出してくる。

 勢い付けた刀は止められない。だが、

「――【旋風の舞】!」


 刀の刃を風に溶かして、男に向けて振り上げる。


「ほぉ――やるわね」

「魔術発動!」

 叫ぶ――風と一体化した刃が、徐々に徐々に女の近くへ8本展開され、切りにかかろうと狙いにいった。


「柔軟――効かなくて残念」

 仮面の女は男を雑に投げ捨てると、刀を構えた。

 綺麗な白紫色の髪を揺らしながら、避けられるものは最低限の動きで避け、当たりそうなものは刀で受け止めて弾き飛ばす。


 八本の刃が女を切り終わった時、

「魔術解除!」

 叫ぶと、風の刃自然に溶けるように消滅し、旋風刃に刃が戻ってくる。


 刀が元に戻ったので即座に切り上げたが、女の刀で造作もないように受け止められてしまった。


 ――快音が食堂に鳴り響く。


 音の波で辺りを燃やしている炎が揺れる。衝撃で飛び散った灰でむせそうになるが少し我慢する。


「ねぇ――少し殺し合いを……しましょ!」


 女はそう言うと、仮面から紅く焼けるような光を覗き穴から滲ませる。


「……!」


 なぜか、この女から懐かしいオーラがする。ムシャノ村から感じたことがあるような懐かしい感じ。

 しかし、¨半分¨は違う――どこか造り替えられたかのようなおかしさを感じる。


 この女――まともな人間じゃない!


 私は一歩、後ろへ間合いを取るように退く。


「では、本気――出すわね! 魔術書……!」


 仮面の女は魔術書を出現させる。


「魔具召喚魔術――【永炎刃(えいえんじん)】!」


 魔術書のページを破り捨てると、今もなお、食堂を燃やしている炎、人を燃やしている炎が左手に集まってくる。

 仮面の隙間から紅い光が漏れた時、



 ――集まった炎が刀の形になり、辺りを爆発させた。



 私は爆風で吹き飛ばされそうだったので、その場で刀を突き刺す。


 焼かれていた死体は一瞬で灰になり、一瞬で散らばる。

 立ち込める白い煙を凝視する。仮面の女から徐々に煙が離れていくと――キリエは言葉が出なかった。

 名前を聞いてまさかと思ったが、永炎刃という刀はかつてムシャノ村の鍛冶師によって造られた炎の魔力を持つ者に向けた刀だった。

 覚えている限り、ムシャノ村で炎の魔力を持つ者は1人しかいない。


「義姉……? ホムラ姉ェなのか……?」


 女は仮面の下から不敵な笑みを浮かべる。二刀を握っても艶やかなことには変わりはなかった。


「魔術発動」


 右手と左手の刀を交差させて、

「【永炎(エターナル)焔翔鳳・フェニックス】!」

 右手の刀を左手の刀にこするように振り下ろした。


 ――まるで、鳳凰のような形を模した炎の魔力が剣先から放たれる。


 当たれば焼き死ぬ絶対絶命の中、気持ちを落ち着かせた――。


 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


【ヴェール視点】


『レイド。レイド。――魔獣発生。近隣の皆様は避難、近くにいるギルドは討伐をお願いします』


 マナ・リアに警戒アラームが騒々しく鳴り響く。


「さて……、どうやって殺そうか……?」


 アルムとハイネに一般人の避難誘導させて、我は暗曇鯨(あんうんげい)ダクエールをどう殺そうか悩んでいた。


 キリエを追いかけたが、入口目の前のところで【絶対防御壁】に阻まれてしまったし、何者かによってダクエールが召喚されていた。


 暗曇鯨ダクエール――32mもある黒い体毛で覆われた鯨。潮を吹けば、10km圏内の建物や人々が被害にあう。潮は酸性雨のように当たればなんでも溶かしてしまう。


 さて、我はどうやって対処しようかと考える。

 しかも、上空にいるから攻撃当てづらいし。


 「はぁ……」っとため息を吐いて、息を吸う。


 我は綺麗に1本にまとめたポニーテールからシュシュを外す――虹の光のように煌びやかに光ると、瞬く間に成人体型に戻った。


「魔術書! 魔具召喚魔術――【極光弓(きょくこうきゅう)レインボーラ】!」


 出現させた魔術書からレインボーラという弓を召喚し、手に持つ。

 久しぶりに魔鉄(まてつ)という素材で出来た武器を持つから重たくてたまらん。

 だが、命の重さを感じるには丁度よい。


 右手に魔力を創り出し、矢の形に変形させる。

 弓に矢を添えて、弦と一緒に引っ張る。


 ダクエールは吞気に空を飛んでいる。回りにストレスを加える前に消滅させようと考える。


「魔術発動! ――極光魔術「(こう)(さん)!」 

 発動と同時に矢は空へダクエールを狙って解き放たれた。



 ――一寸の虹の光が空に弧を描くように向かっていくと、空を飛び続けるダクエールに見事、直撃した。



 ダクエールの断末魔が都市にけたたましく鳴り響く。


「「光」になれ!」


 我が叫んだ直後、――ダクエールは光の粒子となり、空に綺麗な虹を残して消滅した。


 気持ちを落ち着かせるように息を整えると、町の建物の陰で白い喪服姿の怪しい男が魔術書を出現させているところを目撃した。


 やつは魔術書を消滅させると、建物と建物の隙間へ行方をくらませる。


 そんなことよりも、見るも無惨に焼き焦げてしまった食堂〈ニヤの尻尾〉へどう入ろうか考える。


 中で戦っているだろう――キリエを助けるために。


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