春よ、来い!
季節の国
ねえ! 戻ってこれたわ、 わたしたちの、 季節の国よ!
ふむ! いまはなんでもない季節の国、 ですがな! いや! 一時はどうなることか! あっしは春の国の宝物殿にあのまま、 閉じ込められるかと思いましたな、 永久に!
あら、 そんな意地悪はしないでしょう、 精霊王も、 うふふ。
ふむ、 しかし、 入り口も出口もない部屋というのは恐ろしいものですな! あの場所、 あっしはもう息がつまりそうで……! そう! 姫さまの窓辺をみならって窓くらいつけりゃいいんだ!
ええ、 風を感じられるって素敵なことなのね、 わたし知らなかったわ。
ふむ、 広場から飛び立った鳥の羽ばたきがいまこうして姫さまのまつげを揺らしておられますぞ、 ……それで、 その春の指環はどうやって使うんですかな?
あら、 指にはめたらいいんだわきっと。
ふむ、 それが本当にこの、 なんでもない季節になってしまった、 この国に春を戻してくれるのですかね?
ええ、 とにかくやってみましょう! ……あら。
ふむ! どうしました! 姫さま?!
ね、 この指環ぶかぶかだわ。 寒さのせいかしら、 このまま握ればいいかしらね!
ふむ、 ですな! 姫さまのそのちいさく華奢な指先には、 ああ、 すこし大きすぎる!
うふふ、 きっと春の精霊王に合わせて作られたんでしょう…………、 あ! 声が、 声が聞こえてくるわ……!
ふむ! なんと? 精霊王か……?!
——季節よめぐれ! 我らの元に! いま、 春よ、 来い!