宝物殿
場所 春の国 宝物殿
人物 ネアラ —— 季節の国の王女 姫
フーム —— 姫の世話役 大臣
春の国 宝物殿
奥行きのある広い石の空間に白い柱と彫像が立ち並んでいる。
ふむ……姫さま、 いかにも、 ここが?
ええ、 春の精霊王の言っていた宝物殿だわ。
ふむ! しかし宝物殿にしては地味! あっしは姫さまの宝石箱のようなものを想像していましたが、 ここは宝物殿というより……神殿か何か、 か?
ね、 春の国に着いたとき、 まぶたにふれたあのまぶしさは感じられないわ、 風も止まってる。 でも彫像が素敵ね! あら、 あの天使、 頭がとれてるわ。 腕もないのね? でも……翼があるわ。
ふむ、 あれは女神ですかな、 翼は生えておりますが、 飛べずにもう数千年、 つまり空を見上げるのがイヤになり、 どこかへ首を落としたのかもしれません。 さ、 春の指環はどこだ? ああ……場所を聞いてくればよかったですな、 姫さま?
あら、 場所ならもうわかってるわ! 見て! まっすぐよ! ほら!
ふむ? いやいやあっしには何も……? 姫さまの目は鳥のように遠くまで見通せる千里眼ですからな、 しかも鳥とは違って夜の暗闇でも……。
ねえ、 ここにあるものはどうしてひび割れたり壊れたりしたものが多いのかしらね?
ふむ、 古いものですからな、 石やら陶器やらばらばらのかけらになったものをまたつなぎ合わせたりと……。 お! それがもしや!
ええ、 これが春の指環……春の記憶をぜんぶ閉じ込めちゃったみたいに……きれいね。
ふむ、 さすが春の国の宝! しかし無造作に、 こんな台座にころんと置いてあるとは!
あら、 誰も盗ったりしないし、 できないわ。 だって、 ここには入り口も出口もないんでしょう?
ふむ、 ですな……つまり我々も外へは出れませんぞ。