第24話.二回戦進出者(消す)
目を覚ますと見覚えのある天井を見上げていた。
「・・・・・・そうだった。」
刺されて意識を失ってたんだ。
『カイン・・・目を覚ましたか』
刺された二ヶ所に傷跡がないことを確認し、首を傾げていたカインにイヴが安堵の声を上げる。
「・・・・・・カイン君良かったです・・・。」
「・・・・・・起きるの遅い。」
どうやらみんなに心配をかけてしまったようだ。
「全く二ヶ月前に死にかけて運ばれてきたかと思えばカイン。君はそんなに医務室が好きなのだね。」
コルがため息混じりにカインを見やる。
「返す言葉もないよ。」
「こっちも忙しいんだ。面倒事を増やされると困る。」
「ごめんねコル。」
「ふん!まぁ、今回は傷が浅かったしそこまで手間取らなかったから許してやる。ワシは寛大だからな。」
カインは苦笑する。
「そういえば・・・オリンピアの一回戦どうなったの?」
『もちろんお前の勝ちだ。他のグループも大体二回戦目の出場者が決定している。』
「じゃあ、僕の相手も決まったんだね。」
『あぁ、確か名前は・・・・・・。『纏雷姫』』
「・・・ルエリア先輩だね。」
重々承知していた。
Sクラスの出場者が多いから、いつか当たるだろうという事を。
しかし、その相手が序列五位とは・・・・・・。
「これは・・・・・・。」
「・・・・・・あなたは勝てない。」
ソフィが無表情のまま・・・どこか言いにくそうに告げる。
「うん。だけど精一杯やってみるよ。」
本来Sクラスは一年のレイを合わせ十三人いるため、オリンピアには三人出ていない事になる。
理由は噂でしか聞かないがどうやら、不登校・・・という事らしい。
そのため、今年のオリンピアは比較的Sクラスが少ない出場ということになっていたのだが、その分Sクラス生徒達一人一人が常軌を逸している。
「ルエリア先輩・・・か。」
ルードとは比べ物にならない程に繊細な魔力コントロールに長けている上、強力な魔法を駆使する『纏雷姫』
本気の彼女を見たとある人間は、こう言ったという。
『その姿は正に雷霆。人でありながら自然を司る神のごとき力。』
それからというもの彼女は『纏雷姫』と呼ばれるようになった・・・とか。
「あの『纏雷姫』の戦闘を見たけど、彼女雷だけでなくあの武器蛇腹剣もなかなかに厄介ね。」
彼女の特徴はその、最高峰の雷魔法だけではなく得意武器である蛇腹剣。
ムチのようにしなやかに振るうその蛇腹剣は、まるで彼女と一心同体。
手足のように軽々と扱い、相手を翻弄する。
オリンピア開始前に、優勝候補とSクラスの以前のオリンピアでの戦闘記録には一応全て目を通している・・・が、この一年でどこまで変化しているのか予測がつかない。
「やれるだけやるしかない・・・ね。」
カインは医務室のベッドから立ち上がる。
「コルありがとう。また迷惑かけるかもしれないけど、よろしくお願いします。」
「ふんっ。ほんと迷惑ったらありゃしない!!」
そっぽ向くコルを微笑ましく思いながらも医務室を後にする。
「・・・・・・お腹空いた。」
ぐぅーと腹の虫と共に口から漏らしたソフィに、皆で笑いあって食堂へと向かった。
途中で昼寝していたガブリエルとも合流し、ソフィ、リゼ、カインの四人は食事をとっていた。
何やら食堂内はザワついているようだが、カインはオリンピアだからであろうと判断し、それを気にせず食事を続ける。
「ところで・・・他の一回戦それぞれ誰が勝ったのか聞いても良い?」
『まずは次対峙するルエリア。そして、Bグループはまず一人目『刀鬼』だ』
「ハルヒメ先輩・・・だね。」
初対面であまりの口の悪さに先輩ということは忘れていたが、実力は目の当たりにしているためやっぱりか。とカインは頷く。
『相手もかなり強かったけどな』
対戦相手はAクラスの生徒だったらしいが、驚く程に呆気なく終わった。とイヴは続ける。
「まぁ・・・ハルヒメ先輩が強いのはあの時から知っていたから・・・。」
『だな』
どうやら、イヴもハルヒメ先輩には一目置いているらしい。
『Bグループ二人目は、ヨシュアっていうAクラストップの生徒よ。『大聖女』と長時間の戦闘の末勝利したぞ』
「Sクラス二年生の生徒を!?」
確かに大聖女・・・サラ先輩は、戦闘に不向きだがそれはSクラスの中での話だ。
Aクラスよりも近接戦闘に優れている格闘術の持ち主。
ユーリや僕と同じように強化魔法を施して戦うスタイルでサラ先輩が負けるとなると・・・。
「じゃ、じゃあ。ヨシュア先輩はSクラス昇格がほぼ決定した・・・って言うことですよね?」
可愛らしく首を傾げ、イヴに問いかけるリゼ。
『詳しくはわからんが、俺はそう思って良いと思う』
「ヨシュア先輩・・・。」
二時間ほど続いた戦闘だったが、カインが目覚める少し前に決着がついたという。
『Cグループは一番の激戦区だったな。全員Sクラス生徒だったから』
正直、Cグループが一番注目されていたと言っても過言ではない。
何故なら序列二位と三位が戦い、十二位と六位が戦う激戦区だったから。だ。
『勝者一人目は、Sクラス三年生序列二位アヴァンス・ルール『鋼の制約』だ』
「やっぱり・・・ね。」
アヴァンス・ルール。
この学校の生徒会長であり、レイが入学してくるまでは序列一位だった過去の最強。
どんな攻撃も特異魔法『鋼魔法』で防ぎ、防御に徹するかと思えば、鋼を用いて凄まじい威力の攻撃を繰り出す男。
強靭な肉体を持つその男は、黒髪短髪で厳つい面持ちをしているが心優しい性格をしているという。
今尚、生徒間ではアヴァンスこそが序列一位派とレイこそが序列一位派が争いを起こしているとかなんとか。
「でも、相手も強かったさ。確かー・・・Sクラスの三年生の・・・ホワンだったね?『蒼の剣豪』って呼ばれてたね。」
眠たそうに欠伸をしながら、ガブリエルは言う。
「ホワン先輩・・・か。」
遠目でしか見たことがない。
金髪にピンクのメッシュが入っており、爽やかな笑顔が取り柄だが基本的には気だるげで何をやる時にも否定から入っていた。
そのためたかが平民だと一部の貴族からバカにされていたが、得意な水魔法とその剣さばきを見せ黙らせたという逸話がある。
『この戦いも、一時間半で決着が着いてたな。』
最後は、アヴァンス先輩の拳が届いてホワン先輩が膝を着いて負けを認めた・・・らしい。
「Cグループ二人目は、Sクラス二年生序列六位のアッシュ・フィーロ先輩だよ!『白蜘蛛』の二つ名持ってる先輩!」
リゼがイヴに負けじと、カインに説明。
「あらー。イヴ。せっかくの活躍の場を失って残念ねぇ。」
『うるさい黙れ』
アッシュ・フィーロ。
少年のような笑みを浮かべる白い髪を持つ、ポジティブな男。
特異魔法である糸魔法の使い手で、戦闘中に繊細すぎる魔力行使を行い敵の周囲に糸をばら撒く。
鳥籠の中の鳥さながら捕まった敵は次第に近づいてくる無数の糸に身動きが取れなくなり拘束されることにより『白蜘蛛』の異名が着いたとされる。
だが、相手もかなりの実力者。
『序列十二位、アトラム。・・・・・・まさかまだあの家系が。』
イヴがボソッと呟いた言葉が耳に入ったのはガブリエルのみ。
「アトラム先輩・・・ですね。私あの人苦手・・・です。」
リゼがそういうのも無理はない。
彼の人物像と言えば、制服は来ているが顔は常に黒い布で覆っており、彼自身の詳細は不明。
二つ名無し。
しかし、Sランクにいる事で当然分かる事だがこの学院でもかなりの強者で、『闇魔法』を得意とする人物らしい。
噂によれば・・・この世界の裏に関わる一族の一人とかなんとか。
『まぁ、とりあえずCグループはそんなとこだ』
イヴは咳払いをし、話を続ける。
『Dグループの一人目は、Sクラス二年生序列九位ソレーユ・ローズブレイド。確か『聖戦乙女』って呼ばれてたな』
綺麗な長いブロンドへアーでハーフアップにしており、一見本当に慎ましやかな貴族の令嬢にしか見えないが、どうやら毒ばかり吐くという。『毒舌令嬢』などとも言われているが生徒間ではルエリア、サラ、ソレーユの派閥で争いが出来ているとかなんとか。
光魔法を得意としている剣士で、プライドが高く自分より弱い人間には一切興味を持たない二年生。
男性には厳しいが同性からすれば頼りになる存在だと、リゼは興奮したように語っていた。
ローズブレイド公爵家の貴族令嬢として育った彼女だったが、自分の意思でこの学園へ。
そしていつかは冒険者として旅立つ事を志しているらしい。
相手はAクラスだったらしいが、ハルヒメ同様呆気なく相手を払い勝利したらしい。
『まぁ・・・二人目勝者はAクラス生徒だったが、相手を小馬鹿にするようなことばかり言ってたから省くか。確かあいつはお前にもあんな態度だったか。』
「ガドウ・・・先輩だよね・・・。」
どうやらあの人も勝ち進んだらしい。
Eグループ・・・残るはレイと序列四位のみとなった。
『まずは・・・序列一位について・・・』
「レイ君だね。」
「レイさんは、眼力だけで相手を降参させてたよ!」
まぁ、相手は序列一位。
そうなるのも無理はない。
「序列四位・・・ウィズ先輩は?」
イヴは先程よのガドウの時よりも嫌悪感を抱いたような声色で話す。
『二人目の勝者は・・・Aクラスのセルビオという男だ』
「なッ!?相手は序列四位のウィズ先輩だよねッ!?」
ここで合点がいった。
今食堂がこんなにも騒がしいのは・・・おそらくは序列四位が負けてしまったからであろう・・・と。
『魔道具少女』と呼ばれているウィズは、数々の魔道具を駆使して戦うSクラスの三年生であり、見た目はコルと引けを取らないくらいには幼く可愛らしい。
茶髪でサイドテール。前髪に星の髪留めを付けているがその見た目に反し魔力量はSクラストップである。
序列四位にまで上り詰めたその実力は、本物であり幼い彼女をバカにするものは一人もいない。
そんなSクラス序列四位が、Aクラスの生徒に負けたなどと未だに理解し難い事実にカインは思考が一瞬停止する。
『正直に言うと・・・あの男はもう序列一位にも匹敵する』
「レイ君に・・・!?」
何故そのような男が今まで、Aクラスに存在していたのか。
『あの男・・・セルビオは、必要以上に彼女を痛めつけていたぞ』
序盤はウィズ優勢で戦闘が進んでいた・・・がセルビオは全くと言っていいほど魔力消費などして居らず段々とウィズが不利になっていたと言う。
オリンピアのルール上相手が気を失う、または降参する。以外では反則などでしか終了することが出来ないため彼はずっとウィズを弄び続けた。
倒れ込んだウィズの頭を足で踏みつけ高らかに笑う。などの目を逸らしたくなる行為が散々行われていた・・・という。
「ウィズ先輩はどうなったの?」
「・・・・・・今は自室で休んでる。」
今まで口を開かなかった突然のソフィの言葉に、カインは一瞬肩をビクッと震わせソフィを見やる。
「・・・・・・ウィズは優しい。あの男は許せない。」
「へぇ・・・ソフィが・・・。」
ガブリエルは感動したように呟く。
今まで人に興味を抱かなかったソフィが他人に情を抱けるようになったからであろうか。
「セルビオ・・・・・・。」
しばらく沈黙が続いたあと。
皆食事を取り終わりそこで解散となった。
何故セルビオという男がそこまで強くなったのか・・・
そして何故今まで、その頭角を表すことがなかったのか・・・様々な疑問が浮び上がる中、カインは明日のルエリア戦に向けて更に強くなるべく・・・夕方にイヴと共に冒険者ギルドへ向かう。
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