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第19話.恋する乙女

 

「・・・・・・カイン。今までごめん。」


 これで何人目だろう。

 今まで僕をバカにしていたFクラスの皆が一人一人僕の席に来ては謝罪をしてくる。


「・・・・・・うん。入学してから数ヶ月。悔しかったこともあったけど・・・。」


 それでも、彼らはあの日以来強くなろうと決心し改めた。

 だから僕は・・・。


「これからは、同じFクラスの・・・いや上を目指す仲間として・・・よろしくね。」


 イヴは『都合が良すぎるな。』とキレていた。

 リゼさんからは怒られてしまった『甘いです!』と。

 ユーリは笑っていた『そんなお人好しすぎるとこも君だ。』と。

 ソフィは・・・・・・『もぐもぐ』うん。ソフィは通常運転だ。


「自分のしてきたことを・・・考えてたんだ。お前には・・・・・・。本当に・・・ごめん。」

「うん。もう大丈夫だよ。」


 ユーリが担任としてやってきた数日前から、Fクラス全体が変わり始めている。

 その事実が僕としては嬉しかった。




 ─── キーンコーンカーンコーン




 いつも通り修練場でユーリの指導の元戦闘訓練が始まり、皆切磋琢磨し合いまたチャイムがなれば、授業が終わる。

 そんな当たり前と化している日常を終え放課後を迎える。


 放課後の教室は、夕焼けが差し込み外に見える日常はとても綺麗なものに見えた。

 大切な人々だけでなく、そこにいる誰かを・・・この景色を守りたい。

 そう思えるほどに。


「カイン君!」


 誰もいなくなった放課後の教室で、夕焼けに照らし出された景色をぼんやりと眺めているとリゼが教室へとやってきた。


「リゼさん?どうしたの?」

「あのね。もし時間空いてたら食堂で食事なんて・・・どうかな・・・って。」

「大丈夫だけど・・・多分僕の知り合いも一緒になるけど・・・リゼさんこそ大丈夫?」

「あ・・・・・・そ、そうなんだ・・・。」


 一瞬しょんぼりとした表情を見せたリゼだが、『よ、よし。』と小さな声で呟きまた明るい表情を見せる。


「私は大丈夫だからお邪魔しても良いかな・・・?」

「うん。もちろん。」


 カインは立ち上がりカバンを片手に持ち、教室を出てリゼと共に食堂へと向かう。


「リゼさんは最近どう?」

「へ!?んーあー・・・攻撃魔法・・・が少し上手く行かなくて・・・。」

「攻撃魔法・・・か。僕じゃ力になれない・・・けどソフィなら・・・。」


『でも、ソフィは人と関わろうとしないしなぁ・・・。

 僕の時だって同じ契約者だからって事で仲良くなったし。』とカインは脳内で呟く。


「なんか私ね・・・。人に魔法を当てることが怖いみたいなの。」

「そう・・・なんだ。」


 もしかしたら、彼女も僕と同じ悩みを持っているのかもしれない。そう思うと少し返答が難しく感じてしまった。


「私小さい頃から風魔法が大好きで・・・。」

「風魔法・・・。」


 契約者となった以上、一応基本属性である風土水火雷の基本属性に適正のあるカインだが、何故か全属性まだ使えずにいる。


「風って・・・少し私羨ましいんだ。」

「・・・どうして?」

「だって・・・没落なんて言葉もないでしょ?貴族から言い寄られることも無い。」

「それは・・・。」

「いつだってどこへだって行けるし、何を考えなくっても心地の良いものとなって人々に安らぎを与えてしまう。」


『私の勝手な偏見だけどね』とこちらに笑いかけるリゼ。


「言葉もないし感情もないし諍いもないし・・・・・・穢れることも無い・・・。ただ流れに乗って吹けば良い。辛いことは何もないし悲しいことも何も無い。でも楽しいこととか嬉しいことがないのは少し悲しいかな。」


 彼女はあれ以前にどれほど、貴族に言い寄られてきたのだろう。没落してどれほどキツい目にあってきたのだろうか。


「優しい風になりたいな。誰かが辛い時包み込んで癒してあげられるような優しい風に。誰かが危ない時救ってあげられるような強くて優しい風に。」


 その表情はどこか儚く美しいものに見えた。


「私も覚悟を決めなくちゃ!誰かの隣に立つ強い人になりたいから!」

「リゼさん・・・」

「じゃあ行こっか!カイン君!」


 カインの手を握り、先導するリゼ。


「わ!ちょ!リゼさん!?」










 僅か数分で食堂へと着いた二人は、今更ながら自然と握っていた手に気が付き真っ赤になり気まずい空気が流れる。


「じゃ、じゃあ入ろっか。」

「そ、そうだね。」


 食堂内に入ると、奥側の席で何度も生徒たちが視線を寄せる程のかなり目立つ集団が席に着いていることを確認する。

 絶世の美女と言っても過言ではないガブリエル。

 ・・・・・・あとは、もきゅもきゅと既に食事をしている小動物らしき師匠の姿が。


「・・・・・・遅い。」

「遅いも何も・・・ソフィもう食べてるし・・・。」

「これでもソフィは結構我慢してた方だよ?カイン。」

「・・・え?これでですか!?」


 苦笑しながらそう告げるガブリエル。


「それで?カインその子は誰なんだい?」

「この子はリゼさん。僕の友達だよ。」

「は、初めまして・・・!リゼです!カインしゃんの友達やってます!!」


 噛んだ。

 盛大に噛んだ。

 そしてやってますとはなんだろう。


「・・・・・・この前の。」

「あ、あなたはカインくんのお師匠様ですよね?」

「・・・・・・そう。カインの師匠。」


 ソフィとリゼの会話が即終了したため、カインはリゼに隣の席へ誘導する。


「こっちどうぞ」

「あ、ありがとう」


 流石に初対面で、反対側のソフィとガブリエルの座る席へ誘導するのは、厳しいだろうと思っての判断だ。


「あらー。カインあんたも隅に置けないねぇ?」


 頬を真っ赤にしたリゼの隣に座ったカインを見てガブリエルは面白そうにつぶやく。


「隅に・・・?どういうこと?」

『こいつは、鈍感ってレベルじゃないんだよガブリエル。』

 「これは酷いねえ・・・・・・・・・。」


 全く分かっていない様子のカインにため息を吐くガブリエルとイヴだったが、カインは気にする素振りも見せずに立ち上がる。


「僕達も夜食頼みに行こっか。」

「あ、私はお弁当作ってきてるから、大丈夫だよ!」

『家事も出来るのか。得点が高いな。』

 「イヴは一人で何言ってるの?」


 あわあわと二人の喧嘩を止めようとするリゼと、一切を無視して食事を続けるソフィというかなりカオスなシーンを目の当たりにしたカインは苦笑する。


 「じゃあ行ってくるね。」


 食券機へと足を運ぶとあまり会いたくない人物に遭遇する。


「おい。」


 鋭い目付き。

 何度嫌悪感を抱いただろう。

 その声その目付きその顔。

 無数の嫌がらせを受けてきたが、この男ほどに嫌いだ・・・と思える人間はそうそういない。


「なに?」


 その嫌悪感が表情に出たのかカインは思わず顔を顰める。


「お前・・・今まで実力を隠してたのか?」


 なるほど。こいつは修練場での噂を聞きつけてわざわざこえをかけてきたのだろう。


「お前には・・・関係ない。」

「ちっ。こっちが優しくしてやったら強気に出やがって。」


 その瞬間、男はカインの胸ぐらを掴み食券機に押さえ付ける。


「・・・・・・やめろ。ベリル。」

「・・・何で今まで力を隠してやがった?」

「お前に話すことは何もない。」


 周囲から奇異な視線を向けられるカイン。

 ほかの三人は慌てることなくこちらの様子を伺っているが、リゼだけは慌ててこちらによってくる。


「やめてッ!カイン君に乱暴しないで!」


 カインの胸ぐらを掴んだベリルの手を必死に外そうとリゼは両手で思いきり引っ張る。


「リゼさん!来ちゃダメだよ!」

「・・・女。殺すぞ?」


 その目は本気でリゼに殺気を当てる。


「ひッ。」


 一瞬怖気付いたリゼだったが、涙目になりながらも必死に引っ張ることをやめない。


「は、離してください!」

「リゼさん!僕は大丈夫だから!あっちで待ってて!!」

「嫌です!!カイン君を離すまで私は止めません!!」


 必死に引き離そうとするリゼを見て、気を抜いたのかベリルの力が弱まりその勢いのまま肘がリゼの顔に直撃する。


「うッ!」

「・・・・・・!」


 その瞬間、何かがプツリと切れる音がした。


「・・・・・・。」


 カインは、右手で自分の胸ぐらを掴んでいるベリルの腕を強く握りしめる。


「ぐッいてッ!!」


 カインは、人が変わったようにベリルの腕を掴んだまま食堂外へと引きずる。


「何すんだッ!!離せッ!!」


 外へ連れ出したカインは、ベリルを睨みカインは殺気をなんとか抑え込み自制する。


「・・・・・・僕の前に現れるな。次に僕の大切な人達を傷つけようとしたら・・・。」


 傷つけようとしたら?ふと疑問を持ってしまった。

 殺すのか?ただ許さないのか?


「・・・・・・おい。カイン。」

「・・・なに?」

「俺と・・・決闘しろ。」

「・・・は?」


 思わず素っ頓狂な声を上げるカイン。


「俺は・・・俺はお前みたいないつも弱いくせにヘラヘラしているやつが嫌いだ。実力がないくせにこの学院に居座ってるのも腹が立つ。」


 好き嫌いはその人の自由だ。

 だが、それを直接人に向けるのはただの迷惑でしかない。

 ・・・ってベリルに嫌悪感を抱いて接してる僕が言っても意味無いか。


「・・・・・・もし僕が勝ったら。もう二度と僕と関わらないでくれ。」

「・・・・・・はっ。もう勝つ気でいるのか。場所はいつも使ってる修練場。日時は明日の正午だ。」

「・・・・・・。」


 カインはそれを聞き届けると、何も言わず食堂へと踵を返す。


「それと・・・あの女に・・・すまねぇって言っといてくれ。」


 立ち上がりながらベリルはつぶやく。

 それすらも無視してカインは、リゼのいる場所へと戻る。






「リゼさん!!大丈夫?」

「う、うん。軽く当たっただけだから。」

「そっか。良かった。」


 ベリルの肘が当たった頬を安堵の表情を浮かべ、左手で撫でるカイン。

 そこで何故かリゼが真っ赤になっていることに気がつく。


「どうしたの?リゼさん?」

「ひゃ、ひゃい!あ、あのーカ、カイン君・・・。少し・・・恥ずかしい・・・かな。」


 そこで自らのした行動を振り返り、リゼと同じように顔全体が赤くなるカイン。


「ご、ごめん!!」


 顔を逸らし二人の間には謎の沈黙が生まれる。


  『初々しいな。』

「そうねぇ。見てるこっちが恥ずかしくなっちゃう。」

『それはそうと・・・・・・あいつの成長は目を見張るものがある。』

 「正直それには私も同意ねぇ。まぁ。ソフィの方が凄いけれど。」

『いや、カインの方が凄いな。』


  そこから謎の張り合いを始めるふたりを眺めながらリゼ達は、気を取り直して食事を楽しみカインは来たるべき明日に備える。

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