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第14話.自由都市リベルタス

 

「ふぁーあ。」


 夢も見ずに快眠したカインは、ベッドから起き上がり寝巻きから学生服へと着替える。

  どうやらイヴは、あの傷で予想以上に疲弊しているらしく今日は部屋で大人しくしているとの事。


 マスティマ学院は休みの日に私服などは許されておらず、外出の際にも必ず学生服で。というのが決まりである。

 無論例外もあり、大型連休のある夏と冬は、服装の自由なども許されている。


「でも、外出って・・・一体どこにいくんだろ・・・。」


 準備を終え、食堂での別れの際指定されていた朝九時に正門前へと到着する。

 そこで、顔見知りの人物と遭遇する。


「・・・あれ?カイン君・・・!?」

「ん?あぁ!リゼさん。久しぶり」

「うん!こんな朝早くから外出?」

「あーちょっとね。師匠と・・・。」

「師匠?」


 リゼがその言葉に可愛らしく、首を傾げる。


「ん。時間通り来た。偉い。」

「ソフィアさん。僕子供じゃないんだけど。」


 カインより十センチほど低い身長で背伸びしながら、頭を撫でる。

 師匠という立場にある以上、どうしても年上っぽさを出したいのかもしれない。

 同い年なのに。


「カ、カ、カ、カイン君・・・?その可愛らしい女の子は誰・・・?見たところうちの制服来てるけど・・・。」

「今朝マスティマ学院長から、全生徒に魔法通達便届いてるはずなんだけど・・・見てない?」

「あ、何か『異国の魔法師』が学院に編入する事になって、『序列零』としてSクラスと合同授業することになったって話?」

「そうそう。」

「もしかして・・・その子がその『異国の魔法師』さん?」

「うん。彼女とは少し前に面識が出来たから昨日から弟子入りすることにしたんだ。」

「・・・そう・・・なんだ・・・ね。そっか!頑張ってね!あ!私はバイトあるから!」

「ありがとう。あ、リゼさんもバイト頑張ってね。」

「うん!ありがとう!」


 そう言って彼女は正門前の転移門へと入っていく。

 どこか悲しげな表情をしていた彼女に気が付きながらもまだ付き合いの浅いカインは踏み込めなかった。

『カインの隣に立つに相応しい存在になりたい。』

 そんな彼女の思いすら今はまだカインには届くことは無い。


「・・・ソフィにも分かる。カインはバカ。」

「何で!?」


 ソフィは、驚いているカインを無視し転移門へと近づき転移する場所を指定する。


 この正門前の転移門は、『聖皇国ヤハウェ』『自由都市リベルタス』『アイアス王国』の三国のそれぞれの都市に自由に行き来できる便利な移動方法だ。


 行き先を、自由都市リベルタスに設定しソフィは転移門を起動させる。


「リベルタスに行って何するの?」

「・・・カインの冒険者登録。あと美味しいご飯。」

「え!?BからSは授業でも冒険者として活動することはあるけど、Fクラスの僕には認められてないよ!?」

「・・・マスティマから許可もらった。」


 ソフィの言葉ににカインは安堵する。


「『死んだら死んだでその程度だった』マスティマはそう言ってた。」

「・・・今の学院長の真似?」

「・・・ん。」


 あまりにも精度の高いその声真似に思わず、本人がこの場にいるのかとソフィの方へ振り向いてしまったカイン。

 そして、目的は恐らく冒険者登録ではなく、食事だろうな・・・と思ってしまったのであった。













「やっぱ何度通ってもこの転移門の、浮遊感には慣れないな・・・。」


 カインは深呼吸し、自由都市リベルタスの新鮮な空気をめいっぱい肺に流し込む。

 自由都市リベルタスの最大の特徴。それは、リベルタスは表立っては『国』として世界からは認められてはいない。という事だ。

 数百年前まで確かにここは、リベルタス共和国という国だったが崩壊して以来、この土地で力を持つ権力者が『自由都市リベルタス』という名をつけ管理し始めたという。


 管理・・・とは言っても、犯罪者に対する警備隊の配置や商人たちや国外の人々に対する入国審査場所の設置、そしてその権力者と数人によるリベルタスにおいての法の制定である。

 自由都市リベルタスは、犯罪において他国とはまた違いより厳重な罪に問われることがある。が犯罪などしなければ、自由都市リベルタスという場所を存分に満喫することが出来るのだ。

 尚、今もその権力者の血縁である後継者たちがこのリベルタスの責任者として存在している。


 そんな自由都市リベルタスの中心、『フェロニア』は色々な国々からの商人たちが集まっているため、珍しい買い物が出来たり珍しい食事にありつけることも多々ある。

 石造りの巨大な建物ばかりあるのが特徴で、そのほとんどがフェロニアにおいては様々な国の商店である。

 観光客などが多く、フェロニアは人で溢れている。


「ソフィアさん。これからどう・・・っていない!?」


 フェロニアに設置されている転移門。

 視線を右へやると既にソフィの姿はなかった。


「・・・・・・カツヲの串焼き・・・。」


 辺りを見回すと少し離れた場所でじゅるりという擬音が聞こえてきそうなほどに、一つの商店の串焼きに釘付けになっているソフィを発見する。

 まぁ、彼女の表情筋は死んでいるのだがそこは置いといて・・・。


「お、ソフィちゃん!久しぶり」

「ん。久しぶり。いつもの五個・・・。」

「毎度あり〜!!いつも四個なのに珍しいな?そんなソフィちゃんは常連さんだからおまけに二個ッ!!」

「!!ありがとう・・・。」


 一瞬少しパァっと表情が明るくなった気がするソフィだが、カインはその様子など見ておらず目を離した隙に居なくなったソフィに駆け寄ってきた。


「ソフィアさん・・・・・・はぁ、はぁ。ビックリしたよ。いきなり隣居なくなるんだから。」

「・・・・・・。」


 モグモグと紙袋に入った串焼きを食べるソフィ。


「・・・・・・ん。弟子だから上げる・・・・・・一個だけ。」

「え?あ、ありがとう。」

「・・・・・・一個だけ。」

「うん。ありがとう。」


 一つ受け取ったカインは、串焼きをパクリと食す。


「うわッ!!美味しい!!なにこれ!!」

「あげない。一個だ・・・」

「分かってる分かってる。」


 別にまだ欲しいと思ったわけじゃなく、単純に驚いていただけなのだが・・・。


「・・・次行く。」

「もう食べ終わったの!?」


 六個ほどあった、串焼きをカインが食べ終わると同時に全て平らげていたソフィに驚きつつ、カインは黙ってソフィの後を着いていく。


 一緒に歩いていて分かったことだが、ソフィアさんはどうやら自由都市リベルタスの食べ物を取り扱う商人達にとって上客であるらしい。が金を払う上客という理由で商人達から声をかけられる訳じゃなく、ソフィ自体が愛されているとカインは感じていた。


『ソフィじゃないの!久しぶりだね!どうだい!おまけするけど、異国の料理カリー食べていくかい?』

『ソフィアちゃん!こっちは最近巷で流行りのタピーカを新作として出したんだけど飲んでかない?感想聞かせてくれたらタダだよ!ソフィちゃんのお友達なら君も!』

『ソフィさんじゃないですか!どうですどうです。今回は貴女でも厳しいでしょう?火山地帯に住む炎鳥の激辛熱々大盛りタイムアタック!!今回は負けませ・・・ッてもう負けちゃってる!???』


 様々な所から声がかかるソフィ。

 そんな本人は嫌な顔せず一つ一つ(こな)していく。


「・・・・・・けぷ。」


 お腹を膨らましたソフィは、満足行ったのかお腹をさすり公園のベンチに腰かける。


「・・・・・・美味しかった。」


 時計を探すと、中央の噴水の辺りに時計が立っていたので見やるとまだ、一時間程度しか経っておらず門限までの猶予は半日ほどあった。


 ソフィは、ふぅ。と呼吸を整えるとすぐに立ち上がる。


「そろそろ行く。」

「冒険者ギルド・・・。」


 登録をしておらず未知の場所である冒険者ギルド。

 カインは緊張を抱きながらソフィと足を運ぶ。

 人通りは相変わらず、多くすれ違う人達の中には見たことない服装の人なども居る。

 恐らくは他国からの観光客なのだろう。


「ソフィちゃん!今日は寄ってかないのかい??」

「・・・ん。やる事ある。また今度来る。」


 途中途中ソフィに声をかけてくる商人達もいたが、ソフィは断りながら進む。

 どうやら、もう舌鼓を鳴らす時間は終わりのようだ。


「ギルドはどこにあるの?」

「・・・もう着く。角曲がって右にある。」


 ソフィのその言葉に従い後ろから着いていくと、数分後に巨大な建物が現れる。


「ここが・・・。」

「ん。冒険者ギルド。入る。」

「あ、ちょっと待っ!」


 ソフィに続き中へはいるカイン。

 中には魔法師であろう女性や、何かの武術の心得のありそうな厳つい男性。

 様々な冒険者の行き交う建物。


 そんな中、カインは注目を浴びてしまう。

 容姿はそこまで目立つものじゃないと自負している。

 顔は少し幼く見られがちだが、黒髪黒目に身長は173cm程度だ。


「おい、兄ちゃん。」


 厳つい男数人が、カインを取り囲む。


「な、んですか・・・?」


 数人はこちらに手を伸ばしてくる。

  聞いたことがある。冒険者ギルドでは度々こういうことが起きる。と。

 カインは覚悟を決めようと、身体強化魔法を・・・。


「嬢ちゃんの知り合いは大歓迎だッ!!」

「へ・・・?」

「あんた達、その子怖がってるんだからやめなさいよ!」

「「「「えー。」」」」


 厳つい男たちは、女性の叱責により『驚かせてすまねぇ』と謝罪してくる。


「今日は姐さんいねえのか?」

「ん。カインと二人。」

「カインってのはそこの少年のことか?」


 ん。とソフィは頷く。


「そうか、カイン。まぁ嬢ちゃんが連れてきたんだ。ギルマスから話は聞くだろうけど、よろしくな。俺はリーチだ。」


 厳つい男の一人・・・恐らくはパーティのリーダーなのであろうリーチは右手を差し出し握手を求めてくる。


「はい。よろしくお願いします。」

「はいはい。とりあえずここからは私が話を聞くよ。」


 メガネを付けた知的な印象を受ける髪を結んだ白髪の女性。


「私はこのフェロニア支部のギルドマスター。ヴァローナよ。」

「よろしくお願いします。カインです。」

「ソフィアさんが連れてきた・・・ってなると昨日の夜話した例の子かしら?」


 こくりと頷くソフィ。


「そう。一応マスティマからも話を聞いているしとりあえず支部長室に行きましょう。」


 受付の横にある階段から二階へと上がり、支部長室へと案内されたカインとソフィ。

 ギルマス直々に案内という稀有な状況のため、周りからの視線は痛かった・・・。


「とりあえず座って。」


 ヴァローナとは対面する形でソファに腰を下ろした二人。


「貴方がソフィアさんと同じ契約者・・・なのね。」

「・・・ッ!?」


 この世界における契約天学(フェアトラーク)とは、もう既に伝説のようなもの。

 何故、ヴァローナがその事について口を開いたのかカインは驚かずにはいられない。


「ぷ。安心してちょうだい。私はコルと同じような立ち位置よ。いわばマスティマの昔馴染みのようなものよ。マスティマ程ではないにしろ、イヴリールさん達も同様にね。」


 ギルドという巨大な組織の中にマスティマと繋がりのある人物が居た、それだけで驚くに値する衝撃があった。

 つまり、このヴァローナも数百年もしくはそれ以上の長い年月を過ごしてきた一人なのだ。


「マスティマから()()()()伝言よ。カイン君あなたにはこれからギルドを通じて様々なクエストを受けてもらうわ。」



pt評価やブクマなど是非よろしくお願いします。

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