第12話.纏雷姫ルエリア
暫く投稿してなかったので今日は二話目投稿します。
学院長室へ着くと、カインはドアを軽くノックする。
「どうぞ〜。」
小さな少年とも少女とも取れるその声は、マスティマのものである。
「やぁやぁー。数日ぶりだねカイン君。そしてイヴも。病み上がりで申し訳ないが直ぐにそこに座ってくれるー?」
部屋の奥の学院長の席に座るマスティマは、カインを目の前のソファに着席するよう促す。
対面して座るのは、ユーリとゲイル。
そして、少し離れた場所で壁に背中を預けているガブリエルとその横に立つソフィア。
「あぁ。彼女たちは僕が呼んだんだ。彼女たちは傭兵に近い存在だからねー。」
「私達のことはいいんだよ。早く話を済ませちゃいな!」
ガブリエルは、マスティマに軽く手の甲で払う仕草を見せる。
「じゃあまず。一つ目だねー。彼らの目的はなんだったと思う?」
マスティマの視線が向けられたのはユーリ。
「んー。そうだね。少し難しいけどアベルが時々漏らしていた言葉を端的に告げると『勧誘すべき人物』が居たから。じゃないかな。」
「正解ー。彼らが狙っているのは『レイ君』だねー。」
「なるほどなぁ。レイか。あいつは傍から見ると闇が深そうだしなぁ。俺からすればツンデレにしか見えねぇが。」
「レイ・・・君・・・っていうと、学院の序列一位である一条レイ君ですか?」
疑問に答えるのは爽やかな笑みを浮かべ頷くユーリ。
「うん。勇者の再来なんて巷では言われてるそうだね。実際僕も本気で行かないと負けちゃうかもしれないって思うぐらい強いよ。」
「んーや。それは言い過ぎだ。あいつはまだまだ弱い。俺から言わせてみれば雛鳥だ。とは言え・・・だ。やっぱ、アベル達から見てもあいつは危ういのか。」
脱線しかけていた話を戻し、ゲイルはつぶやく。
「彼が何を言われたのかは分からないけど。暫くは僕の監視下に置こうかな。」
淡々とつぶやくマスティマに意を唱える者はおらず、話は続けられる。
「二つ目。なぜ彼らは僕の留守を知っていたのかだねー。カイン君。」
答えてみて。と満面の笑みでマスティマがこちらを見る。
「普通に考えてみれば・・・内通者が居る・・・とかですか?」
「うんうん。そうだねー。教師か生徒かも分からない。正直どのレベルのスパイが潜んでいるのかも分からない以上手は出せないねー。」
「だなぁ。学院を囲う守護結界にすら反応しない外敵って言うんだから相当な強者だろうしなぁ。あまり騒ぎ立てねえほうが良いか。」
「正直、今は大人しくしておくのが一番って感じはしますね。」
ゲイルがため息を吐き、口にした言葉にユーリも同意する。
「だから、この際『あの大会』で炙り出すことにしたよー。」
「・・・・・・・・・は?マスティマ?何を言ってるの?あの大会・・・ってまさか・・・?」
「そのまさかだよ?総合学院の年一武道大会!『オリンピア』歴史ある大会の裏でスパイを消すなんて僕はしたくないけど・・・ね?彼らにバカにされたままじゃ僕の気が済まないし。」
『どうしたカイン・・・?』
イヴはふとカインがガッチリと石のように固まっていた様子に違和感を覚え思わず声をかける。
「オリン・・・ピア。」
順位変動性の学院であるマスティマ総合学院。
そんな順位が最も変動する時期が、『オリンピア』である。
ルールは簡単で一対一の勝負で魔法の行使はもちろんあり。
そして武器も申請を通せば戦闘に使う事を認められていて自らの力を最大限に発揮出来る試合条件となっている。
反則があるとすれば、申請許可無しの武器の持ち込み。
そして明確な殺意をもっての攻撃・・・だろう。
相手を気絶させたら勝ち。というシンプルなルールだが、
学院自体のレベルが高いため一回一回の戦闘が長時間続くこともある。
一年であるカインやレイなどは、入学試験で筆記や実技などをこなし順位付けされているが、レイは類稀なる才能と努力でなんと試験で序列一位と成っている。
無論、無能と呼ばれていたカインは最下位である534位。
「オリンピア・・・・・・。」
再度小さく震えた声で呟くカイン。
しかしこれは、全てが恐れから来る震えではなく・・・
「開催まで約二ヶ月・・・。」
強くなりたい。その気持ちから来る意思の表れでもあった。
「あ、学院長すいません。話の続きをお願いします。」
「そうだね。でもその前にカイン君に聞くことがあったんだったね。」
「・・・・・・!」
その瞬間。マスティマの雰囲気はガラリと変わる。
恐らく少し前までのカインならば失禁していたに違いないほどの殺気をまき散らしていた。
「『契約天学』を結んだみたいだけど。君の意思は固まったのかな?」
「・・・・・・はい。」
「前にも話した通りだ・・・。君がイヴと契約を結んだ以上、君は今までの生活には間違いなく戻れない。これからの敵は君を無能と蔑んだ周り。そして天使たちまでもが君を狙いに来るかもしれない。君は太刀打ちできるの?」
「・・・・・・僕は。強くなりたい。と思っていました。」
カインは確固たる意思を持ち、マスティマを見る。
「ですが・・・。そう思うだけで何も行動しなかった。」
「カイン・・・・・・。」
「僕にも守りたいものがある。」
育ててくれた孤児院の院長達。
そして、慕ってくれた可愛い双子達。
絶望から救ってくれたイヴ。
無能と呼ばれていたのに、関わってくれたユーリやリゼ。
「全てを守りたい・・・とは言えないです。でも。それでも僕は、自分の周りを守れるほどの強さを手に入れたい。
イヴと共に。」
「・・・・・・そうなんだ。ふーん。まぁ良いんじゃないかな?答えとしては及第点ってところだけど。」
どうやら『契約天学』については、カイン達が部屋に来る前にゲイルも予めマスティマから聞かされていたらしく、『契約天学』という伝説の中の言葉が出ても動揺を一切していなかった。
「君のその言葉はしっかり聞いたからねー。オリンピアで楽しみにしてるよ?」
「・・・はいッ。」
「よし。それじゃあ、後は教師たちの役目ってことでお前はもう行っていいぞカイン。まだその様子じゃ完全に体も治っちゃいねえだろ。ほら早く出てけ。」
しっしっ。と手で払う仕草をするゲイル。
不器用だがこれも優しさなのだろう。
「ありがとうございます。」
カインは立ち上がり、学院長室を後にする。
「ったく。あれはやり過ぎじゃないのかね。一介の生徒に向かってあれだけの殺気を・・・。」
「んー。そうかなー?僕の親友とこれからを共にする少年を見定めたかっただけ。なんだけどねー。」
「マスティマ・・・怖い・・・。お腹空いた。」
「もー!そんな脈絡のないソフィーちゃんも好き!」
「お前らも出てけや。」
「はぁ・・・。」
数週間ぶりの自室・・・。って感じがするな。とカインは脳内で呟き、天井を仰ぎみる。
「強く・・・か。」
天井に手をかざすカイン。
「修行・・・しかないよね。」
とは言っても具体的に?
武術の心得すらない。魔力の操作もまだまだ未熟。
契約天学すらも僕からすればまだまだ未知のものだ。
同じ『契約者』であり、魔法にも秀でて・・・戦闘にも長けている・・・人物・・・・・・なんて・・・・・・
『いるだろ?同じ契約者が』
「そんなの居な・・・いた!?!?」
ソフィア・シニエーク。
四大天使である熾天使ガブリエルと『契約天学』を結びし契約者。
固有武器である『水天錫杖』を使う魔法師。
「これほど師にうってつけの人は居ないな・・・・・・。」
カインは即座にベッドから起き上がると、ガブリエルとソフィアを探しに寮から出る。
「とは言ってもどこにいるんだろ・・・。」
生徒たちと通り過ぎる度に、軽蔑的な視線を向けられるカイン。
『何であいつ生きてんの?』
『調子に乗ってユーリ先生達と前線にいたのにな。』
『死ねばよかったのに。無能はこの由緒ある学院に居る価値はない。』
様々な、暴言がカインに降りかかる。
「・・・・・・。」
『この学院は腐ってるのか?』
「良いんだイヴ。これぐらいなら我慢出来る。」
カインは無言のまま学院中を歩き回る。
決して相手にしてはいけない。
強く拳を握りしめいつもの事だと言い聞かせる。
「・・・・・・強くなってやる。」
小さく呟き、カインは再びソフィア達の捜索に集中する。
「修練場・・・・・・には居ない・・・。」
踵を返し、再び学院内を歩き回り特科校舎を探し回る。
特科校舎と普通校舎の違いはまず、校舎自体の大きさにある。
最も人数の多いクラスの存在するBクラスも特科校舎に属するからという理由もあり特科校舎は普通校舎より大きい建物となっている。
そして地下にはSクラスのみ授業で使う修練場があり、B〜Sクラスが合同で使う魔法修練場や武道場なるものまで存在している。
特科校舎はやはり序列最下位のカインを見る視線は痛く、丸めた紙などが投げられる始末である。
「おい・・・?無能。」
「・・・・・・。」
無能と呼ばれたカインだが、返事をせず足を進める。
「ちっ。無視か・・・よッ。」
背後から、殺気を感じたカインは右脇腹を狙われた蹴りに表だっては抵抗せずに、イヴが防御結界を三層ほど展開する。
「ぐッ。」
『・・・・・・・・・。』
が、やはり完璧には扱えず威力は殆ど弱まること無くカインの脇腹に蹴りが直撃する。
本来、学院内の喧嘩など御法度のはずだが、貴族様方はそんな事気にする様子もない。
「この俺が話しかけてやってんのになんで無視してんの?」
「はなし・・・かけた・・・?ふざける・・・な。」
荒かった呼吸が整うまでにそう時間はかからなかった。
これも契約者として得た力のおかげなのだろうか。
「おいお前ら。無能を囲め。」
不敵な笑みを浮かべ、その男は数人の仲間と共に蹲っていたカインを囲む。
「待ちなさい。貴方達何をやっているの?」
「・・・・・・纏雷姫」
「この学院での揉め事は禁止のはずでしょう?」
アメジストのような綺麗な長髪。
髪の色と同色の綺麗な瞳。
見れば見るほどに吸い込まれそうになってしまうその綺麗な瞳は、どこか見下しているようで、二重の目を狭めて男を睨む『纏雷姫』。
強調する箇所はしっかりと出ており、スラーっとしたスタイルと容姿が相まって、イヴ同様絶世の美女と言っても過言では無いほど。
しかし、か弱いという印象は受けず、彼女から感じるプレッシャーは凄まじい。
「この無能が俺を無視したから・・・仕方ない事だったんだ。なぁ?」
男が周りに同調を求めると、皆それに頷く。
取り巻き・・・ではなく、同じ貴族であり無能であるカインを玩具として扱おうとしていたもの達らしい。
「・・・・・・そう。貴方名前は?」
ふとこちらを見やる纏雷姫。
先程の冷酷な瞳が嘘だったかのように、穏やかである。
「カイン・・・です。」
「そう。カイン君ね。」
「・・・・・・おい。纏雷姫。」
「私の名前はルエリア・グローム。」
「ルエリア先輩・・・ですね。序列五位の『纏雷姫』」
「そう。知っていたのね。」
「無視すんなぁッ!!」
大声で叫んだ男は、二人の間に割って入りカインに手を差し伸べようとしていたルエリアの手を払う。
「・・・・・・何かしら?」
「お前ッお前ッ!!俺の誘いは断っていたくせに・・・ッ!!こんな無能に触れさせようとしやがって!!この売女がぁッ!!」
その言葉で周りは静寂に包まれる。
「・・・・・・売女?アイアス王国グローム公爵家の一人娘であるこの私が・・・?」
瞬間・・・
────バチバチッ
激しい音が鳴る。
どこからか・・・。辺りを見回すとそれはルエリアの方からであった。
「恥を知れ。」
青い雷を纏うと同時に瞳まで青く変化する。
ルエリアはどこからか瞬時に現れた蛇腹剣を手に持ち、男の首筋に突きつける。
「ひぃッ。」
情けない声を上げた男は、失禁しその場で意識を失う。
「本当ならば今すぐにでも首と胴体を切り離してあげたいところだけど。学院内で良かったわね。」
蛇腹剣を指輪に翳すと吸い込まれるように消えていき、纏っていた雷も霧散し、瞳も紫へと戻る。
見世物を見る見物客のように辺りで観覧していた生徒たちも男が気絶するとその場から、離れていく。
「カイン君。」
「後輩ですからカインでお願いします。」
「そう。カイン。貴方何でここに?」
「探してる人が居て・・・。」
「少しきついことを言うかもしれないけど、この校舎は貴方のような無力な人間が来る場所じゃないわよ。」
「そう・・・ですね。」
『手厳しいな・・・・・・。』
「・・・・・・?今誰か・・・」
「な、なんでもないですよ多分僕のお腹の音です。」
ぐうの音も出ない。
至極真っ当なことを言われたのだ。
「はぁ。まぁ困ってるみたいだしその人の特徴は?」
ため息を吐きながらも、先程とは違う優しい笑みを浮かべ少しこちらを覗く可愛らしい仕草を見せる。
「えっと・・・・・・」
この数分後、カインはソフィアを居場所を突き止める。
次の更新は金曜を予定してます。
ブクマやpt評価、感想なども作者のモチベに繋がるので、
是非!!




