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第9話.ルシファーの天敵

 

「次の相手は貴様か?」

「お手柔らかにお願いしますね。」

「・・・クラウドはどうした?」

「今頃どっかの平原に倒れ込んでるんじゃないかな?」


 ルシファーはその言葉に驚く様子もなく、淡々と続ける。


「『黒月』が無かったにしろ、七罪魔人(アマルティア)であるクラウドを倒す・・・か。面白い。」


 黒月。それが何なのか理解が出来なかったユーリだが平然とした面持ちでルシファーを見る。


「どうも。じゃあそろそろやろうか。そっちからどうぞ?」

「・・・・・・舐められたものだ。」


 戦闘開始数秒で凄まじい衝撃音が辺りに響いた。


「ポースポロスを素手で受け止めたか。」


 ルシファーが横薙ぎに一閃したポースポロスを、一ミリたりとも動かずにユーリは左手で受け止め、ルシファーの胸を飛び台に使い、数メートル後方へジャンプする。


「つぎはこっちから行かせてもらうよ。『虚断』」


 左手で銃を象り、ルシファーの胸元目掛けてクラウドに放ったものと同じ魔法を繰り出す。

 パァンと乾いた音を上げたユーリの『虚断』は、ルシファーを貫通することなく、かすり傷すらつけていない。


「やっぱ、この程度の威力じゃビクともしないね。」

「・・・・・・我の絶対防御を貫通した。それだけで貴様を褒めるに値する。」


 ルシファーは空いていた左手で、魔法を繰り出す。


「燃えろ。」


 火の最上級魔法と同等の火力を、帯びたその火の玉は凄まじい速度でユーリへと向かう。


「『虚収(ホロウ)』」


 ユーリの前には、何やら歪んだ空間が発生する。


『空間魔法を・・・なかなかに面白い使い方をするなあの男・・・。』


 イヴは楽しむようにその様子を眺める。

 カインにはなんの事かさっぱりだったが、それもわずか数秒のうちに疑問から衝撃へと変わる。


 ユーリの展開した歪んだ空間へ最上級火力の火の玉は、吸収される。


「な!?」


 カインは思わずと言った様子で声を上げる。


『空間魔法・・・()()()の戦闘スタイルがあったとはな。虚集(ストック)とは違う使い方をするか・・・本当に面白い。』


 イヴ達の驚きなど気にせず二人は戦闘を続ける。

 ユーリは、手刀で空間を切ると常人には見えないであろうぼんやりとした衝撃波を目では追えない速さでルシファー目掛けて放ち、その後方からルシファーへと駆ける。


『絶対防御を持つルシファーに取ってはこれほどにない天敵だな。』


 とは言っても・・・だ。イヴもそれは理解している。

 あまりにも力の差が絶大なのだ。


「ルシファーも私達ん時より多少は本気出してるけど、あれもまだ20パーセントぐらいだろ。」

「そ、そんなに!?こ、怖くは無いですけどね!?」


 サラは産まれたての小鹿のように小刻みに震えながら、ハルヒメに涙目で抱きつく。



「あーもう!うざい!このデブ!」

「太ってないですよぅ・・・・・・。」

「まぁ、サラちゃんは太ってないけど十分でかいぞ。」

「ゲイル先生。それはセクハラですよ?」

「ミリアちゃんは相変わらず厳しいねぇ〜。」


 少し気の抜ける会話が隣から聞こえてきたカインだが、ゲイルは切り替え口を開く。


「しかし・・・だ。現在いる教師陣の中で最強と言えばユーリだ。そのユーリが太刀打ちできねえとなるといよいよこの学園も終わりだ。」


 その言葉に怯むのは、サラとミリア。


「うるせぇよ。あくまで一人なら・・・だろ?」

「お?よく分かってんじゃねえかヒメ。」

「ヒメって呼ぶなよ?殺すぞ。」

「という事である程度魔力もミリアの供給分もあり補えたので俺も行きますか。」

「すいません・・・。でも私には太刀打ち出来そうにありません。」

「おう。ミリアちゃんの魔力はしっかりと受け取った。そりゃもう今身体中にミリアちゃんの魔力が流れてんぜ。」

「キモイのでやめてください。」


 ゲイルは、立ち上がるとミリアから剣を受け取る。


「待てよ!私も行くぞ。」


 無理とは分かっている。

 語気が少し弱っているが、それでもルシファーを殺りたい。

 憎悪と恐怖が入り交じったような声でハルヒメはゲイルに向かい叫ぶ。


「うるせえよクソガキ。黙って見てろ。ここから先は俺たち熟練の冒険者と大人の出る幕なんだ。お前は黙って見てろ。」


 その目に宿るのは、怒り・・・では無く優しさ。

『俺たちの戦闘を見て成長しろ。』

 有無を言わさぬゲイルの言葉にハルヒメは強く拳を握りしめ反抗の眼差しを見せるがそれ以上何も言うことは無かった。


 ゲイルは一歩、また一歩と歩みを進める。


「ここで仮に俺が死んだとして。これから先お前たちが太刀打ちできるように。対策を練ることができるように・・・。

 俺はルシファーの力をここで引き出す。」


 少し離れた場所でボソッと呟いたゲイルの言葉。

 親心にも似たその言葉・・・。

 学院恐怖に陥れるルシファー達に対する怒りと生徒に対しての愛情。

 それを聞くことが出来たのは、天使であり五感が人間より遥かに優れているイヴだけだった。






「ふッ!!」


 魔力を纏った右手で、ルシファーの左脇腹を狙うユーリ。

 しかしルシファーはそれを全て知っていたかのように、ユーリの右手を掴み、空へ投げる。


「本気を出せ。人間。」

「これでも本気なんだけど・・・ねッ!」


 空で即座に体勢を整え、魔力で宙に留まるユーリ。

 ルシファーは幻滅したような態度でユーリを見やる。が気にした様子のないユーリは、ニコリと笑みを浮かべる。


「『虚接(ホロウ)』」


 そう呟くと、ユーリはルシファー目掛けて・・・では無くその場で蹴りを入れ空を切る。


「・・・・・・とうとう血迷ッ!!」


 野生の勘・・・と言えば良いのだろうか。

 ルシファーは身に危険を感じ、その場から後方へ仰け反る。


 瞬間、先程までルシファーの頭部のあった場所でブォンッ!と風切り音が鳴る。


「・・・・・・クク。やはり面白い。飽きないな。」

「初見でこれを避けるのか・・・。」


『虚接』それは、ユーリの編み出した攻撃空間魔法の一種であり、敵のいる空間と自らの攻撃した空間をねじ曲げ接続することで、相手に攻撃を当てるというなんとも反則的な技だ。


 緻密な魔力操作と、膨大な魔力量・・・そしてそれを完成させる胆力。更には一撃で仕留められるという自信と最高峰の身体強化魔法が使えるからこその魔法でありもちろんユーリ独自の魔法である。

 だが、反則的な技らしい欠点もあり一撃一撃に膨大な魔力を消費するため、行使には限りがある。


「・・・このままじゃ使えてあと二回・・・かな。」


 額に冷や汗が滲む。

 こんな緊張感のある戦いをしたのはいつぶりだろう。

 ルシファーに対する恐怖。

 震えそうになる膝を、歯を食いしばり必死に堪え技を繰り出す。


「『虚断(ホロウ)』」


 ルシファーの周りに、無数の歪んだ時空の玉が現れる。


「『ディレイ』」


 ユーリが手で銃を象り、魔力を込めた魔弾を発動する。


「どこを狙っている?」


 ルシファーに向かい・・・ではなく、その無数の玉のひとつに向け。

 魔弾は一つでは無く、無数に撃たれる。


「ッ!!」


 時空の玉に吸い込まれた、魔弾は別方向の玉から放出されルシファー目掛けて襲いかかる。

 驚きはしたものの焦った様子を見せないルシファーは、後方斜め右から向かってくる魔弾を斬り、

 真下から放たれた魔弾を自らの火魔法で相殺する。


「鬱陶しい。」


 ルシファーは、()()()()()()()『ディレイ』から離れるため

 数メートル下降する。


「無駄だよ。それは空に固定してる・・・じゃなくて君に固定してるんだ。」


 地上で凄まじい戦闘を見ていたイヴは感嘆する。


『ルシファーに固定する事で、逃れることを阻止し・・・更には注意力を分散させているのか・・・。自らの戦闘を一ミリでも優位にする為に。』


 絶対防御を無に返す空間魔法だからこその戦闘スタイル。


「さすがに鬱陶しいな。」


 ルシファーは、手に持っていたポースポロスを霧散させ自らの絶対防御を確固たるものへと変える。

 恐らくは対空間魔法を意識した、防御性へと変化させポースポロスに当てていた魔力もそちらへ集中したのであろう。


「そんな事も出来るのか・・・。」

「我に出来ないことは無い。これで天敵たる貴様ですら我に傷を与えるのは困難であろう。」


 ユーリはヘラヘラと笑い、ため息を吐くとディレイを霧散させ再度戦闘態勢へ・・・



罪咎天使。ネット大賞で一次予選通過しましたが、二次落ちました!

お疲れ様でした!

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