煌めく銀髪がめちゃくちゃ絵になるわ、蹴りの姿勢が美しいわ、スタイルいいわっ
しかもこいつら、素早いっ。
たちまち囲まれそうになり、俺は慌てて洞窟を背景にして可憐や抱っこしている空美ちゃん共々、後ろへ下がった。
見たところ、全員レザーアーマーみたいなのを纏い、それぞれちぐはぐな武器を構えているが、だいたいみんな、銀髪に黒瞳だった。
つまり、絵里香ちゃんと共通項が多い。
もちろん、男ばっかと言えども、容姿レベルが天地の差だが。
「――。v・bprt!」
「b;・さ@hbん「@あs¥っ」
「……すげー、見事に何いってるかわからん」
唯一わかるのは――ざっと見たところ、こいつら全員、俺を斬りたそうだな? ということくらいか。
俺は口の中で呟き、とりあえず「め、メイ・アイ・ヘルプユー?」とか話しかけてみたが、俺の腕にしがみついた可憐に、肘鉄食らった。
「いてっ」
「にいさんっ、ここで英語なんか通じるわけないでしょう!」
「た、確かに……て、わあっ」
いきなり、最も近い位置にいた男が、剣を振り上げて俺に襲い掛かってきた。俺はとっさに、空美ちゃんと可憐に剣が当たらないよう、二人をかばって背中を向けたが、お陰で避ける暇がっ。
「兄さんっ」
「おにいちゃーんっ」
可憐と空美ちゃんが悲鳴を上げた途端――微かに疾風のごとき音がした。
見れば、一瞬で俺の横を駆け抜けた絵里香ちゃんが、大地を蹴って軽々と舞い上がり、空中で身を捻って、見惚れるような回し蹴りを放ったところだった!
これがまた、俺を狙ってた野郎の頭にクリーンヒットして、そいつは物も言わずにもんどり打って倒れた。
煌めく銀髪がめちゃくちゃ絵になるわ、蹴りの姿勢が美しいわ、スタイルいいわっ……まあ、最後は関係ないが。
あと、白目剥いて伸びた野郎は、正直「ざまぁ!」と思ったねっ。
自分は華麗に着地した絵里香が、凜とした声で告げた。
「みんなに手を出さないで! あたしの大事な人達なんだからっ」
『――っ!』
おおっ、絵里香ちゃんがしゃべった途端、連中が明らかに動揺したぞ。
一気に敵意の水準が下がり、ぼへーっと見とれている感じだ。まあ、気持ちはわかるけどな。
俺だって、今死にかけたばかりなのに、スリムジーンズのお尻に見とれているし。
しかし、言語魔法とかいう魔法、すげーな。
こっちからすりゃ、絵里香ちゃんは日本語で話しているようにしか聞こえないのに、向こうにはちゃんと自分達の言葉で聞こえているらしい。
「君は……クリスティーンっ! いや、クリスかね!?」
わっ、いきなり向こうから日本語っぽい発音がっ。
今のなんだ? 映画で人を轢いて回ってた車か? いや、違うだろうな……絵里香ちゃんの本名かね!?
見れば、詰め襟学生服みたいなのを着込んだ老人が、あいつらを押しのけて前へ出て来た。
幽霊を見たような目つきで、絵里香ちゃんを見ている。
横顔を見ると、同じく絵里香ちゃんも目を瞬いていた。
「神父……様」
そこで俺達の視線に気付き、教えてくれた。
「あたしの名付け親よ。言語魔法をかけてくれたのも、この方」
「ああ、それで!」
つまり、この人にも同じ魔法がかかっているってことか。
俺が納得したところで、その老人は物騒な集団に叫んだ。
「この者達には、私が話す! 君達は下がっていてくれっ」
おお、助かったのかっ――だといいなっ。
少なくとも神父さんだとかいう人の命令には逆らえないのか、野郎共も下がってくれたし。視線は全員、絵里香ちゃんにばっちり固定のままだが。
「た、助かった……んでしょうか?」
「こわかったねぇ、こわかったねぇ」
可憐と、益々俺にしがみつく空美ちゃんが囁いた。
「とりあえず、様子を見よう」
老人と話し出した絵里香ちゃんを見て、俺はそっと呟いた。