(EP4開始)リアルスーパーガールは、決断する
いきなりだが、俺は割と約束を守る男である。
例を挙げると、ヴァンパイア少女のステラと約束した通り、俺は翌日にはまた鍵を使ってあの幻想の街に飛んだからな。
必ずまた行くという約束を、いきなり履行してやった。
「サプラーイズ!」
とか照れ隠しに叫んで。
まあ、本当に戻れるか、いざという時のために実験する意図もあったけど。
それでもみんな歓迎してくれて、後でこそっとステラにまで呼ばれて、初めて現実世界で彼女と会ったりした。
当然、向こうは遠慮したけど、これも約束通り、ちゃんと献血してきたさ。注射器で普通に血液抜いてから、彼女が差し出すワイングラスに直接びしゃーっと入れてやった。
情緒もなにもないが、本人が幸せならいいさ。
「……生の血を味わうの、久しぶり」
なんて紅潮した顔でステラが呟いて吐息を洩らし――そこで、ちょっと犬歯が伸びて、見てた俺はプチびびったりしたね!
そんなこんなで、丸一日潰れた。
夜になり、ようやくまた魔法の鍵で家に戻ったら、妹にどやされてしまったという……。
「旅行から戻ったばかりで、お昼ご飯も食べずにどこへ行ってたんですか!」
……もう、怒る怒る。
俺も高校生だし、昼飯くらい抜く時もあるだろうに。
しかも、適当な言い訳を思いつく前に、「え、絵里香さんのところですかっ」と詰問しやがんの。
おお、それで思い出した!
絵里香ちゃんともどっか行く約束してたよな……妹と違って、ちょっと危ない香りがするんだけど。
もちろん、幻想の街から戻った昨日は、汽車から降りて即、絵里香ちゃんと空美ちゃんに事情を説明した。
せっかく探してあんなところまで来てくれたんだし、そりゃ説明するさ。
帰路も当然、絵里香ちゃんと空美ちゃんを含めて、合計四人になってしまい、これも小規模な旅行みたいなもんだが――。
でもそれじゃ、約束果たしたことにならないな。
「え、答えないってことは、本当に絵里香さんとっ」
考え込んでたら、可憐の目がマジになった。
「あー、違う違う。考え事してただけ」
可憐はそう言い訳したが、俺は決断した。
よし、約束もあるし、近々絵里香ちゃんに会いに行くか!
……決めたことで、夜寝る前に、絵里香ちゃんのことを考えたせいだろうか。
俺は彼女と出会った当時の光景を、鮮やかに夢に見た。
本人が、「十年近く前にこの街で会ったでしょう?」的なことを前に述べた気がするが、正確には俺が九歳で、彼女が十一歳の時だな。
そこまで昔じゃない。
俺はあの日、少し前に密かに見つけた隠れ家へ行こうと、慎重に森の斜面を下りていた。
一番下の森の切り目まで下りると、新幹線が走るレールが通っているくらいだから、人が寄りつかない森とはいえ、大した勾配じゃない。
まあ、小学生当時の俺にとっては、それでもちょい怖かったけど。
なぜそんな場所に興味があったかといえば、レールまで下りる途中に、不思議な洞窟があったのだ。
転校していった友人が冗談で「異世界へ通じる洞穴だぜ、あそこは」なんてフカしやがったので、興味が出て探索したら、小さいながら洞窟は本当にあったという。
見つけたのは三日前だったが、その日は懐中電灯や食料などをリュックに詰め込み、洞窟内を探検すべく、やってきたというわけ。
……しかし予定と違い、俺は洞窟内探検はできなかった。
なぜなら、線路が見える位置まで下りた時、不思議な少女を見つけたからだ。
新幹線が走るくらいだし、森の切れ目には網状の高い柵みたいなのがある。
普通、簡単に上れるはずもないと思うが、俺が見つけた女の子は、そのてっぺんの、支柱の一つをまたぐようにして立っていた。
つまり、頑丈な柵を構成するてっぺんの、金属製ワイヤーみたいなのに立っているのだ! 思わず口が半開きになったねっ。
相当なバランス感覚がなければ、そんなこと不可能だと思うんだが。
当然、好奇心まみれの俺は、予定を変更して彼女の足元までこそっと下りていった。
間近で後ろから見上げた感じ、日本人には到底見えない。なにしろ、長い髪が銀髪だった。銀髪なんて、当時の俺は初めて見たね。
あと、まだ春頃だったのに、彼女は黒いショートパンツと、同じく黒いノースリーブのシャツを着ていた。
まださほど女の子に興味ない俺だったが、その子はなんというか、クラスの小学生女子とは一線を画す女子だった。
どこの世界に、銀髪をなびかせ、颯爽とあんな場所に立つ女子がいる?
(スーパーガールだ……俺は今、スーパーガールを見ている!)
俺が真面目にそう感じたとして、誰が責められよう。
あと、腰の位置が高くて、足が超長いっ。
お尻も実に素敵な形で――などと、いろんな意味で美麗な後ろ姿に注目してたら、一度も振り返ってないのに、その子がぼそっと述べた。
「わたしを止めたら、きっと君は後悔するわよ」
……なんたることか! そう言われ、俺もさすがに気付いた。
この子、自殺する気だ!
エピソードごとに分けられるなぁと遅ればせながら気付いたので、今回から開始の前に、新たなエピソード(EP)を示しておきます。
あとは普通に、タイトルはまちまちです。
よろしくお願いします。