……どこの銀河鉄道だよ
まあ、可憐のことは置いて。
出発は明日なので、俺も日記を慎重に元へ戻してから、自分の部屋のPCを立ち上げ、問題のブログを探してみた。
しかし……なんつーか、あの旅行ブログ? は適当に覚えていたアドレスの欠片とか中の情報とかで検索しても、一切引っかからないのな。
今どき、クローズドでもないのに、そんなブログあるのかね。
……文句を言ってもしょうがないので、俺はやむなく可憐の部屋まで出向き、あいつのPCを立ち上げて、ブックマークから飛んでみた。
うん、こっちは普通に出てくるな。
しかし、多少の訝しさを感じたので、俺はあえてそのPCでは情報を追わず、そのPCの電源をオフにし、丸暗記したブログのアドレスを口ずさみながら、再度、自分の部屋のPCを立ち上げた。
この時、前の日に絵里香ちゃんに指摘された、ブログに飛べないという意見が頭にあったのは、間違いない。
俺みたいなうっかりさんじゃないので、彼女が「飛べなかったわ」と言えば、そりゃどういう事情があるか知らんが、その時点では確実にブログが出てこなかったことを意味する。
で、俺も自分のPCで試す気になったわけだ。
そう難しくもないアドレスを打ち込み、クリック。
――う~ん、画面が変わりそうな気配はあるが、光回線にしては待たせるな。
じわーっと元のページが霞んで、ようやく切り替わった――ておい、待望のブログが出たが、その前に、なんか謎の円形画像が出なかったか?
顔をしかめた俺は、ブラウザバックで元のページに戻ろうとしたが、無理だった。
しかし、確かに謎の不気味な赤い円形画像が出た気がするがな……一番似てるのはなにかというと、ゲームに出てくるような魔法陣だったが。
まあ、そう見えただけかもしれないが。
「怪しすぎるな」
顔をしかめて背後を見たが、もちろん俺以外、誰もいない。
……まあ、いいか。
とにかく俺のPCでもブログは出た。大事なのはそこだろう。
カウンターがないから、アクセス数は不明だが……この「秘湯や秘境を求めて」ってブログ、試しに検索にかけても、ものの見事に引っかからないな。
あと、紹介された場所が全部で三箇所くらいしかなく、しかもその三箇所は全部同じ県だった……むう。
そりゃあんまり読み手も来ないだろうな、このショボさだし。
俺はすぐに飽きて、PCの接続を切ってリビングに退避した……可憐が帰るまで、テレビでも見よ。
事件といえば、その日はそれくらいで、安らかに夜を過ごすと、いよいよ当日の朝となった。
例によって可憐は、デカい旅行用トランク二つに、自分の荷物をしこたま詰めたようである。それが誰が運んでいるかというと、これがまた、ほぼ俺なんだが。
「おまえ、たまには荷物減らそうと思わない?」
「ご、ごめんなさい。兄さんに運ばせて」
代わりに小さな俺のトランクを転がす可憐が、珍しく申し訳なさそうに言う。
「まあ、もう東京駅だからいいんだけど」
駅の改札である、八重洲口前でバスを降りたので、後はもう新幹線乗り場へ移動するだけだ。
「夏休みですが、まだお盆前ですから……そう混んでないといいですね!」
「大丈夫じゃないかー」
俺は気楽に言ったが、実際、新幹線での移動は、ひたすら退屈なだけで、特に問題なかった。 ひたすら、ビュンビュン走るだけだったからな。
ただし可憐は別で、「おまえはアレか、生まれて初めて新幹線に乗る幼女かよっ」というくらいの勢いで、旅をエンジョイしていた。
客が少なかったので、前の席を動かし、四人掛けのボックス席みたいな形にしたのだが、俺は半分居眠りしてたが、可憐は前の席でべったり窓にしがみつき、いちいち何が見えたか報告する。
「わっ。今、タヌキさんが走って行きました!」
「三百キロで走ってんのに、見えたって? 犬と間違えてない、おまえ?」
「間違ってませんようっ。ちゃんとラス○ルさんと似てましたもん」
「いや、アニメに出てくるそれは、タヌキじゃないから」
そもそも、全然似てないし。
人の異見を無視して、またすぐに嬉しそうに報告する。
「見てください、すごいですっ。辺り一面、田んぼしかありませんっ」
……それの、どの辺が凄いのか。
「その景色で楽しめるおまえは、人生楽しんでるなあ」
それより俺は、正面に座るおまえのミニスカートの奥が気になってたまらん。パンスト穿いてても、割と奥まで見えて色もわかるんで……今日は普通に純白か。
まあ……おおよそこんな感じで、新幹線内では平和だったのだが。
驚いたのは、目的地に近い(はずの)駅で新幹線を降りた後、JRの駅で何度か乗り換えて、いくつか路線変更で奥地へ奥地へと進むと――。
ようやく最後に、俺達の目的地に着くはずの単線路線の駅に着いた。
だがその時、俺はもちろん、妹まで度肝を抜かれていたね。
まず、電車じゃないのはわかってたし、単線なのも、あらかじめ知ってた。
しかし、誰が予想するだろうか?
このシケた田舎駅に停車していたのが、ごつくて真っ黒な蒸気機関車だとは。
ディーゼルどころの騒ぎじゃなかった!
「……どこの銀河鉄道だよ」
俺が乾いた声で呟くと、可憐がぱっと俺を見て両手を合わせた。それを片方の頬にあて、笑顔全開である。
「わあっ。本当にそんな感じですねっ」
いや……おまえ、なにをそんなに喜んでるわけ?
俺は早くも、膝の力が抜けかけてるというのに。
「今、騒ぎになってるなあ」と思いつつ、私も好奇心で話題のアプリを見たら……なぜかしっかり、自分の小説も多数読めました(汗)。それは今、対策中らしいので、まあ置いて。
全然知らなかったですが、そっちで「イイネ」も一杯してもらってました……でも、今までさっぱり気付いてなかったですけど。
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特にどうもなりませんが、少なくとも私のやる気が上がりますです(汗)。