表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/159

新たな能力……赤い糸

 ミッションは慎重に運ぶ――そんな決断したその夜、俺は早速にして、また引っぱたかれた。


 ちくしょう、あの「自分だけ美形」の妹めっ、謝った舌の根も乾かぬうちに、俺に手を上げやがる。

 やり返さないのは筋力の差だと、わかってんだろうな。


 まあ、叩かれた理由というのは簡単である。


 可憐が風呂の湯を貯めるまえに掃除しようとしたら、既に風呂の周辺が濡れていたのが問題らしい。ああ、そうだろうよ、ふん。





「まさかっ、お風呂の掃除なんかしたんですかっ。昼間に!」


 比較的和やかな晩飯だったのに、その直後にこれだ。

 洗剤のボトル握ったまま、風呂掃除から直行でリビングに駆け込んできやがった。


「掃除というか……洗濯で怒られたから、せめて浴槽くらいは磨くかなと」


 無論俺は、劇団ひまわりもびっくりの演技力で、さりげなく頷いた。

 視線はテレビを見てるし、完璧だな。


「そんなことしなくていいですっ。にいさんの掃除はムラがあるから、役に立たないですしっ」


 怒りを抑えるように、押し殺した声だった。

 そこでようやく可憐を見たが――本当は、「なぜ風呂掃除が駄目か」を知る俺には、プラス「どこか焦っている」様子にも見えたね。


 まあ、無理もあるまい。


 そこで黙って了承すればいいのに、すぐ反射的にからかうのが、俺の悪い癖である。

 妹の掃除スタイルである、ショートパンツとノースリープのシャツという薄着を見て、反射的にからかってしまった。


 いやもう、目に毒なんで、冗談でも口にしないとドギマギするのだな。




「普通、掃除したくらいで怒るかぁ? ちょっと水でそこらを流しただけで、なにもなかったぞ?」


 俺はあくまですっとぼけて言った。

 ここで「お前の羞恥日記見つけたぜ、イェアァアア!」などとからかおうものなら、フライパンで殴られる。


「心配すんなって」


 代わりに、笑顔でこう言ってやったわけだ。


「見られてまずいような、お前のヘ○ーとかそんなのは、別になにも落ちてなかった。だいたい、どうせ下はまだ生えてないだろうし――ぐはっ」


 ……そう、この「ぐはっ」のところでパーンッと威勢よく頬を張られたわけだ。

 可憐の顔が真っ赤だった。


「に、にいさんなんか、もう知りませんっ。ばかっ!」


 やり返すもなにも、そのまま走り去ってしまった。いつもながら、殴られ損である。

 とはいえ……あー、今になって頬をさすっている俺からすると、張り倒されて当然の発言だったかもな。


 あいつの毒舌にしては、今日の罵倒は直球だった。


 からかうにしても、ネタを考えないとな……いや、実は本気で俺の指摘がモロに当たってたせいかもだが。


 ……それはないか、年齢的に。





 ○アーのことは置いてだ。

 さすがの俺も、連日張り倒されたのは、始めての経験だった。


 つまり、親父の再婚相手である亡き母の連れ子として、あいつがうちに来て以来ってことだが。可憐が五歳の時だから、もう九年前になるのか……ふむ。

 早々に部屋に退散し、ベッドに寝転がった俺は、一人で当時のことを思い出し、しみじみと回想する。


 いやぁ、俺に懐くまでは割と時間かかったが、それ以後は「おにーたま、おにーたま」と何処へ行くにもついてきて、可愛かったよなあ。


 その頃は、俺だってまだ七歳で、こんなふて腐れた高校生じゃなかったが。





「ふうっ」


 思わずため息が出て、寝返りを打とうとしたその時――。


「うおっ」


 俺はまたしても、異状に気付いた。

 なぜか俺の小指に、赤い線が見える……なんだこれ、まさか糸? 薄闇の中で持ち上げても、ちゃんと目立って輝いている。


 目を瞬くと消えたが、指に集中するとちゃんとまた見えるようになる。


「赤い糸みたいな線……そして、それが続く先は」


 わざわざベッドから立ち上がり、糸が続く先を追ってみると……その先は妹の部屋である隣へ至る壁に刺さっていた。

 どうも、壁を貫いて隣まで伸びているらしい。


「……これって、まんま赤い糸ってことか? 張り倒される度に、俺はニュータイプ化してるわけかよっ」


 冗談でも言わないと、やってられない。



 好感度数字に、赤い糸……フラグ立ちまくりの割に、ついさっき思いっきり頬を張られてるけどな! 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ