邪魔者を排除
その夜は結局、そこでお開きになった。
一応、全体意見として「イヴの言うゲームとやらへ参加はする。ただし、当初の予定は放棄して、全員で一カ所に集まり、なるべく身の安全を図る」ということに。
俺達が考える範囲じゃ、対処といっても限界があるしな。
向こうの出方も謎だし。
高原は、「ならば、ひそかにがっちりセキュリティーを固めればいいだろう? ゲーム参加する場合、場所はこのマンションに集まって参加でどうだ?」と提案し、俺を含めてみんな、賛成した。
友人に負担かけるのは心苦しいが、本人は楽しそうだからいいか。
ただ、最後に高原の奴が、こそっと俺にこう囁いた。
「これはまあ、関係ない話だとは思うがな……最初に屋上のヘリポートに集まった時、空美が猫を見たと言ったろ?」
「覚えてるさ? それが?」
皆が帰る準備しているのを横目に俺が囁き返すと、高原は厳かな声でまた囁いた……顔が近いんだよ、おい。
「自信を持って言うが、あそこに猫なんか侵入できる余地はないんだ。それがずっと気になってる」
「むむ?」
そんなこと言われると、俺も気になるやんけと思うが、こいつがまた勝手な奴で、「話は以上」とばかりに俺から離れていきやがったのだな、これが。
後はさっさと、自分も帰る用意してやがる。
動画に挟まれる企業広告並に、勝手な奴めぇ。
電車もバスも停電のせいで遅れに遅れ、駅もバス停も長蛇の列になっていた。
やむなく俺達は、それぞれ歩いて帰宅した。
距離的に、それが不可能なメンバーはいなかったから。それぞれ、自宅方向に散った。
もちろん俺は、可憐達と帰宅した後は風呂入って寝ちまったんだが……寝る寸前に隣から空美ちゃんが美人ママと電話してたのが聞こえたな。
停電騒ぎがアメリカにまでニュースになってて、心配して空美ちゃんのスマホに電話してきたらしい。
無論、俺が夢現で聞こえたのは、空美ちゃんの声だけだけどな。
「大丈夫大丈夫っ。おにいちゃんも可憐さんもいたし、おにいちゃんの友達なんかもそばにいたから」
「うんうん……本当に平気だよ。今はちゃんとおにいちゃんのマンションにいるのよ。電話切ったらすぐ休むから」
「……それより、ママ? 空美、ちょっとお願いがあるんだけど」
お願いとやらが気になったけど……横になってたせいか、俺はそのまま眠り込んでしまった。
――と思ったら、なんか割とすぐに叩き起こされた気がする。
可憐が起こしに来たんじゃなく、スマホの振動音で。
一気に目が覚めて画面表示を見たが、今度はナンバー非通知じゃなく、相手は高原だった。
しかも、今の時刻は朝の七時前!
「……んだよ、もう。休みにいきなり」
『いいから、聞けって』
こいつにしてはやたらわくわくした声音で、やむなく俺はベッドの上で半身を起こした。
「前みたいに、外でUFO見たとかの話だったら、怒るぞ?」
『UFOは確かにいつでも見たいが、そんな話じゃない。リビングへ行って、テレビをつけろっ。できればニュースをな』
「……ちょっと待て」
少し気になってきたので、俺は文句は中止して、俺は寝起きのままリビングへ移動し、テレビを点けてニュース専門チャンネルに合わせた。
合わせた途端、美人ニュースキャスターの声がした。
『――先ほどから何度もお伝えしているように、昨晩未明、アメリカ政府の高官二人が、正式に身柄を拘束されました。これはアメリカ本国政府の指示によるもので、この二人の身分や容疑の詳しい詳細は明らかになっていません。ただ、関係者の証言では、問題の二人は、日本国内のアメリカ大使館にいたとの情報が』
「――げげっ」
俺は下品な声を上げ、そこですぐ音量を下げ、スマホを耳に当てた。
「おい、これってまさか――」
『そう、こりゃ間違いなく、おまえが会った二人だろう。当然、この事件もイヴの仕掛けた罠に決まってる。そいつらがウザくなって、なんらかの方法で排除しようとしたわけだ』
「ど、どうやって!?」
『そんなの知るか』
高原は無責任に言ってくれた。
『イヴのことだから、思い切ってそこら中に、偽の情報でも流したんじゃないのか? 一番簡単そうだし』
「えぇええええ。いや俺達、そんなヤバいAIを相手に」
俺が懸念を表明しかけた途端、ほぼ同時に高原が言いやがった。
『これはいよいよ、イヴの意図が不明で、楽しみだなっ』
……うわぁ。
掛け値なしに楽しそうな高原の声に……俺は思ったね。
これは説得するだけ無駄だと。
……てことは、最低でもこの俺は、最後まで付き合うしかないってことだ。