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掲示板に現れた一人

 驚きの瞬間が過ぎ、俺は思わず愚痴った。


「そういうことは、先に言えよっ」

「そうは言うが。ついさっき、スマホを向こうに移す際に、ちょっと見ただけだしな」



 高原は冷静に答えた。


「だから、みんなに教えるにしても、参加するかしないか決めてからだろうと。でも、話はまとまったみたいだから、今持ってくる」


 そのまま一人でスマホを取りに行き、俺達は一斉に息を吐いた。


「高原君、要所要所で驚かせるわねぇ」


 絵里香ちゃんがしみじみ呟いたが、俺も賛成である。

 ただし、奴の場合はわざとじゃなくて、天然だと思うんだが。

 ……などと思っているうちに、高原がスマホではなく、大きめのノートパソコンを持って再登場した。


「これにカメラはついてないし、マイク部分は元から故障してる。ネットに繋いで調べるだけなら、これでいいんじゃないか?」


 どこからも異論は出ず、高原はまた座ってノートパソコンを全員に見えるようにガラステーブルに置き、スイッチを入れる。


 待つことしばし、慣れた感じでブラウザを起動し、ある大規模掲示板のページを開いた。





「知っての通り、ここはオカルト特ダネ板といって、個人が気付いたオカルト方面の特ダネ的ニュースを扱う掲示板ばかりあるが」


 高原は醒めた顔で述べた。


「いつ見ても、大抵はものの役に立たない。未だに、ジョン・タイターの謎がメインの話題だったりしてな」

「また懐かしい話題を」

「空美、コールドスリープの前に、本で読んだのよっ」


 空美ちゃんが目を輝かせた。


「ジョンさんは未来からタイムマシンに乗ってやってきた、予言者さんだったのー」


 空美ちゃんも知ってるくらいで、相当に古いネタだが、この子の言う通りである。

 確か、2000年のインターネット上に現れて、「自分はタイムマシンでこの世界に来た」と証言した、伝説的な人物である。

 今でこそでまかせだとされているものの、実は個別のネタにはかなり信憑性のあるものも多い。中でも、彼が「回収する必要がある」と明言した、古いPCのIBM5100には、彼が説明した通り、マニュアルにもなければ知る者も少ない、コンピューター言語の翻訳機能があったそうな。


 これには、関係者も首を傾げて「どこで知ったのだろうか」と言ったらしい。

 俺は事情を知らない絵里香ちゃんと可憐のためにちょろっとその辺を説明し、「でもまあ、あくまでジョン・タイター事件は謎のままだけどな」と話を結んだ。


「そう、ジョン・タイターの場合は真実のネタもあるが、嘘も多い」


 高原は賛同した上で、画面の一部を指差した。


「今晩立ったばかりのようだが、これも、今のところは懐疑的な声が多いな」

『どれどれ?』


 何人かの声が重なり、俺達は一斉に画面に注目した。

 誰か謎の個人が立ち上げたものだが、スレッドタイトルに曰く、【ファウスト計画について聞き覚えがある人は?】とある。


「ファウストって聞いた記憶が」

「イヴさんが提示した、例の言葉が出てくる戯曲ですよっ」


 可憐が素早く教えてくれた。


「実在した錬金術師がモデルだと言われてますが、戯曲ファウストに、『時よ止まれ!』で始まる、あの有名なセリフが出てきます」

「あの合い言葉かぁ」


 俺は俄然興味が湧いて、スレに注目した。





○――○


1 この名無しが謎を解明する! 日付省略―― 20:05:27 ID:ALppTGr0


さっき起きた停電騒ぎだが、あれに驚いたのでスレを立てた。

もう、とても一人では抱えきれないからな。

……実は先日、謎のメールをもらったんだが、そこには「貴方は選ばれた百人の一人です」とあって、ゲームに参加するようにとの要請があった。


深くは考えないで受けたんだが、後日、メールをくれた奴が「市内が見下ろせる場所へ移動してください」と、わけわからん指示をくれたんだよ。

そこで、言う通り屋上へ上がったら、さっきの停電騒ぎが起きた……俺が見ろす中で。

これが偶然とは思えない。


誰か、「ファウスト計画」について知ってる奴はいるか?

俺がそのメール主から聞き出した、唯一のヒントなんだが。


○――――○



 俺は顔を上げて高原を見た。


「こいつぁ、本物だな? ついさっき立ったばかりらしいけど」

「多分」


 高原も頷く。


「ネットには、まだほとんど出てない情報だからな」

「でも、ファウスト計画なんて知らないわよ」

「合い言葉に関連はありますが」


 絵里香ちゃんと可憐が、すかさず言う。


「待って待って。まだスレも伸びてないし、ざっと読んでみる」


 俺は皆に断り、飛ばし飛ばし見たが……しかし、あいにく本人の情報は少なく、そしてスレに対する反応も冷淡だった。


 主立ったところで、こんな感じだ。




○――――○


18 この名無しが謎を解明する! 日付省略―― 20:19:15 ID:TGpFlCIGr0


そういうのは、停電が実際に起きる前にスレ立てないとなー。

誰も信じまちぇんよー。



22 この名無しが謎を解明する! 日付省略―― 20:22:08 ID:SRptpCIGr0


そこから、中古PCを回収する話になるんですね、わかります。

オカ板は初めてか? 肩の力抜けよ。


 

31 この名無しが謎を解明する! 日付省略―― 20:36:25 ID:TGprrCupr0


いや、この話は嘘じゃないよ。

少なくとも選ばれた百人がどうのってメールのみ、俺ももらった。

無視したら、そのうち勝手に切られたらしいけど。

「不参加は自由です」とか短いメールは来たけどね。



32 この名無しが謎を解明する! 日付省略―― 20:38:59 ID:rGpFlCuwrr0


おまえ、誰よ?



39 この名無しが謎を解明する! 日付省略―― 20:44:01 ID:TGprrCupr0


単なる配達員だよ。

仕事先は秘密が多いけどな。




○――――○




 ……からかいまくりの書き込みばかりだが、俺達には無視できないようなコメントもあった。無論、31と39のことだ。 

 話を合わせたにしては、俺が言われたイヴのセリフと似すぎている。


「この人も、本物くさいなぁ……もう切られたらしいけど」

「明日になれば、もっと情報が広がるかもしれん。ゲーム開始までに、なるべく新ネタが欲しいな」


 また高原が嬉しそうに言ってくれた。




短期連載のつもりで、「ホログラフの向こうに、同じクラスのヤンデレがいる」という作品を初めてます。

よろしければ、どうぞ。


主人公が好きすぎて、どうしても声をかけられないヒロインが、一計を案じる話です。

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