表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/159

全員が確実に死ぬことになるでしょう

 幸か不幸か、次の瞬間には一斉に明かりが灯り、デパートの屋上もたちまち明るくなった。途端に、大急ぎで俺から離れる可憐である。


 ……そんな急がなくても。


「兄さん、こんな場所でなにしてたんですかー」


 しかも、なぜか尋問されるという。 

 だが今回ばかりは、俺もトボけるのをやめて直球で言ってやった。


「あのさ、例のゲーム、やっぱり別々にログインするのはやめよう。さもなくば、ゲーム自体を中止するかだ」





「は、はい?」

「知らないフリはよせって。既に冗談ごとのレベルは過ぎてるんだ」


 珍しく厳しい口調だったせいか、なにか文句を言いかけていた可憐が、押し黙った。


「今更、なんの話かさっぱりだとか、そういう大嘘は言わないよな?」

「そ、それは言いませんけど……でもあのゲーム、なんの変哲もないオンラインゲームじゃなかったんですか?」

「なんの変哲もないオンラインゲームは、都内の停電実行なんかやらかさないし、怪しすぎるスーツ男が尋問に来たりもしないって。だいたいおまえ――」


 俺はことの重要性を強調するように声を低めた。


「おまえをここで呼び止めたってことは、あいつら、おまえの後を尾行してたってことだろうが」


 可憐は思いっきり顔をしかめた。

 疑っていたけど、まさかと思いたかったらしい。


「じゃあこの停電って、気のせいじゃなくて、あのAIを自称する人がっ」

「その通り」


 周囲の一般客達が、興奮気味に話すのを横目に、俺は頷いてやった。

 意思を持つ自称AIとか、どこの売れないラノベだよと思ったが……ここまでやるからには、ちょっと大ボラの可能性は低くなった。


「しかもイヴとやらは、怪しい連中にマークされているようだしな」


 言ってるそばからポケットのスマホが振動して、ぎくりとしたが。


「も、もしもし?」


 用心深く出ると、普通にイヴだった。





『見ていただけましたか?』


 ……だから、非通知でかけるなとー。不気味だろうがっ。


「停電のことなら嫌でも見えたけど、あんたさ、何がしたいんだっ」


 可憐の件で肝を冷やしたので、俺は遠慮なしにガミガミ言ってやった。

 まだ周囲にいた連中がそっと見ていたので、さすがに可憐を引っ張って隅に移ったけど。


「停電で予期しない事故もたくさん起きただろうし、今なんてわけのわからん連中が、妹を尋問しくさったんだぞっ」


『右斜め上をご覧ください』

「はあ……?」


 言われた通りに顔を上げて、俺は監視カメラと思いっきり目が合った。


「見てたって言いたいのか? ならなんとかしろと――」





『言うまでもありません。私にとっても、彼らは邪魔な存在です。存在を抹消することを念頭に、あらゆる手立てを打ちましょう。どうかご安心を』


 文字通りの機械的な声に、正直俺はぞっとした。

 いや、当たり前なのかもだが、人間味の欠片も感じられなかったからだ。

 そういや、自称異星人のギーも似たようなことを口にしたことがあった。あいつもたいがいだったが、イヴとやらはそれ以上だ。


「おい、あんたなあ――」


 人が言いかけてるのに、また遮られた。


『あの二人組の件については手段を講じますし、お詫びもしますが、どうかゲーム参加については辞退することのなきようお願いします。私がこれほど大掛かりな証明をしたのは、私の言うことに嘘偽りはないとわかって頂きたいからです』

「……意味がわからんけど? でも、それでもゲーム参加はやめると俺が言ったら、どうする!?」


 思い切って尋ねると、イヴは淡々とかしやがった。


『どうもしません。ゲーム開始時点までに不参加を表明するのは、貴方の自由です。その意思表示が成された時点で、他の人を選び、新たに選ばれた百人とします。ただし、これだけは覚えておいてください』


 イヴが一拍置き、これまた冷静この上な声で言いやがった。



『辞退すれば、近い将来、貴方はきっと後悔することでしょう……なぜあの時、私の要請を蹴ったのかと、慚愧ざんきの念にかられるはずです。それも運がよければの話ですが』



「う、運が悪いとどうなる?」


 息を詰めたように聞き耳を立てている可憐が気になり、俺はどぎまぎと尋ねた。


『運が悪い場合、後悔する暇もありません。全員が確実に死ぬことになるでしょう。……では、意思表示はなるべく早めにお願いします』


「待て待て待てーーっ」


 慌てて声を振り絞ったが、もう電話は切れた後だった。


「でもって、非通知で番号わからんしっ」

「兄さん、一体どういう」


 可憐が俺に訊こうとしたが、ちょうど空美ちゃんと高原が屋上にやってきて、俺達を呼んだ。





「おにいちゃーん」

「おい、さっきの連中はなんだ? ヘリポートから見てたぞ?」


「あ、ああ、悪いっ。電話してる場合じゃなくてな」


 俺は掻い摘まんで事情を説明し、絵里香ちゃんが連中を追いかけていったことを告げた。


「彼女は心配ないとして、今、イヴから電話があった。ちょっとみんなにも教えておきたいんで、場所を変えるか?」


 さすがにこれは情報共有しないとまずい気がするからな。

 俺がいつになく緊張しているせいか、空美ちゃんと高原は素直に頷いてくれた。


「なら、さっきのタワーマンションに戻って話すか?」


 高原の提案に、俺はすぐに賛成した。

 あそこなら、さすがにイヴも立ち聞きできないだろう……多分。



いつもありがとうございます。

ご感想に加え、レビューまで新たに頂きまして、感謝、感謝です。


……ラブコメを忘れずにいきたいところですが……ううむ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ