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(EP6開始)選ばれた百人



 樹海じゃ、広範囲の破壊の跡が残っていて、世間でもそこそこの騒ぎとなっていたが、幸か不幸か某所の地震のせいで、ニュースは一斉にそっちを取り上げはじめた。


 非常にわざとらしい流れだが、俺達としてはほっとしたというところだろう。


 しかし……ようやく帰宅して落ち着いた数日後、俺は久しぶりにメールチェックをしていて、奇妙なメールが届いているのを見つけてしまった。






○件名:貴方は選ばれました!○



 もうメールタイトルからして「見え見えの詐欺ですね? わかります」と即思うような感じだが、好奇心の強い俺は、一応中身も読んでみた。


 どうせサングラスの安売りとか、そんなのかと思いきや――。




●本文●


これは、限られた人達への秘密のメッセージです。

貴方は「選ばれた百人の中の一人」です。

私は通常、ネットワーク内に存在しますが、今回はあるゲーム内に潜み、人間という種族に挑戦することにしました。


既にステージも決めました。

オンラインゲーム「エターナルキングダム」内に、私はいます。


見事に私の正体を見抜き、「時よ止まれ、君は美しい!」と声をかけてくれた人に、大いなる宝を差し上げます。



●以上●




「……は?」


 俺はいつもの癖で、メール文章を三度調べたが、書いてあるのはそれだけだった。

 ……しかも、非常に訝しいことに、なぜかこのメール、本文以外の情報が一切ない。


 IPやらメールヘッダ内の情報やら……普通は探せばあるはずの情報が、まるでナシ! まるで故意にあらゆる情報を抜かれたように、本当に本文以外になにもないのだ。


「ぬう?」


 どうもこの……俺の好奇心が「試しに、挑戦しようぜっ」と囁くのである。

 ご褒美の中身がなんなのか不明だが、少なくとも外れた場合になにか悪いことが起きる感じでもないしな。




「兄さん、そろそろお夕飯ですよ」

「ご飯なのよ~」


 ちょうど、可憐が扉をノックして入ってきた。

 三日休んですっかり復調したらしく、そばに空美ちゃんがいても、特にナーバスになっている様子はない……今のところ。


 俺はささっとプラウザを畳むと、びしっと二人を指差し、いきなり告げた。 



「時よ止まれ、君は美しい!」



 わけわからん語句は、可憐に尋ねるに限る。

 おおよそ、知らないことの方が少ないからな。


「……はあ?」


 しかし今回の可憐は、歯切れ悪く答え、空美ちゃんと顔を見合わせた。


「え、まさか知らないのぉおおお!?」


 自分も知らないくせに俺が挑発すると、今度は二人して即答した。



「ゲーテのファウストに出てくる、彼の最後の言葉ですよね? 二回しか読んでませんが」

「そのセリフ言うと、悪い悪魔に魂とられちゃうのよー」



 おお……二人揃って知ってるやん!

 微妙に――どころか、二人して全然違う内容の気がするけど、なぜか頷き合ってるから、両方正解なのかね。


 ……あとでググって調べよう。

 危うく、某有名コミックに出てくる例の能力と、勘違いするところだったぜ。


「そう、その通り! ははっ、二人とも正解だー」


 俺は満足して立ち上がり、「で、今日のおかずは?」とあっさり日常に復帰した。

 二人そろって不思議な顔しているが、今回は一人でこっそり参加しよう……なんてたって、せっかくの限定参加枠だしな!


 夏休みも後半だし、最後のお楽しみだっ。 


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