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(EP5終了)第四種接近遭遇は、実は経験済み

「あいつ、人の脳内にまたデータ転送しやがった! 脳に負担かかるだろうがっ」


 再び目覚めた時、俺が真っ先に思ったのは、そのことだった。

 意識を失う前にはなかった知識があるとなると、他に考えられない。


 おまけに、さっきはUFOに搭乗する間際だったはずなのに、今やふかふか絨毯床のバスの中に寝そべっていた。

 つまり、来る時に乗って来た、高原家所有のバスである。


 しかも、俺は背中に可憐がひっつき、腕の中には空美ちゃんを抱いているという、女の子塗れの状態だった。

 幸い、二人はまだ眠っているようだが、すぐに目覚めるだろう。


 そっと起き上がると、ふいにバスの車内灯が灯り、不景気な顔の高原と、きょろきょろしている絵里香ちゃんが立っていた。


 一番タフそうな二人が、先に目覚めていたらしい。





「がっかりしたな、くそっ。UFOに乗れると思ったんだが……その油断を突かれた」


 高原が早速にして、愚痴る。


「全くだわよ」


 絵里香ちゃんも残念そうに頷いていた。


「わくわくしてたら、次の瞬間、目が覚めてここに戻ってるんだもの。今までのは夢かと思ったわよ、一瞬」

「……記憶は消されてないってことは、一定の信頼は得たのかな、あのギーから。置いて行くつもりだった荷物も、全部ここにあるし」


 俺が呟くと、スマホやらカメラやらをチェックしていた高原が、不吉な声音で言った。


「信頼だと? 俺のスマホの録画写真と録音音声……全部消えているんだが?」


 俺の返事を待たず、さらにズボンの裾をめくってテープに巻いた何かを調べたり、シャツをめくり上げて、同じくテーピングで隠した機材をチェックしていた。

 相変わらずの用心深さだが……どうせみんな消えてるだろうな。


 そりゃ連中だって、あんな画像や動画、YouTubeとかに流されたくないだろうし。


 そのうち、みんな目覚めたらしく、そろそろバスの中が騒がしくなっていた。

 薫が、「じ、時間が飛んでるぅううう」などと叫んでいたが、確かに、およそ半時間ほど時間経過してる。





「おめでとう、全員、俺と同じくアブダクションケースを体験だな! レアケースへようこそっ」



『――嘘でしょおおっ!?』



 おお、女の子達の声が重なった。

 冗談で言ったのに、女性陣は本気でびびって身体のあちこちをまさぐっていた。


「第四種接近遭遇は、いやなのおっ」


 空美ちゃんですら、今回は歓迎しないらしい。

 余談だが、第四種はズバリUFOに誘拐されたり、インプラントされたりを指すらしい。なんだ、俺は最初から究極の第四種だったか。


「まさか……本当にえっちな実験されたのぉおおお」


 薫の黄色い悲鳴がうるさい。

 いや、別にインプラントはないって。


 モドキ改めギーの転送記憶によると、みんなUFO内に入った途端に意識を奪われ、ただここへ運ばれただけだ。


 おまえら、もういい加減、帰れ! てことだろう。


 しょうがないので、俺がギーが寄越した記憶転送にあった真実と、気絶している間の経過を説明してやると……女の子座りで俺を見上げる可憐が眉をひそめた。



「それで、結局あそこはなんだったんですか?」

「あ、俺まだ説明してなかったか?」


 そうか……そういや、説明しようとする度に、ゴタゴタが起きて機会を失ってたかな。


「あのシケた街は、こっちへ来る奴のための、訓練施設なんだとさ」


 眉を上げた高原を除き、みんなピンと来てないようだったので、重ねて説明する。


「つまりほら、連中って価値観も違えば、社会のルールも違う場所から来てるわけだろ? 遠路というのも馬鹿馬鹿しい遠くからさ? そこで、移住する前に怪しまれないように、ここでの生活の仕方を訓練するための施設だと。知識の転送だけじゃ、補えないこともあるそうな。この手の訓練施設は、だいたいは地下に作るらしいけど、今回はよりリアルにってことで、あえてこんな場所だとさ」


 ――俺だって半信半疑なんだよ! と最後に付け加えておく。


「今回は、街ごと覆うカムフラージュの機能を使う前に、運悪く高原に目を付けられたってわけ」

「待ってください」


 質問した可憐が、信じ難い表情を見せた。


「本当にそんなに大勢、地球に来てるってことですか?」

「なぜかギーが寄越した情報によると、そうらしい――て、あっ」


 俺はスマホの時計を見て、声を上げた。


「みんな、外に出て空を見てみろっ」


 声をかけた後、俺は率先してバスの外に出る。

 今いる場所は、どうやら道路脇の小さなパーキングエリアらしい。周囲には、高原のサポートをしてたであろうバンが、何台か停まっていた。

 人間の方は、中で気絶しているとみた。


 確かめるのは後のこととして……転送された情報通りだった。

 どこからともなく、あのでっかいデルタ型UFOが樹海の上空に静止し、一瞬、まばゆく光ったかと思うと、ズシンッと重々しい音が鈍く伝わり、軽い振動がきた。


 こっちがちょっと目を逸らした隙に、あのUFOは遠くへ飛び去った後だった。




「今のはっ」


 反射的にスマホで撮影していた高原が、俺を見た。


「後始末ってことだろ? 多分、俺達がいた場所は、もう跡形もないよ……俺達は運が良かったらしい」


 あと、これは言わないでおくが、ギーの陣営と決別したらしいあのちっこい黒服共は、全員消されちまったんだろうな……そっちはあんまり哀しくないけど。


「じゃあ、これで万事解決ってことですねっ」


 めんどくさい事情はどうでもいいのか、可憐が久しぶりに明るい声で手を合わせた。

 い、いやぁ……俺にデータ転送なんて余計な方法で、コトの経過を逐一教えてくれるってことはだ――。


 そのうちまたなにか接触してくる気がするけどな、あのギーが。

 さもなきゃ、ここまで親切にしてくれるわけない。

 とはいえ、今そんなことを言って心配させることもないので、俺はにこやかに頷いてやった。


「そうだな……これでUFO事件も終わりだ」


 せっかく最後に良いことを言ったのに、高原が横から口出ししやがった。


「……ケージ、相変わらず嘘が下手だな」

「やかましいっ」


 俺はすかさず、言い返す。


「とにかく、UFO騒動はもう満喫したんだよっ」


 いや、本当に。


やたらと長くなったEP……え~、5? ようやく終わりです。どこかで今回の続編的なエピソードを始めるかもですが、ひとまず今回の騒動は終わりです。

お付き合いいただき、ありがとうございます。


とはいえ、物語は普通に続き、何事もなかったように、別の物語であるEP6へ続きます。今後とも、よろしくお願いします。

それと、今後の励みになりますので、気が向いたら評価等頂ければ、嬉しいです~。

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