表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/159

あっちいけえっ

 しかも連中、この暗がりで遠望すると、なぜか目が微かに光っているように見えるのだな。もうなんというか、金輪際そばに来てほしくないというか、気味が悪いっ。


「コンパスの差が大きいんだし、普通に走れば追いつかれないだろうっ。全力で――」


 俺が言いかけた瞬間、絵里香ちゃんと空美ちゃんが同時に叫んだ。


『伏せてえっ』


 後から考えても、よくぞ反応したと思うが、二人の危機感たっぷりの叫び声と同時に、俺はその場でぱっとしゃがみ込んだ。

 絵里香ちゃんと空美ちゃんという、それぞれ超感覚を持つ女の子が警告するのだ。 

 絶対にヤバいに決まっている。


 おまけに、薫は高原が手を掴んで無理にしゃがませ、可憐はむしろ俺の腕を掴みつつ、自分もしゃがんだ。

 叫びはしなかったが、なにか予感がしたらしい。


「お、お兄様、一体なんの」


 薫が言いかけた刹那、俺達の頭上をパッと閃光が走った。

 しかも、幾筋も幾筋もっ。

 青白い稲光みたいな光だったが、あのままボケッと突っ立っていたら、モロに頭に命中したかもしれない。


 大きく外れた閃光は、樹海の捻れた大木に命中して、当たった部分が火を噴いていた。

 なんだこれ、殺傷能力高そうじゃないかっ。




「す、スター○ォーズかよっ、ちくしょうっ」


 空美ちゃんに当たらないように背を向けて丸まり、俺は思わず叫ぶ。

 うちう人って、確かシャ○ランの映画で、金属バットで殴られてあっさり死んでなかったかぁ? あの古い映画のせいで、てっきり「どうせチョロい戦闘力だろ?」と思ってたのにっ。当てになんないな、あの監督っ。


 完璧な八つ当たりで、俺は罪もない某監督を恨んだ。

 いきなり未来兵器はずるいっ。


「おにいちゃん、空美の声と同時に走ってっ」


 耳元で空美ちゃんがゴニョゴニョ囁いた。

 俺は彼女が何をやるのか察しがついたので、うんうんと素直に頷いた。

 つか、なにをするにしても急いでほしいっ。

 無音のまま、閃光がジャカスカそばを掠めていて、嫌過ぎるっ。


「おい、ケージ! 俺が時間を稼ぐっ」

「この際、あたしがっ」


 高原と絵里香ちゃんが声を上げた途端、空美ちゃんが似合わぬ大声を出した!



「――あっちいけえっ」



 おおっ、素早く振り向いて見て良かった!

 見よ! 黒服のチビ共が空美ちゃんの一喝で、ことごとく宙に舞い上がり、軽々と吹っ飛んでいくじゃないかっ。


 溜飲の下がる思いとは、このことだ。

 空美ちゃんなら、そのうちヨ○ダも追い越すなっ。


「おにいちゃん、今なのっ」

「そ、そうだった。全員、ズラかれええっ」


 俺自身は全くもって格好よくない号令を発し、「い、今のはっ」とかなんとか叫んだ可憐を無視し、その手を掴んで走り始めた。

 機を見るに聡い高原なんか、先に聞いてた俺より先に、薫を引きずるようにして駆け出してるしなっ。


 もちろん、絵里香ちゃんも同様である。

 最後尾だが、いつのまにか手に刀持ってたりして!

 空美ちゃんが稼いでくれた時間を、とことん生かさないとっ。


「よし、トンネルへ入ったっ。あとはさらに死に物狂いで走れっ」


 俺が叫ぶと、薫が後ろから大声で訊いてきた。



「どこまでなのっ!?」

「おい、UFOを見せるって話はっ」



 しかも、この期に及んで脳天気な高原までっ。


「ああ、おまえら兄妹が、二人揃ってばっちり満足するところまでだよっ。もう少しだっ。高原、おまえが来る途中、『ここは怪しいっ』て指摘した床部分があるだろ? ゴールはあそこだっ。モドキの言うことにゃ、分かり易いにように、今は光って見えるようにしてるってよ!」

「それを、先に言え!」


「うわ、くそっ」


 教えた途端、途方もないダッシュで先頭に出やがった。

 そういやこいつ、百メートルを十秒台で走る化け物だっての、思いだしたぞっ。

 しかも、ダルいからって手抜きした結果で!


「お、おにいさまっ」


 可憐が俺のそばで警告した。


「うちう人さん達も、入ってきました!」

「教えてくれなくていいから、ひたすら急げっ」


 俺としては、そう言うしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ