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おにいちゃーん、あたしもお願い


「信じるかもしれないじゃないですかっ。説明してください、試しに」

「いや、遠慮しておく。だいたいおまえ、あの洋風の街であったこと、ほとんど忘れてるし」


「えー……そんなはずは」


 いきなり可憐の勢いが減じたのは、おそらく自分でも記憶が危ういところがあるからだろうな、うん。

 それはそれとして、この隙にお茶目な絵里香ちゃんが「おにいちゃーん、あたしもお願い」とか言って、どさっとポテトチップの袋を三つも入れたしっ。


 セレブの人は、自分で買えよ!


 そう言いたいが、いつも奢ってもらっているので、無論、口にはしない。

 愛想笑いのみ。


「じゃあ、わたしだって、これ入れちゃいますからっ」


 なぜかまたむっとした可憐が、対抗意識燃やして、自分もドサドサとお菓子を俺のカゴに放り込みやがった。

 いかにも取りにくそうな、棚の下の方までしゃがみ込んで、駄菓子の山を豪快に掴み取りである。

 しかも、一番量が多いぞ、くそっ。


「あのなあ――」

「おい、なに揉めてんだ?」


 戻って来た高原が、俺達を見る。


「いや別に……て、なにしてんだよ、薫」


 いつのまにか接近してたこいつは、そーっとサングラスと日焼け止めを俺のカゴへ入れようとする寸前で、高原がそれを見て首を傾げた。


「おまえもケージと付き合ってるのか?」

「――そんな馬鹿なっ」


 奇天烈な声を上げて、慌てて薫がサングラスを自分のカゴに入れ直した。

 おい、最初からそうしろやっ。セレブのくせに、俺を財布代わりにすんな!


「あ、あたしはお兄様一筋ですからっ」

「兄妹でなに言ってんだ? 俺と一緒に、アニメ見すぎたか?」


 高原は呆れた口調で言い、俺達を見た。


「バイトの話じゃ、彼らの宿舎兼、営業ホテルがあるらしい。とりあえず、そこを活動拠点にしようぜ?」

「ああ……まあしょうがないよな。この分じゃ、調べるのに時間がかかりそうだし」


 俺は肩をすくめて賛成した。




 会計を済ませて外へ出るまでに、数分ほどかかった。

 なぜかというと、レジの会計は俺が一番量が多く、時間がかかったからだ。 


 おごるのは空美ちゃんだけのはずだったのに、くそっ。


 しかも、年中ダイエット中の可憐は、「おまえ絶対こんなに駄菓子ばかり、食わないだろっ」というような量を入れやがって、しかも会計済ませた途端に、俺から袋を分捕った。


 ちくしょう、せめてちゃんと全部食えよな。





「お、もう少しだ」


 ふいに高原が足を止め、時計を見た。


「どうした?」

「地下道で、ちょっと無線でやりとりしてたろ? あの時に、今くらいの時刻に、もう一度、ドローンを飛ばしてくれと頼んだのさ」


「おおっ」

「それはそれはっ」

「ちょっと怖いですね!」

「うちう人のミサイル、くるかなー!」


 俺以下、絵里香ちゃんと可憐と空美ちゃんが同時に声を上げる。

 早速グラサンかけた薫ですら、「わくわくものねっ」とか言って空見上げたし。


「まあ、実際にどうなるか、ここならわかりやすいだろ――来たぞっ」

「ホントだ、音がするっ」


 俺に対抗するように、絵里香ちゃんと可憐の声が重なった。


「あそこに見えるわ!」

「あそこですっ」


 二人同時に指差したが……昼間に衛星が見えると平然とのたまう絵里香ちゃんとタメを張るとは、我が妹ながらすげーな。


 俺は言われてから三十秒も経って、ようやく見つけたっつーのに。



「おぉ、来る来る。空に紛れ込むような色のドローンだなあ」

「見つかりにくい方がいいだろ? 予定では、このままイケるところまで降下して、俺達の頭上まで下りてくれるはずだ」

「たのしみなのっ」


 空美ちゃん同様、俺達も目を皿のようにして、どんどん大きくなるドローンを見守る。 しかし、あと少しで頭上まで来そうだ……というその時だ。

 バチッという音が一瞬だけしたかと思うと、ものの見事にドローンが砕け散って四散した。なにか見えない壁にぶつかったようにしか見えず、俺達はそろって息を呑んだね!


 やっぱここ、全然普通じゃないな。


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