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天を目指したひと

作者: 阿仁哉 兄介

パッと思いついたので初創作。


骨組みを作って肉付けをしなかったような短編。


昔見た映画のネタが若干入ってます。


もうタイトルも覚えてないような映画ですが、感銘を受けた部分なのでリスペクトとしていただけると幸いです。


伝えたい事がうまく表現できたかわかりませんが、よければどうぞ。



かなり昔の話だが、私には好きな人がいた。


未だに私の中で輝いてやまない、たったひとりの人。


玉のような肌、珠のような瞳、鈴のような声。


使い古された表現だが私にはそれ以外の表現方法を未だ知らない。


「もうすぐ、もうすぐ君の居るところへ行ける...。」


そう言いながらいくつもの螺子を締めてゆく。


見上げると、それほど大きくは無いがロケットがある。


私の人生の全てがそこにある。


この想いの始まりを遡れば40年以上も昔になる。


幼稚園の年長の頃だったと思う。


非常に暑い夏だった。


転校してきた彼女に、私は幼いながらも一目惚れをしていたと思う。


思う、というのも出会ってからというもの私はずっと彼女にベッタリで、他の子と遊んだ記憶が皆目見当もつかなかったからだ。


優しい子だった。


穏やかに笑っている顔を一番良く覚えている。


ひたすらに私は楽しませようと色々なものごとを読み、聞き、彼女に伝えていたように思う。


そうして時を経て、私は彼女の命がそう長く無いことを知ったのだ。


「もうすぐ私は天へ行くらしいの。いいところだといいなぁ。」


頻繁にそう言っていたのが今でも思い返せる。


天、要するに死だ。


転校した時からどうやら病気だったらしい。


どういう病気だったかまでは覚えていない。


そうしてしばらくした後に彼女が死んだ時、私は何もわからなくなった。


心が真っ暗だった。


あの時、私の体感ではあるのだが、凄く長い時間が経った気がする。


それまでも彼女を想う事は多かった。


だが、きっとそれ以上に深く濃く、彼女を思った期間だろう。


その間に彼女の事以外は私の思考の中にはなかった。


最初はひたすら悲しかった。


半ばまで来ると、楽しい時を繰り返し繰り返し記憶から溢さないよう大事に大事に振り返っていた気がする。


そして気がついたのだ。


「天」


彼女は一度だけその言葉をこう形容した。


「多分ね、天って言うのは地球と宇宙の間にもう一つ少しズレた空間があって、きっとそこで皆過ごしているのよ。」


その時私は何故思い出せなかったのか、彼女との記憶をひたすらに思い返していたというのに。


そう自分を責めた記憶があった。


それからというもの、私は勉学に励んだ。


それこそ理科とくくられている科目ではテストで1点すらも落としたことがなかったと思う。


特に物理と天体の授業はひたすらに頭に詰め込んでいった。


ひたすらに学んだ。


そうしていざ学び舎を出た時、思い至ったロケットの制作に取り組んだ。


お金が必要だった。


生きるだけでいくらでもお金は減った。


ロケットを置く場所だけでもお金は減る。


どうやって稼ぐかを考えた時、最初は働いていた。


だが、それではダメだとすぐに気づいた。


部品も手に入らない、試算した維持費すらも足りない。


そうして自分はひたすらに発明をした。


発明と言ってもそう大層な物ではない。


ひたすらに便利な何かを考え、特許を取り、自分から会社へ売り込んだ。


すると思ったよりも稼ぐことが出来た。


ひたすらそれを繰り返しただけの人生だった。


営業をし、そして部品を作り、ロケットを組む。


きっと周りからは奇人変人と思われているだろう。


実際、自分も気が狂っているとしか思えない。


それでも、会いたかった。


彼女に逢えると思ったら他の事は私にとっては瑣末なことでしかなかった。


そうして、振り返る事が無くなった時にちょうどロケットは組み上がった。


「明日、君に会いに行くよ。流石に作業で汚れたままの私で、久々に会って幻滅されたくはない」


そう呟き、私は作業場を後にした。



昔から起承転結が下手で長編を書くほどの根気はなく、何かを書き上げてもイマイチパッとしなかったので後悔したことはなかったのですが、良ければアドバイスを貰えると幸いです。


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