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99 洞窟はどういう靴で進むべき?

 装甲車での移動中、狭い車内でスコヴィルと身体が密着する状態が続く。いや、この役得のために装甲車に乗せたわけじゃ無いんだよ? 本当だよ?


「キツくないですか?」

「このぐらい大丈夫です。朝の電車のラッシュの方がよっぽどキツいです。」

 ああ、確かに朝の混んでいる時間は最悪だよね。


「このまま始発の町はスルーして第二層に向かいますね。」

「お風呂が・・・。あ、いえ、何でも無いです。こんなに移動が楽なんて、なんだかちょっとショックですよ。」

 彼女が最初に言いかけたことが若干気になる。やっぱり風呂好きなのは隠せないようだ。


 そしてあっという間に第二層までやってきた。良かった、リコッテにエンカウントしなくて。第二層のジャングルはさすがに装甲車は使えない。僕はふと思いついてアイボウを召喚した。狼タイプとなったアイボウは、背中に乗れるのでは無いかと。結果、問題なく乗れた。ただしウーナほどの安定性が無いので、走らせるとキツい。早歩き程度の速度で移動するのが一番バランスがとれている。


「スノーモービル、戦車、狼、今日は色々なものに初体験しました。楽しいですね。」

「えっと二つ目、戦車じゃ無くて装甲車です。」

「何か違うんですか?」

「車に装甲を付けただけなので戦車じゃ無くて装甲車なんです。」

 彼女は何だかよく分かっていない顔をしていた。まあ、重要な話では無いので別にいいか。


 第二層は冒険者の数がそれなりに多い。そして彼らは目撃したはずだ。狼に乗る美女と蝶仮面の変態紳士の姿を。もういい、僕は色々と諦めた。


 途中、虎に追い詰められて死にそうになっている冒険者をイナゴンズを召還して助けたり、蜘蛛に絡め取られている冒険者をスバードカッターで救出したりというイベントがあったものの、特に問題なく第一層に到達した。上に進むと敵が弱くなって楽でいいなぁ。


 第一層まで来れば、僕でも何とか戦える。考えてみると僕の戦闘能力は第五層に進んだ今も、最初とほとんど変わっていない気がする。まるで何か枷でもあるかのように。


 しかし第一層、なんだろうこの懐かしさは? 唯一のダンジョンらしいダンジョン洞窟フロア。ここを初めて探索したときは、おっかなびっくりしつつも、新しい発見にワクワクしたものだ。


 第一層は冒険者の数がかなり多いので、アイボウは引っ込めてある。代わりに肩にイナゴンを一匹乗せた。第一層の魔物ならこれ一匹で瞬殺できるだろう。しかし特に戦闘になることも無く進む。そして懐かしの闇市エリアを抜け、とうとう地上だ。地上ではさすがに変態紳士はつらい。僕は蝶仮面を外すことにした。大丈夫、リコッテは下にいるはずだ。


「着きましたね。」

 スコヴィルがほっとした表情で言う。

「なんとかリコッテに見つからずにすみました。本当に良かった。」

 その代わり僕は今まで変態紳士だった。まあ、バレていなければ問題ない。大丈夫だよね?


「そういえば冒険者ギルドに第四層攻略申請をしていませんでした。先に済ませてきていいですか?」

「はい、私も所用がありますので、あちらの酒場で合流しましょう。それとスキル鑑定の店の場所を教えておきますね。」


 僕は彼女から場所を聞く。スキル鑑定の店は今まで立ち入ったことのない場所にあった。だから気がつかなかったのか。そして僕は久々に地上の冒険者ギルドに足を運ぶ。


「アフタ君!」 

 ギルドの建物に入った瞬間、受付のおねえさんに名前を叫ばれた。ギルドの中にいた他の冒険者達が僕の方を一斉に見る。注目されるから叫ぶのはやめて!


「お久しぶりです。」

 僕は受付のおねえさんに挨拶した。


「生きてたのね。ずっと顔を出さないから心配していたのよ。」

 受付のおねえさんは目を赤くしながら言った。ギルドに来る冒険者なんて有象無象にいるはずなのに、何でそこまで気にかけてくれるのか理由が分からない。


「えっと、第四層のクリア報告です。」

 僕はギルドカードを出した。

「第四層・・・クリア?」

 目を丸くして驚く受付のおねえさん。そりゃそうだよね。僕はギルドカードをおねえさんに手渡した。


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