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88 ラジャーと了解、ブラジャー発見

 第四層のボス、マザコンの討伐に成功した僕は、戦闘後のお楽しみタイムである宝箱を開く。ギーッと言う音と主に、自分の身体を超える大きさの宝箱を開ける。中には・・・。


「え? ちょっ!」


 僕は宝箱の中に入っていた「それ」を取り出し確認する。表を見たり裏返したり、天に翳してみもした。間違いない。鑑定をするまでもなく、これはブラジャーだ。しかも形は三角形が二つで、あられも無いところに穴が空いている破廉恥ブラだ。


 ・・・。


 僕は宝箱にそれを戻し、そしてそっと蓋を閉めた。あまりの状況にちょっと意識が飛びかけた。またか! 前回は通常フィールドの宝箱だったのに、今回はよりにもよってボス部屋の宝箱とは。残念ながら宝箱にはそれだけしか入っていなかった。つまり今回はカッチェがどこかに潜んでいるという可能性は無いということだ。


 僕は魔法の袋から汗を拭くために手拭いを取り出す。そして汗を・・・ってなんで僕はブラジャーを掴んでるんだ? さっき宝箱に戻しただろ!


 くそぉぉぉ、また捨てられない呪いのアイテムを拾ってしまった。このダンジョンの危険物は魔物だけでは無い。アイテムすら油断ならないのだ。こんなものを持っているのが後ろから追ってくるリコッテに知れたら、どんな凄惨な事態を招くか考えただけで恐ろしい。


 いや、待てよ。いっそパンティーとこのブラを装備して始発の町を練り歩けば、僕の気がふれたと思ってリコッテは村に帰ってくれるんじゃ無いか? そうすれば命ばかりは助かるかも知れない。まあ、そのかわり色々なものを失うだろうけど。


 どうする? どうすればいいんだ? もう、間違いなくリコッテはすぐ後ろまで迫ってきている。彼女ならスカルドラゴンもマザコンもあっさりと攻略してくるだろう。


 ・・・先に進もう。今回は始発の町に戻らずこのまま進む。それしか無い。戻って鉢合わせするぐらいなら、いっそ第五層で散ろう。どうせ死ぬのは同じだ。


 僕は第五層への階段を下る。ちなみに先の戦闘での被害状況は、イナゴンズが60匹やられたものの、スバードやアイボウが軽微の損傷、ウーナ無傷だった。自己修復で何とかなりそうなレベルだ。さて、第五層でどこまで戦えるか。


 階段を下るにつれて、温度が下がってきている気がする。息を吐くと白くなる。そして僕は第五層の入り口の前に立った。既に情報は得ていたけれど、そこは魔物以上に冒険者の行く手を阻む、真っ白い寒冷ゾーンだった。


 ぶっちゃけ真っ白いとしか言いようがない。凄まじい吹雪で先がほぼ確認できないのだ。そしてあらゆるものがあっという間に凍り付く。こういうところで特に危険なのは手持ちの金属だ。素手で触ろうものなら、皮膚がくっついてはぎ取られることになる。グローブを買っておいて良かった。


 しかし一つ違和感がある。確かに冷たさは感じるんだけど、それほど寒くは無いのだ。始発の町で購入した装備の力だろうか? 僕はそれを確認するため、入り口付近で装備を外してみることにした。まずは無口なお婆さんのところで買った地味な服だ。そういえば何にも説明を受けていなかったな。


「ひぃぃぃ、寒い、サムイ。」


 地味な服を脱いだ瞬間、身体を冷気が通り抜け、骨の髄まで凍える感覚が脳に伝わってくる。ヤバイ、これはヤバイ。凄まじく寒い。


 どうやら初っぱなからビンゴだ。寒さの緩和能力は地味な服の力だった。さすが高かっただけのことはある。第五層を進むには必須のアイテムと言って良いだろう。サドンは買わなかったんだろうか? そう言えば、無口なお婆さんの店は、まったく客が来そうに無かったからなぁ。


 服を装備し直し、少しだけ先に進んでみる。天馬の靴のおかげで雪の上でも問題なく歩ける。しかし天馬の靴の力を進むと、歩く速度が凄まじく落ちる。空を飛んでいるわけでは無いんだけど、クニャクニャのゼリーの上を歩いているような感じで、前に進むのに体力が持っていかれる。逆に靴の効果を切ると、今度は足が雪の中にハマる。


 これは結構キツい。しかも吹雪で1メートル先すら視認するのが難しい。この吹雪って止むのかな? 普通に考えれば止まない吹雪など無い。しかしここはダンジョンの中だ。そんな常識通用しない。


 さて、どうしたものだろう?


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