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82 恨めしい裏

 微妙な音の警告音が響く。どうやら転送エラーになったようだ。心配になって身体の様子を一応確認したけれど、特に変化は無い。そもそも転送が開始されていないので、ハエ男になってしまうようなことは無いはずだ。失敗の原因として、人間が駄目なのか、生き物一般が駄目なのか分からない。しかしとにかく転送が出来ない。


 逆に一つ出来ることを発見した。転送装置を経由して、ノートPCとジャンク製造工場のネットワークを接続が可能なようだ。これで作成中ロボットの進行状況がリアルタイムに分かる。さらに転送装置を持ち出すことによって、遠隔地からの追加素材投入も可能となった。手に入れた素材をすぐにロボット製造に利用することが出来る。でも、あまりやり過ぎると売るものがなくなり、金欠で僕が死ぬのは確実だ。


 とりあえず製造部分に関しては、これ以上することは無い。他に何か無いかとシステムを弄っていくと、第四層のフィールド情報へアクセスすることが出来た。これはもしや、ボス部屋がどこか検索できるんじゃないか?


 さっそくボス部屋の位置を調べてみる。そしてあっさりと結果が返ってきた。マップにどくろマークが表示されている。ええっと、ドームの位置関係から考えて、ふむふむここか。


 ・・・

 ・・・

 ・・・


 場所は分かった。しかし頭が理解を拒否していた。情報を飲み込むことが出来ない。よりにもよって、あの場所がボス部屋の入り口だとは・・・。


 ボス部屋の場所は、第四層入り口を裏側に回り込んだ場所だった。


「くそぉぉぉ、やられたぁぁぁぁ!!!!」


 気がつくと僕は叫んでいた。文字通り、完全に裏をかかれた格好だ。ゴールは入り口の裏にあったのだ。最初からその事実を知っていたら、第四層は探索する必要すら無い場所だったのだ。下手をすると、今いるジャンク製造工場まで来た間抜けな人間は、僕ぐらいなものなのかもしれない。


 そういえば僕がジャンクを連れていると、他の冒険者達から口々に珍しがられた気がする。その理由はテイムする難易度だけでは無かったのだ。やられた、本当にやられた。しかし多少なりとも第三層にジャンクパーツが並んでいたんだから、僕と同じように探索した人がいるんだよね。


 僕はジャンク製造工場から外に出た。そこで空気を一回深く吸い、そして吐き出す。第四層の天気は良く晴れている。僕は魔法の袋から装甲車を出して、来た道を引き返すことにした。


 一切寄り道をせずに進むこと2時間、ようやく戻ってくることが出来た。さっそく入り口の裏を確認すると、そこにはあった。ボス部屋の扉だ。仲間をゲットしたり、ジャンク製造工場での収穫を考えると、第四層探索が無駄とは言い切れないけれど、何だろうこの悔しさは。


 運転し続けていて疲れてたので、ボス戦前に一休みすることにした。箱庭に入って、以前に大量に買い込んだ保存食を食べる。考えてみるとキッチンがあるので、料理をすることも可能なんだよね。僕は料理が得意なわけでは無いけれど、肉を焼くぐらいは出来る。しかし残念ながら、箱庭ハウスにはフライパンなどの調理道具まで用意されていなかった。まあ、その辺りはまた今度で良いだろう。


 食事を終えた僕は、何気なく転移の水晶を眺めた。転移先が第三層の町の入り口に設定されているので、その場所を映し出すことが出来るのだ。フィールドにしか設定できないけれど、ある意味監視カメラ的な使い方も可能なのだ。


 お茶を飲みながら町の入り口を見ていると、冒険者が何度か出入りしている光景が映し出された。僕は冷やしたお茶を飲みながら、ぼうっとその光景を見ていた。


「ブゥゥゥゥゥ、グハァ、ゲホゲホ」


 僕はお茶を吹き出してむせ返る。見てはいけないものを見てしまった。ついに来てしまったのだ。彼女が・・・。


 その名はリコッテ。僕の幼なじみで村長の孫。大賢者リコリースの子孫で、既に大魔術師としての片鱗を見せている。そして僕にとってのターミネーター。


 サドンから事実を告げられたとき、ある程度の覚悟はしていた。いや、覚悟したつもりになっていただけだったようだ。身体がガタガタと震え始める。ぶっちゃけこれから戦うボスよりも、リコッテの方が怖い。


 彼女は二人の仲間を連れて町の中へ入っていった。一人知らない人物が増えている。綺麗で上品そうな女性だった。格好から考えて、回復担当の魔術師かな。攻撃担当の魔術師は十分に間に合っているだろうし。


 身の危険を感じた僕は箱庭から出てボス部屋の扉に近づく。ボス部屋が避難先のようにすら感じられる。


 グィィィィン


 さすがは第四層、ボス部屋の扉は自動で開く。そして特に部屋に入るのにキーのような物は必要としない。やっぱり探索しなくても良かったらしい。さあ、第四層のボスとの戦いだ。


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