79 ミスを犯したミスコン
僕に声をかけたのは剣聖ブレアだった。
「ブレアさん・・・えっとその格好は?」
「ミスコンに出ていたのを見ていなかったのね。一応、優勝したのよ。」
ドレスに身を包んだ剣聖が、その場で舞うようにくるりと一回転する。あまりの美しさに現実感が朧気で、まるでこの世のものではないように見えた。
「あの、僕に何かご用ですか?」
「アダマンタイトの剣のお礼に来たのよ。これで第七層の攻略に入れるわ。」
「大したことはしてませんよ。それに武器を作ったのは魔法・・・鍛冶屋のオヤジですから。」
「アフタがいなければ完成しなかったわ。本当にありがとう。」
僕の目をまっすぐ見つめてお礼を言う剣聖ブレア。人と目を合わせるのにまったく慣れていない僕は、そわそわして挙動不審になってしまう。どうやら剣聖用のアダマンタイト武器も完成したようだ。
「それと・・・さっき、サドンという男と話していたわよね? 何を言われたの?」
突然サドンの話になった。もしかして剣聖ブレアはイケメンのサドンが気になるのだろうか? まあ、やっぱり世の中イケメンだよね。
「僕の幼なじみがソルトシールに来ているという話を。」
「それだけ?」
「それだけです。」
リコッテの件があまりにも強烈だったので、他の内容は僕の脳内からほとんど吹き飛んでいる。すごい謎めいたことを言っていた気がするんだけど、結局何のことだかさっぱり分からなかった。
「ブレア、こんな所にいたんですの?」
武王ギデアだ。彼女はいつも通りの服装をしている。彼女はミスコンには出なかったのだろうか?
「借り物のドレスだから持ち出しはマズイですの。あ・・・もしかしてアフタさんに見せに来たんですの?」
その言葉に顔を赤くするブレア。ドレスを見せに来た? なんで?
「私もドレスのまま来れば良かったですの。」
「ギデアさんもミスコンに参加したんですか?」
「審査員特別賞をもらいましたの。」
その審査員は若干の犯罪者臭がするのは気のせいか? 気のせいだろう。うがった見方は良くない。
「せっかくですの。お祭りを一緒にまわるですの。」
ギデアがそう提案し、ブレアもそれに頷く。リコッテの件で精神的ダメージを受けていた僕は、そろそろ帰ろうかと思っていたんだけど。
コミュ障の僕に断るという選択はとれない。そのまま三人で買い食いの旅が始まった。僕のお腹はあっという間に限界に達したんだけど、剣聖と武王の胃袋は底知らずだった。次々と露店の在庫を空にしていく凶悪な二人。最強の冒険者達だけのことはある。カロリーの摂取量が尋常では無い。僕はそれを唖然とみることしか出来なかった。
途中、脳筋の人達に声をかけられたり、ジェイドンとその仲間達に改めてお礼を言われたり、その他冒険者から風呂の話やジャンクについて聞かれたりと、様々な人から話しかけられた。そういうのは苦手なのでそっとしておいて欲しい。
「アフタは顔が広いのね。」
剣聖ブレアが僕にそういった。いや、絶対にあなたの方が知名度は上ですよ。そうは思ったものの、僕は笑って話を濁した。
「アフタさん、しばらくぶりです。」
今度話しかけてきたのはスコヴィルだ。彼女は剣聖達にも会釈で挨拶する。しばらく顔を見ていなかったけれど、何だが以前よりもやつれた気がする。
「何だか元気が無いみたいですが、大丈夫ですか?」
「身体の方は全然平気です。ちょっとパーティーの中でゴタゴタがあって。でも全然大丈夫ですよ。」
そう言って無理に笑顔を作るスコヴィル。そして約束があるからと去って行った。本当に大丈夫だろうか? ふと気づくと、ブレアが意味深な表情でスコヴィルを見つめていた。二人がどの程度の面識なのかは僕には分からない。
さらに買い食いを続けていくあらゆる意味で化け物の二人。彼女たちのパーティーは明日から第七層攻略に旅立つらしい。
僕が七層へ到達する頃には、剣聖達によってダンジョン踏破が終わっているんじゃ無いだろうか? とにかくまずは第四層のクリアだ。そのための準備は既に終わっている。
【 41日目 】
単価 個数 金額 項目
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4万5000蝸 1個 4万5000蝸 風呂燃料売り上げ50%
2万0000蝸 1個 2万0000蝸 鍛冶屋燃料売り上げ50%
-2万0000蝸 1個 -2万0000蝸 防具返済(2)
-8400蝸 1個 -8400蝸 買い食い
[ 残金 25万8400蝸 ]




