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73 雑巾で包んでおく臓器


 39日目。体中が汗ばんでいる。そしてパンツもぐっしょりなんだけど、これは汗だよね? とにかくあの悪夢のことは忘れよう。僕は夢ではなく現実の世界に生きているのだから。


 身体は痛みがそこそこ残っていた。けっこう重症だったのかもしれない。腕力で締めてくるパンパイアってどうなんだろう? まあ、首をはねた後だからあの程度で済んだのだろうけどさ。


 僕はライフポーション(低)を追加で飲んだ。効き目を考えるとやはり上位ランクのポーションが必要だ。あとで買うことにしよう。


 箱庭から出た僕はウーナに乗って、大漁にゲットした核を冒険者ギルド出張所に引き渡しに行った。ギルドでは対応の冷たい女の子が、数だけ数えて投げ出すようにお金の詰まった袋を渡してくる。


 ドン!


 袋が勢いよく積まれ、そしてテーブルが軋んだ。渡した核の数が過去最大級だったんだけど、受け取る金額も過去最大級だった。金額はあっさりとスカルドラゴンを超えたのだ。収集した核の数は250余り、そして受取額は600万シュネオーバーだった。ちなみにあのバンパイアはパンパイアロードだったらしい。


 受付の女の子は大漁の核の交換を行っても面倒くさそうな顔をするだけで、まったく驚きもしなかった。実はこのぐらいは当たり前なのかもしれない。しかし冒険者ギルドって、いったいどれだけの資金力があるんだろう?


 その後、ドロップ品を売り払いにいった。パンパイアロードの目と心臓だけは希少素材なので、これから先に進むのであれば、持っておいた方が良いと店の人に言われた。ちなみに二つで500万シュネの値が付くらしい。臓器売買の金額は恐ろしいな。とりあえず切羽詰まったら売ろう。


 なんだか知らないけれど、気がつくと所持金が800万オーバーになった。もしかして今度こそ僕は超大金持ちじゃないか? 一回の戦闘であれだけ稼げるなんて夢のようだ。


 用を済ませた僕は宿屋へ向かう。宿爺に繰り上げ返済するためだ。さすがにこの状態なら返しても問題は無いだろう。ウーナに乗って宿屋の前に移動すると、宿爺は庭の手入れをしていた。彼はかなり儲けていそうだけど、こういう所は自分で手を入れるタイプらしい。


「アフタ君、戻ってきたか。ジャンクを使役しているのは初めて見るの。」


 宿爺はウーナを興味深げにジロジロ見ている。ちなみに他の二匹は箱庭にしまってあるだけど、水晶を翳して「君に決めた」と言うと取り出すことが出来る。色んな意味で危険極まりないシステムだ。


「色々あって第四層で仲間にすることが出来ました。」

「聞いているよ。絶望の墓場でそのジャンクを使って冒険者を助けたのだろう? 彼らが噂をしていたよ。いずれは剣聖を超える少年に出会ったと。」

「それ、完全に勘違いですよ。」

「さて、それはどうかの。」


 宿爺は僕を見てニヤリと笑う。今回はたまたま第四層と僕の相性が良かっただけだ。次の階層では通用しないのは分かっている。変な期待をしないで欲しい。

 

「彼らは今、治療院におるから行ってみると良い。お礼を渡したいらしい。まあ、貰えるものは貰っておけ。」


 とりあえず僕は、宿爺に借金を繰り上げ返済した。別れ際に、また何かあったら遠慮なく相談に来るように言ってくれた。そして僕は治療院へ向かう。その途中で見知らぬ男が僕を見て話しかけてきた。僕はウーナに止める。


「もしかして君がジャンキーのアフタ?」


 え? ジャンキー? 何それ? 意味が分からず混乱していると、男が続けて話す。


「ジェイドン達を助けてくれただろう。ヤツとは同郷なんだ。俺からも礼を言う、ありがとうな。他の魔物ならともかく、第四層のジャンクを使役しているヤツなんて初めて見たよ。ジャンク使いとは凄ぇな。」


 まさか、まさかとは思うけど、ジャンクを使っているからジャンキー? ヨクジョーの次はジャンキー?


 なんで僕にはまともな通り名が付かないんだろう? 勘弁して欲しい。


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