45 牽制したい剣聖の人
僕は露天風呂の目隠しの資材を調達するためこの場を離れることにした。
「スコヴィルさん、僕はまだ色々と仕事があるので出かけますね。いったんボイラーは止めますけど、風呂は入ってもらってかまいません。」
「良いんですか? ありがとうございます。では早速。」
「ちょ、僕が出かけてからにしてください。」
いきなり服を脱ごうとするスコヴィル。剣聖ブレア、魔術師スコヴィル、この世界の女性は羞恥心とかを持ち合わせてはいないのだろうか?
「ありがたく御拝見すれば?」とかはあり得ない。たまたま見えてしまったものは仕方が無いが、僕のチェリーな精神には負荷が大きすぎるのだ。ちなみに一つハッキリしたことがある。スコヴィルさんは胸がデカい。
さあ、さあ、さあ、まずは木材の調達だ。夜になる前にある程度の資材を集めなければ。僕は村の外へ出かけようとした。その時、村の出口で声をかけられる。
「露天風呂の資材集めでしょ、手伝いますよ?」
そこにいたのは剣聖ブレアだった。腰には剣を差していたが、完全に軽装だ。彼女にとって第三層は、散歩に行く程度の感覚なのだろう。
「え? そんな・・・。ブレアさんにそんな雑務は。」
「さっきの温泉のお礼よ。お風呂の方は完成したらきちんと料金は支払って入りに来るわ。」
「そうですか、ではお願いします。」
こうして僕は剣聖ブレアと一時的にパーティーを組んだ。ついにソロ脱却。しかも初めてのメンバーが最強の女だ。
「アフタの故郷はどんなところ?」
「故郷? 凄く田舎の村ですよ。土や気候には恵まれているので、食べ物には不自由しませんでした。」
「・・・そう。」
何故か残念そうな顔をするブレア。コミュ障の僕は、こんな短い会話で空気が読めず、変なことを言ってしまったのだろうか? すると突然彼女は僕の前に出た。魔物・・・芋虫だ。
彼女はそのままスタスタと芋虫に近づいていく。カチンという金属音が聞こえた。剣を抜いた・・・ではなく仕舞った音だ。彼女の挙動は、僕の動体視力の限界を超えてしまった為、抜いた動作がスルーされてしまったようだ。芋虫は見事に真っ二つに。切り口が見事すぎて、時間差で芋虫の体液が吹き出るような状態だった。戦い方の参考にしたいんだけど、実力差がありすぎて何も得られるものが無い。
さらに蝶だ。彼女はやはりスタスタと近づいていく。蝶は触手のような突起物を大量に放ち彼女を襲う。しかし・・・それは蒸発するように消えた。気? オーラ? 念? そして真っ二つになる蝶。まあ、第七層到達者がこんな序盤で戦ったらそうなるよね。
僕は彼女が倒した分のドロップを回収した。第三層で初めての魔物のドロップだ。自分の力がまったく含まれていないところが悲しい。ちなみに倒した本人は必要が無いからいらないと言った。まあ、そうですよねぇ。
そして僕とブレアは一本の大木へとたどり着く。そこで僕は出血ノコギリを使い、ちょこまか枝を切るつもりだった。
「下がっていて。」
彼女はそう言うと剣を抜いた。まさか・・・と思ったが、そのまさかだった。刃がうっすらと光る、そして一閃。数秒の間。ゆっくりと滑るように倒れる大木。
剣聖にとってみれば大木を切るなんて、ケーキを切り分ける程度の手間なのだ。本気なんかまったく出していないのだろうけど、その状態ですら化け物としか思えない。ここまでの実力が無いと、第七層まではたどり着けないのだ。行ける気がしない。
「どのぐらいのサイズが欲しいの?」
彼女は必要資材の大きさを聞いてきた。それに僕が答えると、その通りきれいにカッティングしていく。ノコギリとかいらないじゃん。
僕は魔法の袋に資材を詰めていった。ギリギリ一杯ではあったけれど、なんとか資材は袋に収まった。魔法の袋(中)、まったく侮れないアイテムだ。
そんなこんなでいつの間にか日が傾いていた。って、マズい夜が来る。いや、大丈夫か。僕には最強のボディーガードが付いている。
日が沈むと共にお約束のように現れるスケルトン軍団。奴らの出現を確認したブレアは、周囲を明るく照らした。それがスキルなのかアイテムなのよく分からない。光は攻撃用では無く単純に周囲を見やすくするものらしい。
「明るくしなくても戦えるのだけどね。」
彼女はそう言った。だったらなんで照らしたんだろう?
僕が疑問に思っていると、バスバスと飛んできたよ弓攻撃! ところが彼女の周辺へ飛んできた矢は突然軌道を変えて、さっぱり当たる気配が無い。近くにいる僕にも恩恵がある。彼女のスキルなのか、魔法なのか、装備品の力か、その他なにかあるのか、さっぱり分からない。ただ矢が当たらないという結果しか僕には理解できない。
そして次は魔法攻撃だ。ファイヤーボールが撃ち込まれてくる。矢同様、彼女には通用しない。魔法が2メートルぐらいの所へ近づくと、勝手に暴発して散っていく。バリア?
そして彼女は凄まじい速度でスケルトン達の中へ飛び込んでいくのだった。




