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4 女神に会う前、目が見えない

 僕は村を出て旅立つ。初体験ばかりの長い道中を経験し、ついにソルトシールに到着した。僕の冒険は始まったばかりだ!いや、始まってもいないか。街は賑やかだ。無計画に建てられていったと思われる建物が建ち並び、あちこちに露天が出ている。そして人だらけだ。この街の人口密度を通常の酸素の量と考えると、ボリハ村なら確実に窒息する自信がある。


 コミュ障の僕は震えながら町の人に冒険者ギルドの場所を聞く。「コイツ夢見て田舎から出てきやがったな」という視線が痛いほど刺さる。そしてなんとかギルドの前にたどり着いた。前世の記憶が無い状態で、突然この人口密度にあてられたらどうなっていたことやら。あって良かった前世の記憶。とにかく到着した。


 ギルドの入り口の扉は階段を登ってすぐだ。僕は階段を一歩、また一歩と登る。ギルド加入のために用意した金貨の入った袋を持つ手に、つい過剰な力が入ってしまう。この国の貨幣は不思議な形をしている。なんだかよく分からないグルグル巻いたような模様が付いているのだ。


 僕が扉に手をかけようとすると、勝手に扉が内側に開く。そして大男が飛び出してきた。僕はすごい衝撃と共に階段を転げ落ちる。目の前が真っ暗になり、体が動かない。


「なんだお前?」


 大男が僕に声をかける。僕は少しずつ感覚を取り戻し、なんとか動けるようになる。それと共にズキズキとした痛みが大きくなっていく。僕は倒れたまま大男の方を見た。革の鎧に所々金属がコーティングされている鎧を身につけている。


「なんだ、動けないのか?まあ、なんだ。すまないな。」


 そう言って僕の手をつかみ引き上げる。僕は立ち上がることが出来た。大男、もしかしていい人なのか?


「ありがとうございます。」


 僕がそう言うと大男は「気をつけろよ」と言い残し、その場を去ろうとした。


「待ちなさい。」


 突然女の人の声が聞こえた。


「何だ、俺は急いでるんだ。俺に優しく()でられてどかされる前にそこを・・・。」


 言いかけて、大男が立ち止まる。大男の顔が青くなる。


「立ち去るのは構いませんが、その袋を置いて行きなさい。あなたのものではないでしょ。」


 よく見ると大男は見覚えのある袋を持っていた。僕の金貨袋だ!


「ああ、いけねえや。渡そうと思ってたんだよ、うっかりしてた。ほら落とし物だ。もう落とすんじゃねえぞ。」


 僕に金貨袋を投げてよこす大男。そしてこそこそと去って行く。僕は女の人の方へ視線を移す。そこには芸術的で精巧な作りをした鎧があった。コミュ障の僕はなかなか女の人の顔を見ることが出来ないけれど、今は興味の方が勝った。僕の視線の先には・・・金色の髪に青い瞳、まるで女神の彫刻のような人が映った。


「気をつけなさい。ここがダンジョンの中だったらあなたは死んでいたわよ。」


 そういうと僕の返事を待たず、冒険者ギルドの中へ入っていった。僕も後を追うようにギルドの中へ入る。体の節々が痛いような気がするものの、何故か痛みが気にならなくなった。女の人はギルドの奥のカウンターの方へ向かっている。僕はキョロキョロと辺りを見渡す。


「君、ギルドは初めて?」


 受付の女性から声をかけられる。僕は「は、はい」とキョドりながら応じる。そして冒険者ギルドに加入を望む旨を話した。そして100万シュネを差し出す。そして名前を聞かれたので答えた。


「アフタです。」


 そう言うと、紙に日時や名前やを記入していく。

 自分で記入する形式で無いのは、文字の読み書きが出来ない人がいるからだろうか?


「加入は承ったわ。その年でよく大金を用意できたわね。このあと講習会があるから参加してね。それにしてもブレアさんに会えるなんてラッキーだったわね。」


 僕が何のことだか分からないという顔をしていると、受付の女性は続けて話した。


「六層到達者の剣聖ブレアさんよ。奥のカウンターにいるのを見たでしょ。六層はソルトシールのダンジョンの最高到達記録よ。そこに行ったのはたったの四人だけなの。この冒険者ギルドの最高峰よ。」 


 六層がどの程度すごいのかイマイチよく分からなかったけれど、とんでもなく凄い人なのだと言うことは分かった。そんな天上の人、これから会うことも、会話することも無いだろうと朧気に思った。有名人の追っかけをしにここまで来たわけでは無い。とにかくダンジョンで冒険をするんだ。そして僕は講習会に参加するために、別室へ移動することになった。


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