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35 取っ手を取って

 芋虫の丸焼き、今回は食べてみよう。そんなことを思いながら、火炎放射器から出る炎の先を見つめる。

「あれ?」

 丸焦げになっているはずの芋虫がいない。蒸発でもしたんだろうか?


「ぐはっ。」

 僕は身体に凄まじい衝撃を感じた。そして転倒する。その衝撃で火炎放射器のタンクとノズルが僕の元から去って行く。目の前には芋虫。奴が体当たりしてきたのだ。僕はすぐに立ち上がろうとするが、半身を起こしたところで脇腹に激痛が走る。

「ごっ。」

 再び転がる。また体当たりを食らったようだ。マズいことに、僕は芋虫の動きをまったく追えていない。愚鈍そうに見えるあのフォルムで、とんでもなく素早いのだ。そして体当たりの一撃は、ハンマーで殴られているような衝撃だ。


 さらに体当たりを受ける。体中がきしみ、もはやどこが痛いのかすら分からない。このままだとゲームオーバー、死因は芋虫っていくらなんでも悲しすぎるだろう。僕は魔法の袋から必死でハッカ油を取り出す。そしてそれを自分にかけた。ツンとする臭いが鼻を刺激する。その瞬間から、突然攻撃が止んだ。周囲を確認すると、芋虫は影も形も見えない。どうやら助かったようだ。


 ・・・第三層、歓迎の仕方が手荒すぎる。雑魚と見せかけて、あんなヤバい奴が初っぱなに配置されているとは。とにかくしばらくは魔物を見つけても手を出すのはやめよう。とにかく起き上がらなければ。


「・・・動かない。」

 体中に激痛が走り、呼吸をすることすらままならない。骨が何本か折れているかもしれない。このままだと死ぬ。僕は激痛に耐えながら、なんとかライフポーションを取り出した。そして震えながら口に持って行く。何とか飲むことが出来た。しかし即座に効く薬では無いので、しばらくはこのままの状態が続く。今、他の魔物に襲われたら一巻の終わりだ。ハッカ油の力を信じるしか無い。


 小一時間ほどすると、なんとか身体を動かせる状態にまで回復した。さすがは魔法の薬。そして最近さっぱり使わなかったので、高をくくって買い足していなかった。ライフポーションの残量はゼロだ。とにかくここにいても危険なだけだ出発しよう。


 まずは第三層にあるという村を探そう。そこを拠点にして探索するのが無難なはずだ。そして探すのはそう難しくない。何故かって?答えは簡単、それっぽい道があるのだ。僕はその道を辿って進んでいく。移動中になにかありそうな大木や大岩などを見つけたけれどスルー。2時間ほど歩いて行くと、ようやく柵で覆われた場所を見つけた。たぶんあれが村だろう。第三層、広すぎだ。


 空を見ると、ダンジョンの中だというのに日が傾いて夕方のようになっている。今回は太陽みたいなものが空・・・じゃなくて天井に浮かんでいる。もしかしてダンジョン内に夜まで来るんだろうか?どんどん常識外れになっていくな。


 夕日のオレンジに照らされた柵に近づいていくと、入り口と思われる門を見つけた。門には複雑な文様が刻まれていた。よく見ると、柵にも同じようなものが描かれている。もしかしたら魔物よけの力があるのかもしれない。


 とりあえず門の取っ手に手をかけて引っ張ってみる。・・・開かない。閉まってるのかな?もう一度引っ張ってみる。やっぱり開かない。まいったな。


 空は夕日が沈み、夜になろうとしていた。門の前で野宿とか勘弁して欲しいな。そんなことを考えていると、カタカタという乾いた音に気づく。何だろうと思って辺りを見渡すと暗がりでハッキリと見えないが、遠くで人影のような物が見えた。


 もしかして村の人だろうか? 助かったと思い駆け寄ろうとする。しかし妙なことに気づいた。数が・・・10・・・20もっとか? こんな見通しの良いところで突然現れるっていったい何だ?


 影が集団でどんどん近づいてくる。すぐ横でサクっという何かが刺さる音が聞こえる。僕は音の方向を見た。すると・・・矢? 近づいてくる影達。そして僕は見た。それが骨・・・スケルトンの集団であったことを。


「ひぃぃぃぃ。」

 僕は尿意どんっという合図と共に、微妙にチビった。初のアンデット系との遭遇だ。僕は門の取っ手を必死に引っ張った。空かない。助けてぇぇぇ。


 とにかく敵の数が多すぎる。戦ったら・・・僕はボッチでは無くなるかもしれない。きっとスケルトンの仲間入りをすることだろう。いや、スケルトンのコミュニティーに爪弾きにされる可能性も・・・。まてまて、仲間入りなんてまっぴらゴメンだ。


 パスパスパスと音が聞こえる。矢が僕の周りに刺さっていく。矢は嫌だ。完全に僕が狙われている。月明かりに照らされて、スケルトン達の姿がハッキリと見えてくる。さっきから弓を射かけてくる奴と、剣や槍を装備した奴、そして杖を装備した魔術師タイプ。そして数が尋常では無い。


 マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイィィィィイッィ。


 あんあんいやぁん、アンデッドォォォォ。もしかしたら僕は、お尻の方からも何かを吹き出したかもしれない。


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