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28 業火の中でつかみ取る、豪華焼き肉セット

 吹き上がる炎。一応、試運転はしていたのだけど、こっちに向かって迫ってくる魔物に放ったのは初めてだ。コボルトは走ってきた勢いで、火だるまになりながら僕の方へ飛び込んでくる。その光景にちょっとビビった僕は、少し後ろへ下がる。


 先頭の火だるまコボルトが僕に近づく。しかしその勢いはどんどん失われ、そして突然倒れる。今度はその後ろにいたコボルトが火だるまに変わる。


「焼き加減のお好みはぁぁ?レアァァァ?ミディアムゥゥ?それともぉぉぉ・・・」

 コボルト達が歩みを止めたので、僕は勢いに乗って一歩、また一歩と近づいていく。


「ウェルダンかぁぁぁぁぁ!」


 僕はピストンポンプの操作回数を増やし、火炎放射器からより強力な炎を吹き上がらせる。生き物が火炎放射器を食らった場合、当然大やけどを負う。しかし即効性という面で考えると最も致命的なのは、呼吸で炎を吸い込んでしまうことだ。肺が焼かれてしまっては、もはや火から逃れても死ぬしか無い。


 コボルトトレインは脱線した。隊列が崩壊し大混乱のコボルト達に、満遍なく火炎放射を浴びせる。それほどの火傷を負っていないように見えるコボルトも、呼吸による肺へのダメージにより倒れていく。僕はさらに炎をまき散らした。


「燃えろ!燃えろ!真っ赤に燃えろぉぉぉ!」

 最近、僕の頭はどんどんおかしくなっている気がする。でも、それを指摘してくれる人はいない。何故かって?ボッチだからさ。


 そして焼き肉パーティーは終わった。火炎放射の光を見続けたせいで、目がチカチカする。第一層の暗さに暗順応するまでしばらくかかりそうだ。ふと、僕の背後に気配を感じる。振り返って火炎放射器のノズルを向けると・・・さっきの冒険者達だ。彼らは僕の動きにビクッと反応し、すっ飛んで逃げて行ってしまった。うーん、別に恨んでもいないし、攻撃するつもりも無いんだけどなぁ。


 とにかく実験は成功した。灯油タンクを確認するとまだ残量はある。しかし今日はここまでにしよう。ポンプに若干の引っかかりがある。肝心なときに故障したらたまったものでは無い。


 そしてドロップを回収しつつ街に戻った。ちなみにコボルトを焼いたせいか、ドロップに焼き肉が含まれていたけれど、これは食べられるんだろうか?


 一時期、資金のパンクが危ぶまれていた中、素材の売却で一気に所持金が増えた。あの冒険者達に感謝しよう。そう思いながら酒場で一人焼き肉を食べていたところ、なんとあの冒険者パーティーと出くわしたのだ。


 儲かってハイになっていた僕は、コミュ障な自分を忘れて彼らに近づき、ボソッと言った。

「さっきはありがとう。お礼に、焼き肉・・・奢りましょうか?」

 僕としての最大級の笑顔を作る。


 すると、突然青い顔をする冒険者達。

「悪かった、本当に反省している。だ、だから焼き肉はやめてくれ。」

 何故か蜘蛛の子を散らすように、全員が店から出て行ってしまった。やっぱりコミュ障のボッチがだれかと対話をするなんて不可能なんだなぁ。焼き肉嫌いなのかな、美味しいのに。


 ということで、今日の決算報告。


日数  項目          金額    個数 合計    所持金  

-------------------------------------------------------------------------

13日目 モーニングセット      -1200蝸  1個   -1200蝸 2万5900蝸 

13日目 コボルトメイジの核     2800蝸  3個   8400蝸 3万4300蝸 

13日目 コボルトの核        1300蝸  9個  1万1700蝸 4万6000蝸 

13日目 コボルトの爪        2300蝸  3個   6900蝸 5万2900蝸 

13日目 コボルトメイジの角     6500蝸  2個  1万3000蝸 6万5900蝸 

13日目 コボルトの焼き肉      1000蝸  5個   5000蝸 7万0900蝸 

13日目 豪華焼き肉セット      -3800蝸  1個   -3800蝸 6万7100蝸 

 

 コボルトの焼き肉、全部売っちゃったけど食べてみれば良かったかな?薬屋の婆さんは、「毒は無いから食べられはする」と言っていた。次回入手したら食べてみよう。ということで、焼き肉で腹を満たしたので就寝。




 14日目だ。準備を整えた後、朝食を食べているといつもの視線を感じる。

「おい、アイツ・・・一人焼き肉だ。」

 僕は眉間に手を当てた。確かに一人焼き肉してたけど、それはあだ名にされるほどなのか?

「ヤバいぜ。知り合いが、もう少しで自分たちも焼き肉にされるところだったって。」

「お、おい、目を合わせるな、焼かれるぞ。」


 ・・・・・・・え?なんでやねん。僕がいつ人間に放火殺人未遂をしたんだろう?もう、訳が分からない。僕は朝食を早々に腹に掻き込むと、ダンジョンの入り口へ向かった。


 そして新たな武器を携え第二層へ降り立った。最初は広大だと思った第二層が、何故か今はそれほど広く感じない。不思議なものだ。そして大蜘蛛出現ポイントへ向かう。


 そういえば以前、冒険者パーティーが大蜘蛛にファイヤーボールを放っていた。その時は大蜘蛛を地面に落下させる程度に終わったけれど、僕の火炎放射器は火力が違う。でもまあ・・・効かなかったら全速力で逃げよう。


 しばらく歩いたところで獲物を発見する。大蜘蛛だ。僕は火炎放射器を構える。


「おぉぉぉぉ!」


 僕は突撃した。


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