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27 資金がパンクしたら、パン食うのも難しい

 街に戻った僕は、郊外に作業場を借りた。ちょっと遠いのが欠点だけど、安い物件がそれぐらいしか無かったのだ。月額3万シュネの前払い。


 今回は石炭を燃料に、製油の装置を作る。ジャンクの金属容器を用いて加熱し、蒸気を集める。沸点が低いガソリンは気化が早すぎて現在の設備だと作り出すのが難しい。今回作れるのは軽油成分の多い灯油と、分離後に残る重油だ。ガソリンは金属溶接が出来るようになって、密閉状態で加熱をすれば作れるかもしれない。


 ちなみに原油をそのまま燃やすと、成分によって燃焼温度が異なるため、燃焼しきれなかった成分が不完全燃焼を起こす。特に重油付近の成分を中途半端な温度で燃やすと、有毒ガスが多く発生するのだ。だからこの世界では質の悪い油と言われているのだ。そのため精油という行程が重要となる。成分を分離すれば燃焼のタイミングが均一になり、不完全燃焼を起こしにくくなるからだ。


 そして実験は成功し灯油が生成された。何故灯油を作ったか疑問に思うかもしれない。もちろん冬をストーブで暖かく乗り越えるために作ったのでは無い。第二層突破に必要だからだ。


 現時点での僕の戦闘力では、蜘蛛一匹を倒すのが関の山だ。そして第一層で生み出した投石は、二層では通用しない。ならば新たな武器を作らなければならない。僕は鍛冶屋にちょっとしたパーツを発注した。料金は2万3000シュネ。その他にも細かい物を購入し、かなりの散在となった。


 カネは持っているだけでは意味をなさない。投資してリターンを得なければ、宝の持ち腐れだ。どこかで聞いた話がある。


 しかしカネというのは寂しがり屋で、仲間が多いところに集まるとい説もある。・・・じゃあ、僕の所には集まってこないということか?そんなことは無い。一時の別れに過ぎないはずだ。だって、また会おうと約束したんだから。カネさんはきっと約束を守ってくれるはずなのだ。


日数  項目          金額    個数 合計    所持金  

-------------------------------------------------------------------------

11日目 朝食セット         -800蝸  1個   -800蝸 6万1100蝸 

11日目 スライムの核         500蝸  2個   1000蝸 6万2100蝸 

11日目 コボルトの核        1300蝸  3個   3900蝸 6万6000蝸 

11日目 コボルのと牙        3000蝸  1個   3000蝸 6万9000蝸 

11日目 作業場家賃       -3万0000蝸  1個 -3万0000蝸 3万9000蝸 

11日目 ジャンクパーツ       -5300蝸  1個   -5300蝸 3万3700蝸 

11日目 鍛冶屋工賃       -2万3000蝸  1個 -2万3000蝸 1万0700蝸  


 今回は資金がパンクしそうなので、夕食は昨日の食料の残りを食べた。




 12日目スタート。今日は原油を回収しに第二層へ向かう。資金難なので第一層のコボルト5匹を無視せずに倒した。そして第二層。


 ハッカ油の効果で、虫系の魔物を寄せ付けずに進む。動物系に出会わないように、水辺は避けることにした。ここまでのマップから推測すると、恐らくボス部屋はその先にあるのだろう。現時点ではまだ行ってはいけない場所だ。


 途中素材をいくつか収穫し、少々迂回しつつ油田に到着する。そして目一杯原油を回収した。用事は済んだので早々に街に戻ることにした。


 素材売却後、鍛冶屋に頼んでいたパーツを受け取り、作業場へ出向く。そして新たな武器を組み上げる。ノズルから出る霧が最も細かくなるように調整をかける。出来上がった物をタンクに接続し完成した。この瞬間、大魔道士アフタが誕生した。そして今までの残りの食料を片付けて、この日は終了した。


日数  項目          金額    個数 合計    所持金  

-------------------------------------------------------------------------

12日目 コボルトの核        1300蝸  5個   6500蝸 1万7200蝸 

12日目 コボルのと牙        3000蝸  1個   3000蝸 2万0200蝸 

12日目 コボルトの爪        2300蝸  3個   6900蝸 2万7100蝸 


 13日目。朝食後、新たな武器の試運転に向かう。安全を期して第一層の魔物を相手にしてみよう。適当な魔物を探しているところへ、冒険者パーティーが勢いよく走り込んでくる。明らかに僕の方を目指してくる。その後ろには・・・コボルトの団体様だ。ええっとコボルト1ダースだね。メイジっぽいのも混じっている。見事な魔物トレインだ。


 そして冒険者達は、コボルトを僕になすりつけるように横を走り抜けていく。本来であれば卑怯千万な行為だ。しかし今日はコイツの試運転。そのぐらいでちょうど良い。


 僕は新たな武器を構え、ノズルの先を点火した。そしてコボルトトレインを待ち受ける。射程に入った。僕はタンクに入っている灯油をピストンポンプによる圧力でノズルに送り込んでいく。そして・・・炎が吹き上がった。灯油式火炎放射器。


「ウィィィ、今日は一人焼き肉パーティーだーぁぁぁ!」


 アドレナリンが過剰分泌され、今日も僕はおかしくなっていた。


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