24 四人なら死人は出ない
第二層の出入り口へ戻っている途中、冒険者パーティに出くわした。どうやら彼らも大蜘蛛を相手に戦うようだ。参考までに見学していこう。パーティの構成は槍と大剣を持った重装の前衛二人、メイスを持った軽装ヒーラー、杖を持った魔術師の四人だ。
まず魔術師がファイヤーボールを打ち出す。先制攻撃のお約束なのだろうか?枝に吊り下がっていた大蜘蛛を直撃し、ぶわっと炎に包まれる。炎はすぐに消え去り、大蜘蛛が地面に落ちる。炎が一瞬で消えたため、それほどダメージは受けていないようだ。
大剣を持った男は既に大蜘蛛の落下地点で待ち受けていた。そして落ちてきたタイミングで大剣をフルスイングする。大蜘蛛の身体は拉げながら飛ばされた。大蜘蛛の身体は硬く、あれだけの威力を持ってしても切断は出来ない。大蜘蛛はふっ飛ばされながら回転し横転する。ちょうど腹を見せる形になった。
そこへ槍を持った男が突撃していく。大蜘蛛の腹へ差し込まれる槍。槍が強力なのか腹は柔らかいのか、きちんと刺さっている。藻掻く大蜘蛛。そこへ大剣を持った男が近づく。大剣を振り上げ大蜘蛛の頭部へと振り下ろす。グチャリと潰れる頭。痙攣を起こす大蜘蛛。そして勝負はついた。冒険者パーティは核とドロップを回収すると奥へと進んでいった。僕はそれをただ呆然と見つめるだけだった。
僕が一匹対すのに要した労力と比較して、圧倒的な余裕があった。あれが一般的な第二層の到達パーティの実力なのだろうか?となると、ソロの僕がこのまま戦ってもフロアボスと戦うどころか、そこへ到達するのも難しいかもしれない。
マズいな。注意深く戦えば大蜘蛛の一匹ぐらいは何とかなる。しかし第二層には当然、他の未知の魔物がうろついているはずだ。その度に攻略法を考えていたら命がいくつあっても足りない。対策を考え直す必要がありそうだ。
僕は街へと帰還した。そして冒険者ギルドへ大蜘蛛の核を売却しようと訪ねる。
「パーティは組めた?」
受付のおねえさんが僕に笑顔を向けて聞いた。その笑顔と質問が僕の胸をズタズタにする。ここでも完璧に顔を覚えられてしまっている。冒険者は沢山いるはずなのになあ。石ボッチは覚えやすいのだろうか?
「いえ、今日はこれを。」
僕はパーティの話はボカしつつ、大蜘蛛の核を出した。すると受付のおねえさんが表情を変えた。
「ねえ、もしかして一人で第二層に降りたの?私の話は聞いてた?」
「換金をお願いします。」
僕は受付のおねえさんの言葉を打ち消すように言った。
「換金ね・・・分かったわ。大蜘蛛相手に一人で勝ったのは凄いけど、負けたらその一回で終わりなのよ。よく考えてね。」
コミュ障の石ボッチはパーティなんて組めません。そう言いたかったけれど、言ってどうにかなるものでも無い。僕はその言葉を飲み込んだ。
日数 項目 金額 個数 合計 所持金
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8日目 朝食セット -1000蝸 1個 -1000蝸 3万8800蝸
8日目 食料 -3500蝸 1個 -3500蝸 3万5300蝸
8日目 竹筒水鉄砲材料 -600蝸 4個 -2400蝸 3万2900蝸
8日目 水鉄砲補充用密閉瓶 -2400蝸 1個 -2400蝸 3万0500蝸
8日目 紅茶 -1500蝸 1個 -1500蝸 2万9000蝸
8日目 ケトルと燃料 -5400蝸 1個 -5400蝸 2万3600蝸
8日目 熱帯の草 200蝸 10個 2000蝸 2万5600蝸
8日目 熱帯の花 300蝸 8個 2400蝸 2万8000蝸
8日目 熱帯フルーツ 1300蝸 5個 6500蝸 3万4500蝸
8日目 熱帯の虫 200蝸 10個 2000蝸 3万6500蝸
8日目 謎の樹液 1000蝸 3個 3000蝸 3万9500蝸
8日目 蜘蛛の糸 1000蝸 3個 3000蝸 4万2500蝸
8日目 大蜘蛛の卵 2000蝸 4個 8000蝸 5万0500蝸
8日目 大蜘蛛の核 8000蝸 1個 8000蝸 5万8500蝸
第二層は一層よりも稼ぎは良いのかもしれない。その代わり危険が桁違いに上がる。だから一層で安全に稼ぐという手もある。しかしそんなことをしていたらいつまで経っても第三層には進めないだろう。
ちなみに冒険者ギルドの評価は到達階層によって以下のようになっている。
第一層 ひよっこ
第二層 駆け出し
第三層 一人前
第四層 熟練
第五層 凄腕
第六層 練達
現在の状況は一人前にすら達していない。本気でダンジョン踏破を目指すなら、後戻りをしている場合では無いのだ。素材集めで稼ぐにしても、やるなら第二層を探索しながらだ。僕はその為の準備に取りかかることにした。




