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204 答えにたどり着くには遠い問い

 時間と共にリコリスへ異世界からの魔力が流れ込んでいく。このまま何もしないでいたら、敗北は確定的なものになる。現時点でなら僕の攻撃は有効打になり得るが、エネルギーが供給されている限り、ペナルティ無しであっという間に回復されてしまうだけだ。

 

 打開策があるとすれば弱点を突くことだろう。現時点で考えられる弱点、それは7つの至宝だ。あれが巨大な体のどこかに組み込まれているはず。


 僕はゲキカランを召喚した。魔力切れで動作不能ではあるけれど、今度は僕の方から逆供給すれば問題ない。操縦席に入った僕は、ラバーカップと鍋のフタをゲキカラン側に装備させた。ブラ的なものは外に出す必要が無いので、僕の顔にジャストフィットしたままだ。あまりに自然な感じでフィットしているので、その存在を忘れてしまいそうになる。

 

 ゲキカランは僕の魔法によって蝶の羽を展開し、空中機動が可能な状態となっている。僕はゲキカランのコックピットからリコリスのサーチを開始した。

 

 ビンゴだ。至宝と思われる反応が7カ所あった。あれが弱点のはずだ。


「さすがパパ。まだ諦めないのね。うふふ、ならもう少し遊びましょう。」


 リコリスは楽しそうに笑っている。余裕を見せるのも今のうちだ。上手くいっている時に調子に乗る部分は、もしかして僕に似たのだろうか?


 まず腹部にある至宝に狙いを定めた。そして一気に突撃をかけた。


 パフ


 僕はリコリスの腹部を貫通し通り抜けた。手応えは・・・無い。


「やっぱり狙ってきたのね。うふふ、確かに体の維持に至宝が必要で、それが弱点なのは間違いないわ。でも場所は自由に変えられるの。」


 バレてた。どうやら僕がやろうとしていることは、一通り想定済みらしい。


「なるほど、僕の行動パターンはだいたい読まれているみたいだね。」

「そうよ。ずっとパパの姿を見ていたんだもの。」


 リコリスはリコッテ以上にストーカー気質があるようだ。ヤバい、僕のあんなことやこんなこと、人に言えない秘密も色々と見られたかも知れない。それはこの際諦めよう。


「なら、僕が次に何をしようとしているか分かるかい?」

「えっと・・・『もう策が無い、詰みだどうしよう』かしら?」


 なかなか見事な洞察力だ。


「ほんとうにそれだけ? 実はまだ詰みだとは思ってないんだけど。」

「う~ん、そんなふうに時間稼ぎしても、私が有利になるだけだよ?」


 そう、時間と共にリコリスの力はどんどんと膨らんでいく。既に僕と同じレベルまで達しているかも知れない。


「もしかしてキャパシティーオーバーになるのを待っているの? そうならないように対策はしてあるから大丈夫よ?」

「そうか、その可能性もあったのか。でも僕が考えているのは別のことだよ。」


 力を吸収しすぎてドカンと行くのは確かにセオリーの一つではあるけれど、さすがにリコリスがそこまで間抜けなら苦労はしない。


「そうやって、なにか引っかけるつもりかしら?」

 言葉で何らかの誘導しているのを疑っているようだ。


「僕はこの世界に来て、色々なことを学んだんだ。そしてその中で一番大きなものは何だったと思う?」

「相手の裏をかくこと?」

「違うな、それは止むに止まれぬ手段であって、学んだことじゃないよ。」

「発明や技術?」

「それは元の世界にいた時からの知識だから、この世界に来てからじゃ無いな。」

「えー、それじゃ分からない。何かヒントをちょうだい。」


 どうやらリコリスは本当に分からないらしい。ならばこの絶望的な状況でも勝ち目はあると言えよう。


「僕は序盤、まともにやったら手も足も出ない敵と戦ってきた。」

「うん、そうだね。」

「そして反則スレスレの技を駆使して何とか切り抜けてきた。」

「スレスレというか反則だと思う。」

「でもそのままだったらいずれ行き詰まっていた。」

「パパなら何とかなったかも知れないよ?」

「いや、魔法しか効かない相手とかもいたし、確実に駄目だったよ。だったら何故ここまで来られたと思う?」


 僕は少しずつヒントを出す。


「う~ん、何でだろう? やっぱりパパが凄かったからじゃ無いの?」

「残念ながらそうじゃない。じゃあ、今からその答えを教えてあげるよ。」


 結局リコリスはそれがなんなのか答えられなかった。


 さあ、これで本当に最後だ。


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