194 罹災したリサイクル
僕は周囲の情報のうちリコッテのバイタル情報を抽出する。失血によるショック状態で意識を失っており、危険な状態だと思われる。スコヴィルが治療を試みているものの、彼女は回復専門の魔術師では無い。サドンの時と同様、本人の体力が失われている状態だと治療は困難なのだ。
「アフタ殿、気を散らすとはずいぶんと余裕ですな。」
カンゾウによる鋭い斬撃がゲキカランの脇をかすめる。それで済んだのは、サドンが間に入りカンゾウに攻撃を加えたからだ。妖刀にかすめられたものの、自己ステータスに変化はない。あの力を吸う刀は、装甲ごしでは効果を及ぼさないようだ。
「カンゾウ、あなたはリコッテの仲間だったんじゃないのか!」
僕はカンゾウに向けて叫んだ。
「その通りですよ。仲間であるが故に、捨てたがっていた力をもらい受けたのですよ。守護者の力を継ぐのを嫌がっておりましたからな。」
「だからリコッテを刺したのか?!」
「これしか方法がありませんでしたからな。もちろん受け取った力を無駄にするつもりはありませんよ。」
「まさか、最初からそのつもりでリコッテに・・・。」
僕はゲキカランに剣を転送して構えた。
「いやいやとんでもない。それは買いかぶりというものですよ。そもそも私は先祖の遺言に従っているに過ぎません。先祖はリコリース様の憂いを打ち明けてすらもらえず、力になれなかったことを死ぬまで後悔していました。その憂いを晴らすことが我が家系の悲願。そしてそれは既に果たされました。」
カキーン、カッカッカ、キーン
サドンは会話に加わらず、ひたすらカンゾウに攻撃を仕掛ける。そこへ僕も剣を振りかぶって突撃を仕掛ける。カンゾウはサドンの攻撃をさばくため、僕の方へは無防備だった。
「うぉぉぉぉ!!!」
僕は剣を叩きつけるように振り下ろす。
ガシュ
無防備だったはずの体はすでにそこには無い。あっさりとカンゾウに避けられた。
「私同様、まだ力が使いこなせていないようですな。スピードもパワーもあるが、動きが大味すぎる。それでは当たりませぬ。」
サドンの攻撃をさばきながら、余裕で言葉を交わす。そしてその動きがどんどん速度を増す。サドンの表情からはいつもの余裕が消えていた。
「クソッ、リコッテから奪った力をどうするつもりなんだ?」
「先ほども言った通り、先祖の遺言は果たしました。ならば多少の役得はあってしかるべき。そうですな、いずれボロディアを倒し、私が世界を救うのと言うのも悪くありません。いずれはあなた方の世界にもお邪魔しましょうか。わざわざ外から魔力を運んできてくれるという。それと併せれば、異世界を支配するというのも夢物語ではありますまい。」
カキーン
とうとうサドンが戦線を維持できなくなりはじき飛ばされる。飛ばされた先で膝をつき、呼吸が激しく乱れている。
「リコッテはそんなことは望んでいない。」
「ならばどうするつもりですかな?」
『戦術サポートプログラム起動完了』
どうやら反撃の時間が来たようだ。
「カンゾウ、僕はお前を倒す。」
僕はそう叫んでカンゾウに斬りかかった。分かっている。例え茶番だとしても、僕は踊らない訳にはいかないのだ。




