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186 サボり癖のあるサポート

 僕が設計した巨大ロボットは、ギスケの手によって人が乗るタイプの強化装甲へ作り替えられてしまった。天才の手によって作り替えられたのなら、僕の設計よりも遙かにポテンシャルは高いはずだ。実際、ちょっと動かしただけで恐ろしいほどの機動力だった。ところが悲しきかな、僕はそのポテンシャルを生かす技術が無い。完全に宝の持ち腐れなのだ。


 とにかくやるしか無い。最初の一撃を防いだことから、ゲキカランの装甲は相当に強固だと考えられる。しかしどんなに強固であっても、一方的にやられ続けたらいずれ致命的な損傷を受けるだろう。僕は伸びる剣を構え、六本腕骸骨に突撃した。


 ドゴォォォン


 骸骨の横をすり抜け向かいの壁に頭から突っ込み、見事ヘッドバッドを決めてしまった。頭に激痛が走る。僕はめり込んだ頭を何とか壁から引き抜いた。剣は・・・折れていない。


 骸骨は盾を構えていた。どうやらさっき動きを突撃攻撃だと認識して防御していたらしい。何故か動きが止まっている。もしかして僕の動きの意図がつかめないから戸惑っているのだろうか? まあ確かにこんなところまで来た凄腕冒険者が、操作にてんてこ舞いで暴走しまくる間抜けだとは思うまい。


 僕は再び剣を構え、六本腕骸骨に斬りかかった。今度は力の制御が上手くいき、ちょうど良いポイントで止まった。そう、相手の一撃を食らうのにちょうど良い場所に。


 ガシュ、ガキン、ゴシュ、ガッ


 剣によって切られ、斧により重い一撃を浴び、再び剣による斬撃、最後に槍の一撃をまともに食らった。脳に送られてくる痛みの信号が多すぎて、もはやそれを痛みとして処理しきれない。ヤバい、意識が飛ぶ。


 今意識を失ったら死ぬしか道は残されていない。僕はギリギリのところで踏みとどまる。幸運だったのは最後の槍の一撃で吹き飛ばされたおかげで距離をとることが出来たことだ。もし生身の体だったら、吹き飛ばされる以前に貫通されて、その一撃で既に勝負がついていたことだろう。


 機体の状況を確認すると、いくつか警告メッセージが出ている。さすがにこれだけ攻撃を受けると、それなりに損傷が発生し、部分的な故障や性能低下が警告される。ゲキカランの制御システムが、損傷を修復するかどうかの確認を求めてきている。修復を始めると完了するまで機体性能が大幅に低下するらしい。つまり却下だ。


 ある程度は移動の力加減が分かってきた。問題は構えていた剣を振り下ろそうとした時点で、メッタメタに攻撃を受けたことだ。魔法と同じく剣による攻撃も、操縦者の技量が無ければ力が発揮されないらしい。


 本来なら巨大ロボによる圧倒的な火力で制圧出来るはずだったのだ。人間相手ならそれによって戦意を喪失させられただろう。けれど無いものをねだっても仕方ない。


 ゲキカランのシステムの扱いにはかなり慣れてきた。情報収集も少し意識するだけで、必要なデータを抽出できる。検索中に気になる項目を発見した。


『戦術サポートプログラム』


 あ、これもしかしてもしかするんじゃ無いだろうか? よし、起動だ! するとプログラムのロードが始まる。うん、始まった。読み込み進行状況が現在5%。って、遅すぎる。新規プログラムは最適化のため、読み出しに時間がかかるらしい。


 警告(アラート)発生。六本腕骸骨が剣と斧に強力なエネルギーをチャージしている。そして僕めがけて跳躍した。システムの補助でそれを認識することは出来たけれど、もはや僕にはどうすることも出来ない。プログラムロードの進行状況は10%。間に合うはずが無い。


 僕は破れかぶれで叫んだ。


「伸びろ剣!」


 ゲキカランの内包魔力を使用した伸びる剣は、縦に伸びるだけで無く横にも広がった。そしてエネルギーの砲撃と化す。これどこをどう見てもエクスなんとかという、どこぞの英霊の必殺技だよ。


 僕に向けて跳躍してきた六本腕骸骨は、巨大な長剣と化した伸びる剣に体を貫かれ粉砕されていく。システムから状況通知が大量に送られてきた。その中に敵の(コア)の位置の情報が混ざっていた。どうやら核を直撃したようだ。


 六本腕に装備されていた武器や盾がバラバラと飛び散っていく。そして辛うじて粉砕を免れた骨が辺りにガラガラと落ちていく。センサーから送られてくる情報は全てが、第九層のボスの活動停止を示していた。あまりの事態に呆然としていると、『戦術サポートプログラム』の読み込みが完了した通知が送られてきた。


 僕は思った。今頃遅いよ・・・。


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