181 並盛りの涙
ブレアが塔を建築を順調に進めていた。ここは寿司屋、そして塔は皿で出来ている。どれだけ食べるんだろう? 若干サドンが青くなっているように見えるのは気のせいか。
「ところでアフタ、さっきの話なんだが、もうここまで来たら遠回しに言うような仲でも無いだろう。ぶっちゃけて聞くが、アフタの悩みの種はリコッテの件だね?」
サドンは見事に僕の心中を察しているようだった。
「守護者を殺すしか無い。レイアちゃんにハッキリ言われたよ。」
「そうか・・・。アフタはどうするつもりなのかい?」
「・・・。」
「アフタが出来ないのなら、代わりに私がやる。」
「ブレア、僕はアフタに聞いているんだ。それにこれは誰がという問題じゃ無い。リーダーはアフタだ。まずはその決断を確認したい。」
三人が僕の顔を見る。いつ僕がリーダになったのかさっぱり分からないんだけど? 何故か、だれもリーダーの件について異論を唱える気配が無い。
「最後まで足掻いてみたいと思ってる。世の中に絶対なんて存在しない。僕はずっと抜け道を探してやってきたんだ!」
僕は優柔不断な結論を口にした。何の根拠も確実性も無い、我ながらなんと薄っぺらい内容なのだろう。
「分かった。アフタがそう言うのなら、僕らはそれに従うさ。」
サドンの言葉にスコヴィルもブレアも頷く。自分で言ったことだけど、本当にそれでいいの?
「アフタさんなら絶対に何とか出来ます!」
「私に出来ることなら何でもする。」
なんだろう、この信頼されている感じは。この人達、ちょっと目が曇りすぎじゃないだろうか? 目の前にいるのは、コミュ障で戦闘力皆無の役立たずなのに。そんなことが見抜けないなんて、本当にどうしようもない。寿司のワサビがキツくて涙が出てきた。
そして寿司を堪能した僕達は、次の戦いに備えて休息することとなった。第九層を超えればとうとう最後の戦いとなる。終わりは既に始まろうとしているのだ。
休息と準備が終わり、僕達は再び第九層へやってきた。そこは最初にやってきたときと変わらず、異様な気配を漂わせている森だった。サドンとブレアが前衛として、僕とスコヴィルがその後ろに控えた。僕はスバードを召喚し周囲の状況を探る。
「森の中は・・・魔物だらけみたい。ざっと補足しただけで400。数が多すぎてスバードでも正確に追い切れない。かなり危険だと思う。」
僕は偵察状況を説明する。それに対しサドンがしばらく考える素振りを見せ、そして言った。
「スコヴィル、例の魔法は?」
「アレは通常フィールドで使うとその場所に致命的な損害を与えるので、レイアちゃんから禁止されてます。」
なるほど。確かに自動修復されるボス部屋ならともかく、一般フィールドで使ったら取り返しのつかないことになりそうだ。
「そうなると僕がセンサーを確認しながら、少しずつ進むしかないかな。」
「アフタ、私がやる。」
そう提案してきたのはブレアだった。
「えっと、どうするつもりなの?」
「私が先行して、ユニークスキル・バーサーカーを使う。」
危険な香りしかしない名前のスキルだ。けれどユニークスキルである以上、効果は絶大なはず。
「どういうスキルなの?」
「攻撃精度と防御力を犠牲にする代わりに、圧倒的な攻撃力となるスキル。だから味方が近くにいるときは使えない。」
僕はブレアのバーサーカー状態を想像する。ただでさえ圧倒的な火力を持つブレアが、攻撃力のみに特化したらどうなるか。見えたのは第九層にぺんぺん草すら残らない光景だった。




