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158 仮想世界で力を貸そう

「じゃあ、行ってくる。」

「お土産を楽しみにしています。」

「いや、向こうから何か持ってくるのは無理だから! エスフェリア、毎度のノリ突っ込みもそろそろ疲れてきたぞ。」


 俺の名前はギスケ。本名じゃないが、この世界ではこれで通っているから気にするな。俺が今いる世界は剣と魔法のファンタジー世界。例外として俺の知人が銃器製造用の工業プラントを作ったりしているが、それはまた別の話だ。そして俺の目の前にいるのはオブリエン帝国の皇帝エスフェリア。趣味は人間観察、特技は死に戻りという変態皇帝だ。


「ギスケ、今、不遜(ふそん)なことを考えましたね。」

「俺が不遜じゃ無かったことがあったか?」

「ありませんね。」

「とにかく時間が無いんだ。とっとと用事を済ませてくる。俺の不在がばれないようにイリンとうまく調整してくれ。」

「そこは大丈夫です。先日アグレスが連れてきたギスケの影武者が、あまりにソックリでちょっと笑ってしまいました。」

「あいつの言葉遣い、絶対におかしいぜ。では・・・皇帝陛下、行って参ります。」

「お気をつけて、朗報を期待しています。」


 そして俺は謁見の間から自分の部屋に退出した。目的地は自分のベッドの上だ。さあ、寝よう。俺は目をつむる。いや、別に仕事をさぼって昼寝をするわけじゃ無いぞ。俺の部屋には精神転送用の魔術回路が編んである。これから別の世界に精神だけを飛ばして移動するんだ。向こうには俺のデータをコピーしたアバターがある。


 帝国は現在、教会の支援を受けたクルセイダーズという勢力と交戦中だ。魔族との戦いが膠着状態の中、ただでさえ面倒ごとは多い。それなのにエスフェリアの兄貴、元の第二皇子ベルグレストがやらかしてくれたおかげで、世界滅亡の危機というさらなる面倒を背負い込むことになった。


 そもそもは魔王アストレイアが帝国の首都を、一夜にして攻め滅ぼしたことに端を発する。その後、俺はエスフェリアとともに首都を脱出し、帝国軍の再編成に力を貸した。しかしそこで始まった皇族や貴族の勢力争い。最終的には全てに勝利し、第二皇子ベルグレストをあと一歩まで追い込んだ。ところが奴は神の遺物を使用し自爆。死亡が確認された。この件はこれで解決かと思っていたら、そうは問屋が卸さなかった。

 

 奴は別の世界で生きていたのだ。いや、正確に言うと死んでいる。仮想世界で精神体のみを留めたのだ。俺が今いる世界は、人間は少なからず魔力を持っている。そして魔力を持っている人間は死んでからのみ、仮想世界に飛べるらしい。そこで奴がやったのは、仮想世界を現実世界に転換するという企みだった。そして死んだ自分を受肉させ、再びこの世界に舞い戻ってこようとしているのだ。

 

 全ての元凶魔王アストレイアが偶発的に魔力を仮想世界に注ぎ込んでしまったせいで、そこが妙な力を持ってしまった。そして偶然か意図的なのかは分からないが、そこへたどり着いたベルグレストは、仮想世界を司るAIにとんでもない入れ慈恵をしたのだ。この世界から魔力を、そして俺の故郷の世界から人間の魂をそれぞれ引き込んで、新たな世界を創造するというものだ。


 そのせいでこっちの世界では大地震が発生した。状況は魔力という地層を強引に引っこ抜いたというのをイメージすると分かりやすいだろう。これを放置すると、ファンタジー世界の方では天変地異が巻き起こり人間はほとんどが滅ぶ。もはや魔族やクルセイダーズが云々と言ってられない状況だ。


 俺は何度か仮想世界に飛び、ベルグレストを捕まえようとした。ところが奴は逃げ足だけは最強だ。仕方が無いからやり方を変えた。仮想世界の制作者と協力し、システムを停止させる方法をとることにした。そして今に至る。


 俺は目を開いた。ここはソルトシールダンジョン第四層。まずはユニットの生産状況のチェックだ。


「は?」


 俺は目を疑った。この世界のシステムを妨害するために作っていたユニットの生産が全て止められていた。そして訳の分からない物が作られている。


「なんだこりゃ?」


 俺は工場のプログラムをチェックした。するとスケジュールが改竄されているのが確認できた。やったのはベルグレストか? いや、奴にそんな技術は無い。だとすると、プレイヤーの誰かか。やってくれたな。


時系列的には「魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された」の六章でオキスが魔領に突撃する少し前辺りになります。

それと地震に関しては魔王の息子の66話で起きています。

一年前に仕込んだ伏線です。

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