148 ハイタッチしたい配達
私達は転移アイテムを乗り継いで、創世の街まで戻ってきた。そして宿の手配を済ませて酒場で食事をとっていると、またアフタの噂が耳に届く。アフタはとうとう第七層に到達したようだ。
その噂をしていた男は筋骨隆々の肉弾系戦士タイプだった。私が酒を奢るというと、大声で何でもかんでも話しそうに見えた口から、色々と雪崩のように溢れ出てきた。雪崩は少々トラウマになりかけているので勘弁してもらいたい。
アフタは第七層到達後に一度ここに戻ってきたようだ。もしかしてあの吹雪の中をすれ違ったりしたのだろうか? 私達のように転移アイテムを使って帰還した可能性もある。そして驚いたことに、アフタのパーティーメンバーが増えていた。増えたこと自体に驚いたのではない。追加メンバーが、よりにもよってあのサドンだというのだ。
どうやらアフタとサドンは以前から面識があったらしい。私達がこの街に到着する前に、ここで祭りが行われたという。そのときにアフタは櫓を建築の総指揮を執っていたらしい。その時にサドンに指示を出して手伝わせたというのだ。これをどう考えるか・・・。もしかしてアフタはサドンより上の立場だということなのだろうか?
ここに戻ってきた時、サドンは言ったという。第六層のフロアボスを倒したのはアフタだと。自分は残念ながら役に立てなかった、そう話したらしいのだ。
つまり第六層のボスはサドンすら苦戦する相手だということだ。そしてそのボスを倒してしまうアフタ。彼がどれだけ強くなっているのか、まったく想像がつかない。前に見かけたときは、全然強そうに見えなかったのに・・・。
アフタ達は既に街を出て姿を消したらしい。今回もすれ違いに終わったようだ。しかし私も次から第六層。その差はたったの一階層。もうすぐ追いつく。アフタの情報を得られたのは収穫だった。
情報が得られたところで、私は一度宿に戻って浴場に行く支度をする。準備中にコンコンと扉をノックする音が聞こえた。
「誰?」
「私ですよ、預かり物を届けに。」
宿屋のお爺さんの声だった。そういえばこのお爺さん、名前はなんて言うんだろう? 結構な顔見知りになったのに、いまだに名前が分からない。まあ、宿屋のお爺さんのままでも支障は無いけど。
私は扉を開けて箱を受け取った。
「誰から?」
「アフタ君からですよ。」
「え?!!」
私は箱を取り落としそうになった。
「リコッテ嬢の捜しものと言っておりました。詳細は中を確認すれば分かると。では、確かに渡しましたからの。ふぉっふぉっふぉ。」
そう言うと、宿屋のお爺さんは去って行った。私は部屋で一人、アフタの箱を見つめる。いったい何が入っているんだろう? 何故、箱一つでこんなに心臓の鼓動が早くなるのだろうか? そして私は箱を開けた。
「・・・何これ?」
箱の中には布・・・シルク生地が入っていた。私は手にとって確認し、しばらくそれを見つめる。これが何かは理解できる。理解は出来るはずなのに、何故かそれを受け入れることを頭の中が拒否していた。
なんとかそれを飲み込んで事実を受け入れる。それに伴って、私は火が出るかと思えるほど顔が熱くなった。
「パ・・・ンティ。パンティ!!!!!!」
私は叫んだ。
「リコッテ様、何事ですか?!」
隣の部屋からカンゾウが躍り込んできた。私はパンティをサッと後ろに隠す。
「何でも無いわ。着替えがしたいから一人にしてくれる?」
私がそう言うとカンゾウは部屋から出て行った。そして私はもう一度、手に持ったものを確認する。間違いない、パンティだ。
「い、いったいどういうつもりなの?」
中は確かに確認した。しかし私には見れば分かるという詳細は、見ても全く分からなかった。




