140 ジャンクがいるじゃん
第四層は荒野だった。砂埃が目にしみる。髪はザラザラになるし最悪だった。
「ジャンクの姿は見える?」
私は遠くの物がよく見えない。その上、この砂だ。私は自身でジャンクを探すのを諦めた。
「こういう仕事はカッチェの方が適しているのですが、まだ養生させていますので地道に探しましょう。」
そう、カッチェはサドンの一撃によって瀕死の重傷を負っていたのだ。しかし既に意識を取り戻し、体力の回復を待つだけとなっている。
「ジャンク発見! 二時の方向に注目っす。」
私は二時の方向では無く、声の方向に注目した。
「逆っすよ?」
カッチェだった。
「来たんですか? 寝ていてくださいと言いましたよね。」
サルミアキが静かに、しかし重みを含んだ声でカッチェに言う。
「いやあ、大丈夫っす。激しい運動はしないっす。一人は・・・寂しいっす。」
どうやら一人で待っているのが嫌だったらしい。なるほど、だから趣味がストーキングなのか。
「来てしまったものは仕方ないわね。今更、追い返しても仕方が無いし。カッチェにジャンクの位置を探らせて、後は私が戦うわ。」
「仕方ありませんな。」
私の提案にカンゾウも同意する。サルミアキだけ不満そうな顔だったけれど、特に異論を言うわけでは無かった。
「そういうわけで改めてよろしくっす。早速、あそこに蜘蛛型のジャンクがいるっす。」
カッチェの指差した場所はかなり遠くだったので、私の視力ではよく分からない。しかし言われてみれば何か動いているような気がする。カンゾウ、サルミアキ、カッチェそして私の四人パーティーは、蜘蛛型ジャンクのいる方向に向けて歩き出した。
私達が近づくのを察知したのか、蜘蛛型のジャンクがカサカサと近づいてくるのが見えた。若干気持ち悪いかも知れない。第二層の蜘蛛は特に何でも無かったけれど、あのジャンクは凄く気持ち悪い。私は早々に光の魔法を蜘蛛型ジャンクに打ち込んだ。魔法は蜘蛛の身体の中心を通り抜ける。そしてあっさりと動かなくなった。
「弱ぁ!」
第四層に至った今でも、私がまともに魔法を振るうと一瞬で勝負が付いてしまう。ここでも近接縛りしないと駄目らしい。とにかくドロップを回収しないと。
「材料は回収できた?」
「コレっすね。運良く一発回収成功っす。」
カッチェが金属の板のような物を拾い上げた。さて、いったん始発の町に戻らないと。私達は第四層の入り口から再び第三層へ戻る。
「ジャジャーンっす!」
カッチェが水晶のような物を掲げて、よく分からない効果音を出していた。私は黙って見つめていた。しばらくの沈黙。カッチェはものすごく聞いて欲しそうな顔をしている。可哀想だから説明してもらうことにした。
「ええっと、それは何?」
私がそう言うと、カッチェの顔が喜びの表情になる。
「コレはなんと、パーティー全員を始発の町に移動させることの出来るアイテムっす。」
「へえ、それは便利ね。」
「もっと喜んで欲しいっす。」
「喜んでるわよ? 無駄な時間を使わなくて済むし。ところで早く使ってくれないかしら?」
「使ってるっす。もうしばらく待つっす。動いたら駄目っすよ。」
ふと気がつくと目の前には始発の町、入り口の門があった。
「へえ、凄いわね。」
「もっともっと驚いていいっすよ。」
得意げになるカッチェ。とにかくこれでだいぶ時間が省けた。素直に感謝しよう。




