134 正解の無い世界ができるまで
私は趣味でゲームを作っている。
プログラムは得意なのだ。
しかし致命的な問題があるのだ。
芸術面には全く素養が無い。
絵も音楽もまるで駄目。
だからといって誰かに作ってもらうコミュニケーション能力などもありはしない。
何とかする方法は無いかと色々な情報を調べてみる。
なんということだ、素晴らしい解決方法があるじゃないか。
某大手のgit鯖に、凄まじい性能のAIがオープンソースで公開されていたのだ。
そのAIはGISUKEという。
特徴的なのが、あらゆるものを数式に置き換えるということだ。
巨大な画像データすらも、数式データに超圧縮される。
オープンソースなので、当然中のコードを確認することは出来るのだけど、私にはさっぱり理解できない内容だった。
このプログラムを書いた人間はとんでもない天才であり、凄まじい狂人であろうことは疑いない。
私はこのAIを自分のゲームプログラムに組み込むことにした。
このプログラムの素晴らしい点は、物や人物のモデルデータが自動生成できることだ。
写真データを読み込ませると、中の対象物を識別し分解、それを三次元データとして構築してくれるのだ。
もちろんある程度のサンプル数は必要だ。
それすらもネット上から自動でかき集めて勝手に組み立ててくれる。
データ収集部分は演算部分と違い、理解可能な普通のコードだった。
私は更にデータ収集部分を強化する。
分散処理させて空いているPCに片っ端から処理させれば効率も上がるはずだ。
そういえば大学の研究室で未使用になっているVPSのアカウントが大量にあった。
あれを利用させてもらおう。
たぶん今期はもうあのアカウントは使わないはずだ。
契約しているVPSは従量制課金じゃ無いから、負荷がかかる処理を投入してぶん回しても問題は無いはずだ。
そこそこな時間をかけて分散処理をするように書き換えた。
これによって恐ろしい勢いで学習を進めるGISUKE。
自動生成された画像に評価点を付けて、私好みのものが生成されるように調整もしてみた。
もしかしたらこれで卒論が書けるかもしれない。
私の大学の出席日数もそろそろ赤信号だ。
つまり単位を落とさないように、そろそろ適度に授業へ出なければならないのだ。
そうなると、削るのは睡眠時間しか無い。
そんなこんなで私の青春は、春を見ること無く終わりそうだ。
今回は諸事情によりリコッテ編ではなくボロディア編です。
実はアフタの話より前に「ネトゲを作っていたら、AIが勝手に世界を創造し始めた」のタイトルでこの話を書いていたのですが、お蔵入りしていました。
本来は「能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破」の方がオマケです。
そのためシリーズタイトルの規則性から外れています。
いつの間にか立場が逆転していました。
そしてボロディアは主人公になり損ねた残念な男です。




