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133 この計画は傾角の誤差が命取り

 僕はスコヴィルという名前をた瞬間、脳が揺すぶられるような衝撃を受けた。


「なんなんだ?」


 何故かキーボードを打つ手が震える。危ない薬の禁断症状みたいな状態だ。僕はこの後どうしたんだっけ? いやいや、言っていることがおかしい。何故過去形なんだ。「どうした」ではなく、「どうする」が正しいはずだ。


 僕は確か、ゲームの穴を探したんだ。どこかに入り込める場所が無いかどうか。現状だとデータの取得は出来るけれど、書き換える余地が無いのだ。何かやろうとしてもデータの不整合が検出されて、すぐに元に戻されてしまう。おそらく分散型で処理をするために、多重のエラー訂正機能が働いているのだろう。


 そして僕はどうしたんだ? そうだ、一カ所だけデータを割り込ませることの出来る場所を発見したんだ。ボリハ村、ここだけ分散型システムから切り離されて介入可能だったのだ。


 介入可能な場所を見つけた僕はその後・・・どうやってゲームを終わらせるかを確認したんだ。プレイヤー達の勝利条件、そして・・・絶対にクリアできない障害を発見した。ソルトシールダンジョン、ここだけは最後の最後でクリアできない仕掛けがある。このままではゲームは終わらない。AIギスケは開発者の意図に反して、そんな世界を作り出していたのだ。


 対抗措置を検証しているうちに、割り込ませることの出来るアバターを何種類か発見した。そのどれもチートとしか思えないような強力なユニークスキルを持っている。しかしそれではラストで負ける。そんなものでは絶対にアレに勝てるはずが無いのだ。僕は使用可能なアバターの中から、あえて最弱のキャラを選んだ。もうこの手段しか残っていない。


 僕は姉に連絡を入れた。「必ず風海を連れて帰ってくる」そう言ってすぐに電話を切った。その後、携帯が何度も鳴った。僕は携帯の電源を切る。そうだ、玄関の鍵は開けておこう。


 そして僕は・・・。



 目の前にいたのはシゥゾゥ。僕は帰ってきた。スコヴィルとサドン、二人とも倒れていた。まだ戻れないようだ。シゥゾゥは手を差し出してきた。握手? 僕はその手を取る。シゥゾゥはニカっと笑い、そして消えていった。どうやら終わったようだ。


 僕は床に倒れている二人に目を向ける。両者とも顔面を蒼白にしてうなされている。

「二人とも起きて、終わったよ。」


 僕が身体を揺すると、二人ともようやく目を覚ました。とんでもなく顔色が悪い。また点滴が必要だろうか?


「アフタさん・・・えっとここは?」

「第六層のボス部屋です。」

 スコヴィルがフラフラしながら立ち上がろうとする。僕はそれを支えた。


「アフタ、君がクリアしたのかい?」

「どうやらそうみたい。」

「・・・さすがだね。僕ももう少しだったんだけど、残念だよ。」

 サドンは顔色は最悪だったけれど、自分の力で立ち上がった。


 二人はいったい何を見たのだろう? 僕の方はそこまでの内容では無かった。


「そうだ、一つ言っておかないと。」

 僕はスコヴィルの方を向いた。

「風海ちゃん、遅ればせながら助けに来ました。」


 僕のその言葉に口元を手で覆うスコヴィル。そして僕に抱きついてきた。


「やっぱり、辛ちゃんだったんだ。やっぱり。」

「シゥゾゥのおかげで記憶はかなり戻りました。」


 そんな光景をサドンは黙って見つめていた。目が少し赤くなっているような・・・。


「サドンの言った通り、僕がAIギスケの開発者だ。そしてソルトシールを攻略する方法も思い出したよ。」

「ようやくパズルが埋まったようだね。ところでアフタ、ダンジョン攻略に先立って一つ頼みがある。」

「できる限りは協力するつもりだけど?」

「ソルトシールの至宝を手に入れたら、一度使わせてもらいたい。妹を・・・見つけ出すために。」


 僕は頷いて答えた。なるほど。サドンは妹を探すために、この世界をずっと旅していたんだ。


「それとパズルなんだけど、まだピースは残っているんだよね。それを埋めるために色々と動かないといけない。」

 僕は二人に言った。


「オーケーだ。何でもやろう。」

「私もやります!」 


 ここまでは順調・・・なのか。しかしよく今まで生き残れたと思う。死んでる可能性の方が圧倒的に大きかったのだ。けれどここまで来た以上は、最後まで目的を果たすのみ。最強のスキルを持つボロディアでさえここの攻略は無理。ソルトシールダンジョンを攻略できるのは僕だけだ。


 第六層の攻略は完了した。しかしまだまだ先は長い。


 そして今日もダンジョンへ潜る。


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