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122 妖刀の用途

 ちょっと待て。あの貴族臭のするオヤジ、いったい何を言っているんだ? いい加減なことばかり言って。僕が大賢者リコリースの形見など持っているはずが無い。無いよね?


 僕は少し考えた。今持っている中で怪しいもの・・・あるじゃないか。そうかアレか!


 ラバーカップ!!!


 いやぁ、おかしいと思ったんだよ。第五層のボス部屋の宝箱から出てき品がアレだもんね。つまりあのラバーカップはシステム外チートのボロディアにすら勝てる最強アイテムだったのだ。しかし使い方が全く想像できない。いや、もちろん通常の使用方法は分かるよ?


「そう、アフタが持っているの。ちょうどいいわ。どうせ会いに行くつもりだったし。形を言えばたぶん分かるわよね。」


 僕は身震いした。リコッテがラバーカップを取りに、僕の所へやってくるのだ。その時はコレを差し出し、そしてエクストリーム土下座したら・・・生まれてきてゴメンナサイと額から血が出るぐらい地面にこすりつけて謝ったら、命ぐらいは助けてくれるかなぁ? そうだといいなぁ。


「それと、こちらからの誠意を示すためにこれを渡しておこう。」


 貴族臭男が一振りの刀を出した。その瞬間、リコッテと侍擬きが身構える。しかし差し出されたものだと理解すると、二人はその構えを解いた。その刀は明らかに(いわ)く付きなオーラが出ている気がする。それを侍擬きが受け取る。


「これは?」

「この世界に紛れ込んだ異物を排除するための刀、銘は龍悪(りょうあ)。貴殿が使えばその力も発揮できよう。切れば切るほど強くなる。特に・・・人をな。」


 貴族臭男がニヤリと笑う。悪い、悪い表情だよそれ。侍擬きが鞘から刀を抜く。刀身には津波を連想させるような刃紋が浮かんでいた。美術館に飾ってありそうな、見事な濤乱刃(とうらんば)だ。それを見た侍擬きの目の色が変わった。僕ですら引き込まれそうだ。アレを握ったら絶対に何か切りたくなる。例えばそう、人を・・・。



「・・・アフタさん・・・アフタさん」

 ハッと気づく。ここはベッドの上。そうかさっきまで夢を見ていたんだ。


「スコヴィルさん、もしかして僕は結構寝てましたか?」

「今、ちょうどお昼の時間です。食事の用意をしたので食べてください。」

「サドンは?」

「既に食事を済ませてますよ。」

「は?」


 僕はサドンの方を見た。顔色が完全に戻っている。


「サドン、ええっと・・・大丈夫なの?」

「おかげさまでこの通りさ。アフタの愛情とスコヴィルの魔法ですっかり回復したよ。」


 いやいや、愛情なんて一欠片も無いから。そして僕の隣で赤い顔をしている彼女、変な誤解はやめて。


「回復、早すぎじゃない?」

「こんなものさ。苦痛耐性のせいで、自分の体調がきちんと把握出来ていなかった。これは反省点だね。次は気をつけるよ。」


 考えてみるとこの人達は実質第六層到達者だ。まだ足を踏み入れていないけれど。常識など通用しない化け物といっても過言では無い存在。だから深く考えるのはよそう。


「それよりもサドン、結局その傷は誰にやられたの?」

「僕のことをそんなに心配してくれるのかい? 君の気持ちは嬉しいけど、その相手には実力差をきちんと教えておいたから、再び戦いを挑んでくるようなことは無いと思う。僕の怪我は気が緩んでいたのが原因だし、気にする必要は無いさ。」


 いや、凄い気になるんだけど。サドンの油断を突いたとしてもそれが僕だったら、彼の腹に刃を突き立てるなんて出来る気が微塵もしない。もしかして女の子に気を取られていてやられたとかかな? それなら恥ずかしくて語れない理由も分かる。まあ、サドンが大丈夫だと言うのなら深くは追求しなくてもいいのか。


「とにかく今日一日は休んで様子を見よう。」

「僕はもう大丈夫なんだけどな。」

「数時間前まで死にそうになっていた人が、何を根拠に大丈夫だと言ってるのかな?」

「アフタ、君、お母さんみたいだ。」

「そんな女癖が悪そうな子供を産んだつもりはありません!」


 プっと吹き出すスコヴィル。とにかく死亡フラグの危機は乗り越えた。


「これから先の攻略に備えて、二人にちょっとお願いがあるんですが。」

 僕は必要な物を自由にする許可をもらった。さあ、これからようやく第六層の攻略だ。


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