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114 暗器の動きを暗記する

 私は未だに第三層止まりで先に進めていない。


「カンゾウ、いい加減先に進まない?」

「申し訳ありません。この層のモニュメントを探すのに手間取ってしまいまして。まさかあの時計塔がそれだとは思いもよらず。」


 カンゾウは第一層と第二層で石碑のようなものを見つけては、熱心に内容を書き写していた。いったいそれが何になるのかハッキリとは答えてくれない。いずれリコッテ様の役に立つはずとしか言わないのだ。


 まあ、その間に私は浴場で一息ついたり、甘味処を堪能したりと休暇のようなものを満喫していたのだ。それにここで待っていれば、アフタと入れ違いになる可能性も低くなる。宿屋のお爺さんの話だと、最近姿を見せていないけれど、戻ってくればいつも姿を見せに来ると言っていた。


 しかしさすがに我慢も限界に近い。そんな私の思考を察したのか、カンゾウは第三層の攻略に同意した。私たちは準備を整え村から出る。そんな時、見知った人物に遭遇した。名前は確か・・・サドン。彼とは地上の街で一人歩いていたときに話しかけられたことがある。


 彼は私がダンジョンで光と闇の魔法を使っていたところを目撃したらしく、それについていくつか聞かれた。そして出身地の話になったときにアフタの名前を出したのだ。すると彼はアフタを知っていると言い、色々な話をすることになった。いつの間にか私は、先祖の大賢者リコリースの事まで話していた。


「ほう、こんな所で会うとは奇遇ですな、サドン殿。」

 心なしかカンゾウの声が低い。


「運命的な再会は女性限定でお願いしたいところなんだけどね。」

 サドンはそう言って私の方を見た。その動きにカンゾウが顔をしかめる。カンゾウはサドンを見た瞬間から異様な警戒を見せている。話した限りそんな悪い人物には思えない。顔見知りのようだけど、以前に何かあったのだろう? サルミアキが私とサドンの間に立つ。何、このピリピリ感は?


「積もる話もあります故、そちらで少々お時間をいただけますかな?」

「僕は先を急ぎたい所なんだけど、まあ仕方が無い。」


 二人は私達から離れた場所へ移動していく。サドンは何事も無いように飄々としていたけれど、カンゾウはかなり警戒しているように感じる。二人は何かを話し始めた。距離が遠くて会話の内容は聞き取れない。しかしカンゾウの殺気がどんどん膨れあがっていることは感じ取ることが出来た。


 ついにそれは起こった。カンゾウが刀を抜いたのだ。私は今までカンゾウの本気を見たことは無かった。しかし今、その凄まじさが分かった。刀を振った動作は私の動体視力を超えていた。木や岩、大地でさえも、目標となったサドンの周囲のあらゆるものが切り裂かれていく。サドンは切られた、そう思った。


「やれやれ、試し切りなら人のいないところでお願いしたいな。」


 サドンは無傷だ。さっきのアレを剣も抜かずに全て躱したのだ。なるほどカンゾウが警戒するのも分かる。


「さて、僕は無用に人を害する気は無いんだけど、このまま帰してくれそうには無いみたいだね。あそこにいるのは・・・あの時のヒーラーか。なら、大丈夫かな。」


 そう言った瞬間、何かが宙を舞った。あれはカンゾウの・・・右腕だ。右腕は刀を握ったままの状態でクルクルと飛んでいく。


「カンゾウ!」


 私は叫んだ。それを見たサドンは私に申し訳ないという感じのジェスチャーをした。完全に格の違う相手だ。信じられないことに、あのカンゾウが手も足も出ない。腕を飛ばされたカンゾウは、左腕で何かを投げた。暗器だ。巧妙な角度で投げられた三つの暗器。サドンの位置からは一つしか投げていないように見えるはずだ。


 サドンは一つを躱し、一つを剣で弾き、最後の一つをつかみ取った。強すぎる。このままではカンゾウが危ない。私は光魔法でサドンを狙う。


「グァ、な?」


 驚いた表情をするサドン。私はまだ魔法を発動していない。しかしサドンは腹部から血が広がっていく。刃が突き出ていたのだ。


「油断大敵っすよ。」


 カッチェだ。いつの間にかカッチェが背後からサドンに短刀を突き立てていた。遠目で見ていた私すらカッチェの存在に気づかなかった。恐らくカンゾウはコレを狙って、自分に注意を引きつけていたのだ。


 次の瞬間カッチェがサドンから距離を取る。カッチェは首筋から血を吹き出していた。どうやらサドンから反撃を受けたようだ。背後にいるカッチェに、正確に反撃するサドンの技量は半端なものではない。首を押さえて倒れ込むカッチェ。


 サドンは自分の後ろに手を回し、刺さっている短刀を引き抜いた。そしてそれを地面に投げ捨てる。顔色一つ変わっていない。あれでダメージになっていないのだろうか? 化け物もいいところだ。手負いとはいえ、私はこんな化け物に勝てるんだろうか?


「さて、勝負は付いたね。僕は先を急ぐから、治療するなら早めにやっておくことだ。」


 そう言うとサドンはポーションを口に含んだ。そして町の方へ歩いて行った。どうやら見逃されたらしい。



想像以上にサドン強ぇぇ

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