11 皮の身代わり革の服
ダンジョンから戻った僕は食事をとった。料理1300シュネ。残金1万4300シュネ。ふと気がついたんだけど、この異様な空腹はポーション服用の副作用なのかもしれない。傷や体力を急速に回復するというのは、体の新陳代謝を活性化しているということだ。そのエネルギーは体の中の栄養分を消費していると考えられる。つまりダンジョンにいる時間を延ばすなら、食料を持ち込む必要性も出てくるだろう。
コボルトに棒で殴られた箇所がズキズキと痛む。自分の部屋に戻って確認すると、真っ赤に腫れ上がっていた。とはいってもライフポーションは節約したい。致命傷では無いので我慢する。このままやっていけるのかちょっと不安になりだした。ちょっと心が弱っている。こんな時に励まし合う仲間がいれば違うのだろうけど、ボッチの僕には僕しかいない。「明日は良いことがあるさ」そう自分を励まして、今日は寝ることにした。
次の日、僕は魔物の核を売れないかどうか、薬屋の婆さんに尋ねた。核を見るなり「ギルドにもってお行き」と言った。どうやらここでは売れないようだ。しかしコボルトの爪は売却可能だった。
コボルトの爪 2300シュネ × 1
後で戦った3匹の分は、出口へ急いでいたため回収していない。必ずドロップするのかは不明だけど、もしそうなら惜しいことをした。そして僕はスタミナポーションを購入する。
スタミナポーション(低) 6000シュネ
所持金は1万600シュネになった。そして今度は冒険者ギルドに移動する。受付で魔物の核を見せた。どうやら買い取ってもらえるらしい。
スライムの核 500シュネ × 1
コボルトの核 1300シュネ × 4
所持金は1万6300シュネ。地道に増えている。一月ごとに部屋の賃貸料もかかるので油断は禁物だ。冒険者になると決めてから、なんだかずっとお金のことばかり考えている気がする。冒険者って何なんだろう?
お金が少しずつ増えてきたので、そろそろ防具を何とかしたい。コボルトに棒で殴られたとしても、もう少しマシな状態にしたいのだ。僕は武器屋へ向かう。武器屋の親父が僕を見てニヤリと笑う。「多少は戦ってきた顔だな」そう僕に声をかけた。
僕は防具が欲しいと言った。すると筋肉むきむき親父は「これはどうだ?」となにやら出してきた。革の服だ。革の服・・・ではあるけれど、変な羽根飾りが付いている。率直に言って趣味が悪い。
「金が無いんだろ。これなら在庫処分品で1万シュネに負けておいてやる。本来なら7万で売り出していた品だ。」
親父は僕にそう言った。1万なら買える。ちなみに金属プレート系の鎧は100万越えが当たり前で、とても買えるような値段では無かった。僕は少し迷ったけれど、羽根飾りの皮鎧を買うことにした。
所持品 所持数
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所持金 6300シュネ
魔法の袋(小)
ライフポーション(低) 2個
スタミナポーション(低) 1個
ダンジョン第一層のマップ
コンパス
採取ナイフ
ランプ(残量・中)
ギルドカード
初心者の槍
羽根飾りの皮鎧(悪趣味)
僕が今まで着ていたのは、ピラッピラの布の服。それに比べればかなり防御力が向上したはずだ。ということで三日目のダンジョンライフが始まる。
ダンジョン露店を華麗にスルーし、いつもの人通りが少ない場所へ向かう。早速発見したのは緑色のスライムだった。前回のトラウマを克服すべく、戦いを挑む。
僕の姿に反応せず、自由気ままにクネクネと動くスライム。僕は槍を構えて突撃する。槍を刺すとサクッという感触が伝わる。スライムの手応えではなく、貫通後の地面の手応えだ。スライムは致命傷には至らず、僕をロックオンしたようだ。ザっと飛びかかってくる。サイドステップで華麗に躱す。そして振り返りざまに槍を一撃。ズっという感触。どうやら核に刺さったようだ。
最弱のスライムなど僕の敵では無かった。核を回収し袋に詰める。もしかして僕は強くなっているんだろうか?そろそろフロアボスと対決か?僕はふらふらとボス部屋の方へ向けて歩き出した。ボス部屋まではそれなりに距離があり、気軽にたどり着ける場所には無い。まあ、少し道の雰囲気を確認するだけのつもりだ。




