101 知らぬ間に成約していた制約
「君のスキルは・・・制約のスキル。やはりユニークスキルのようだね。」
中二病っぽいけど強力そうなスキルがキタァァァァ!!!!
「どんな能力なんですか?」
「効果は名前の通り制約をかけること。そしてこれがとても強力だ。」
「制約をかけるとどうなるんですか?」
「身体能力や魔力に制約がかかり弱体化する。しかも永続効果。どんなに強力な力を持っていようが、著しく力を発揮できなくなる。まるで駆け出しの冒険者レベルまで。」
スゲェェェェ!!!
「それってフロアボスとかにも使えるんですか?」
「うん? 何を言ってるんだ?」
え?
「君のスキルは君にしか効果を及ぼさない。」
え?
「君の成長と共にスキルも一緒に成長するようだね。既に凄まじく強力なスキルに成長している。」
え?
えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!
つまり、つまりは僕はどんなに強くなろうとしても、このユニークスキルのせいで常に弱体化がかかり続けるって事? それは呪いっていうんじゃないの?
「まあそう気を落とすものではない。このスキルも良い点がある。」
そうだよね。マイナス効果ばかりとかあり得ないよね。僕は早る気持ちを抑えて続きを聞く。
「弱体化している状態で強い敵と戦うと、成長が劇的に促進されるのだよ。」
強い敵と戦うと経験値にボーナスが付くような感じ? なるほど、それはお得・・・って、スキルも成長するんだからまったく意味ないじゃん!
「ギアァァァス!!!」
僕は叫びながら5万シュネをテーブルに叩き付け、スキル鑑定の店を飛び出した。冒険者としての死刑宣告を受けた気持ちだ。僕は強くなることが出来ない。そう、強くなれないのだ。
「おい、ちょっと待ちなさい。」
後ろから呼び止めるような声が聞こえたけれど、僕は立ち止まらなかった。そして走った。限界まで全力で走った。途中で躓いて転ける。
「アハハハハハ。」
僕は立ち上がり歩き始めた。目にはいっぱいに涙を溜めて、そして笑った。鼻水も垂らしている。通行人と何人もすれ違った。彼らは僕の気がふれたとか思っているだろう。まあ、間違っていないかも知れない。
おかしいと思ってたんだよなあ。だって全然強くならないんだもん。少し重いものが運べるようになったりとか、本当にその程度しか能力が向上していない。色々頑張ったはずなのに、そんなのあり得ないよね。全ては僕の呪いのようなユニークスキルのせいだったのだ。
なんで僕だけ? みんな凄いユニークスキルをもらっているのになんで僕だけ? 僕の頭の中はずっと「どうして?」「なんで?」だけがグルグルと回っていた。気がつくとスコヴィルとの待ち合わせの店の前に立っていた。
僕はそこから足を進めることが出来なかった。到達したのはまだ第五層だ。これから後半戦が始まる。しかし僕は成長できない。彼女とパーティーを組んでも足手まといにしかならない。彼女はこれからもっと強くなるだろう。魔法の超強化がどの程度までなのかは分からないけれど、あのフロアボス達を屠ってきたからには相当な力なのだろう。そんな人と人並み以下が確定した僕が一緒にいていいはずが無い。
駄目だ帰ろう。帰る? どこに帰る? そうだ、ボリハ村に帰ろう。やっぱり無理だったんだよ。
「アフタさん、あの、何があったんですか?」
待ち合わせの場所から立ち去ろうと踵を返した先にスコヴィルはいた。なんてタイミングが悪いんだ。いや、黙っていなくなるのは良くない。事情は話すべきだろう。
僕は事情を説明しようと口を開いた。しかし出るのは嗚咽だけだ。言葉が出ない。今の僕は泣くことしか出来なかったのだ。




