表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

いいことを教えてやるよ。

「勇者さまが参られたぞ!」


皆の者、道を開けよ!とは言わないものの、そう言ってもおかしくないほどの招かれ方に、フロマージュはどう反応していいものやら・・・と、頬をポリポリとかく。


「勇者さまだ!」


そんな中、騒いでいる大人達に混ざり、子供も数人、人の群れの中にいるのを、フロマージュは見逃すことはなかった。


「・・・・・」


お金をもらうためだけに魔物を倒していただけだが、

子供の、こういう、憧れじみた眼差しを見てしまうと、なんとも、そんな汚い考えが薄れていくように感じた。


「・・・あ、あの、ここはいつもこうなんですか?」


フロマージュについていた人々が離れ、フロマージュ自身はようやく一段落つき、椅子に腰かけることができた。

その際に、隣にいた村人にそう尋ねた。


「あぁ、この町はいつもこんな感じなんだ」


街の名前はフォンテーネというらしい。

昔、この町は、泉の中にあったらしく、この町の周りの取り囲むような町が本当の町だったらしい。

だが、そのドーナツ型の町は、魔物によって、中央の今となってはフォンテ―ネと呼ばれる泉にすべて水没したとか。

だが、そこに勇者がやってきて、魔物を倒し、魔物の呪いを解いたそうだ。

そして、新たな、勇者が作り出した町、フォンテ―ネができたとか。


「・・・それからというもの、この町で魔物を倒すものがいるとするなら、勇者と崇めるのが、この町の伝統って訳なんだ」


ペラペラと、簡単にこの町を解説する彼。

そんな彼も、こうして、勇者として崇められたという。


「この町ってね、思った以上に魔物が隠れてるんだよ」


それはもう、数えきれないほどに。・・・と告げる彼。


そして、その発言に、思い当たる点が一つあった。


それは、【この町が毎日お祭り騒ぎ】だということ。


「・・・・隠れている・・・か」


毎日がお祭り騒ぎで、毎日こうして、誰かが“勇者さま”と崇められているのなら、この町には相当な数の魔物がいるに違いない。


フロマージュはいつもの無表情を、さらに険しく、仏頂面になるまで、顎に手を添え、考え込んだ。


「聞いた話によると、この町の人間の半分くらいが、魔物なんじゃないかってよ」


「・・・この町の人々がか?」


「ただの噂だけどな」


フロマージュの眉がピクリと動いたのを見た彼は、その噂について、フロマージュが納得してくれるであろう、話をする。


「だって考えてみろよ、この町は一度、水没してなくなってるんだぜ?毎日お祭り騒ぎできるほど、人が集まると思うか?」


「・・・・」


確かに、一度、魔物によって水没させられた町にしては、人が集まりすぎているきがする。


本来ならば、そんなことがあった町ならば、怖がって、あまり近づかないだろう。


なのに、不自然な人の集まり。


フロマージュが彼の推測を否定できないでいると、今まで近くにいた彼が、


「ま、そんな深く考えず、この町は金に困ったときに来る町にすりゃいいさ。なんせ、低級の魔物を倒しただけで賞金が貰えるんだからな!」


深く考えさせたのは、どこのどいつだ。

と、思ってしまうような気分になってしまったものの、フロマージュは


「そうだな」


と、彼の意見に同意する言葉を送った。



そして、フロマージュは、ワイワイガヤガヤと騒いでいるところに、先を急いでいるので。

と、ここを後にしようとする。


「そーかい、旅人さんは忙しいねぇ、」


そういうと、袋に詰め込まれた金貨を惜しげもなく、フロマージュに差し出す。


「ありがとうございます」


フロマージュはそれに手を差し伸べ受け取ると、その場から立ち去った。




―――――――――――――




「・・・・で、なんで、こんなにも皿が大量に積み上げられているんだ?」


「い、いや・・・その・・・・・」


実際、皿がそこに積み上げられているのだから、今は何を言っても、言い訳にしかならない。

だからレイは、ビラールと共に、黙りこくっている。


「・・・まぁ、いい、金は沢山貰えたからな」


はい。と、机の上に置かれる、ジャラリと音を鳴らせる、少し大きな袋。


「ま、まさか、こんなにもらったの!?」


「あぁ、いっぱい倒したからな」


サラリと、言ってのける彼に、レイはやっぱり心配なんてしなくてよかったんだ。と心でつぶやく。


「じゃあ、祝福もされたんじゃねぇか?」


ビラールはこの町のことを、少しは知っているかのように、そう言った。


「・・・お前はこの町で生まれたのではないだろう?

  なのになぜ、何か知ったような顔をしている?」


「この町は有名だからだよ」


ビラールはそう言うと、口角を上げ、フッと息を出した。


「・・・で、この町のことを知ったお前に、生き倒れている俺を助けてくれたお礼に、いいことを教えてやる」


「・・・・・いいこと?」


話を変え、フロマージュの気を引くビラール。


「あぁ、いいことだ」


不敵に笑う、ビラールに、少しだけ雰囲気のある、黒いオーラが漂った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ