いざ魔物狩りへ!
「・・・それ、俺も手伝います」
そう答えた、フロマージュ。
魔物を狩りに来た、彼は、そんなフロマージュを見て、クツクツと笑った。
「なんの装備もなしに、って、キミ、死に行くつもりかい?」
バカにしかされていないような口調で、そう悟られたフロマージュ。
一瞬、カチンときたフロマージュだったが、俺は装備なんてしなくても、お前みたいに低級の魔物を逃がしたりなんかしないし、一気に仕留めることができるんだよ。
とも言えないので、
「・・・では、また機会があるときにでも・・魔物退治に行くとします」
と、紳士的に、そう言い、低級魔物を逃がした彼の前から姿を消すように、レイとビラールが入っている店へと入る。
「・・・」
男はそれを見て、こうつぶやいた。
「・・・あんな奴に、賞金を持っていかれてたまるか・・」
と、・・・。
――――――――
「賞金!!!?!??」
「レイ、声、大きい」
「あ、ごめん」
フロマージュが店の中に戻ると、あんなにもテーブルを埋め尽くしていた、食材を乗せた皿が、半分以上きれいに積み重ねられていた。
あの短時間であの量をたいらげるとは・・・二人の食欲は恐ろしいな。
と感じたフロマージュ。
「・・・追加注文、頼むか?」
二人のその食欲を見て、何かひらめいたのか、フロマージュはレイとビラールに答えがわかりきっている質問をする。
「したい!・・・けど・・」
「金は平気なのか?」
ビラールに至っては、おごられる気満々だ。
意識が戻ったのなら、自分で金が払えるだろうに。
「・・・金は今からなんとかなるから、心配しなくていい」
「・・・?」
「・・・!」
今からなんとかなる。という言葉に疑問を持つレイに対し、
ビラールは今までの話の流れから言って、だいたい察しがついたようで、フロマージュに、
「・・・まさか、その賞金のでる魔物を狩る気かよ?」
と、聞いてみる。
「あぁ、そうだ」
フロマージュは、なんのためらいもなく、そう答える。
だが、よくよく考えてみると、ここで追加注文を頼み、食べて、その分のお金を払う。となると、今持っているお金で払うことになってしまう。
「・・・まさか、一人で行く気かよ?」
「あぁ、そうだ」
先程と同じ言葉を反復させる。
ビラールはどう見ても、この町の出身じゃないことぐらい、誰にだってわかることだ。
そんな、この町のことを知らない彼に、フロマージュは質問攻めにされる。
「・・・そんな格好で行く気かよ?」
と、
そして、質問された彼、フロマージュは、
「あぁ、そうだ」
と、三回目のセリフを声に出した。
すると、
「・・・危機感がねぇのかよ」
と、少しきつめの言葉のナイフで、フロマージュに切りかかる。
「・・・危機感などもったところで、あの程度の魔物、どうということはない」
あってもなくても同じことだと言う、フロマージュ。
装備も危機感も、今は必要ない。
「・・今必要なのは、金だ!」
「・・・」
「・・・」
・・・なれない奴が、ボケると、こういうことになる。
実際、金はないよりあるほうがいいに決まっている。
・・・ので、今から魔物狩りに行く。というのは、おかしな話でもなんでもない。
と、いうか、今この、食事代をなんとかするためにも、狩りに行ったほうがいいのだが、
「ん~・・・俺も、思った感じ、低級な奴しかいなさそうだし、そのままの格好でも、全然平気だと思うんだけど、・・・ん~・・」
ビラールは最後に接続語をつけたにも関わらず、最終的には、唸って自分一人で考え込む。
「・・・ビラール、俺のことはもういいぞ」
フロマージュはこの少しの時間ももったいない。と思っているのだ。
・・なぜなら、
先程の彼の言葉を聞き逃さなかったからだ。
『・・・あんな奴に、賞金を持っていかれてたまるか・・』
このセリフを言った彼はきっと、今もまだ、低級の魔物を逃がしては追いかけ・・逃がしては追いかけ・・をくりかえしているだろう。
だが、それもいつかは終わりを迎え、彼が魔物を仕留める時が来るだろう。
そうすれば、フロマージュの狙うべき獲物が減ってしまうではないか。
「・・・俺は、レイもビラールもここへ置いて、狩りへ行く気だ」
そのほうが効率的にもいいし、なによりも、スムーズに事が運ぶ。
「一人ならなおさら、そんな格好じゃ危ないよ!」
と、レイは頬に食べカスをつけたままフロマージュにそういう。
「だって、いくら低級だって言っても、この町自体が賞金出すくらいだよ?それって、普通の人じゃ、絶対に勝てないからでしょ?」
「・・・レイはまず、自分の心配をしたほうがいい。そんな無防備な間抜け面をさらしていると、いつか必ず誰かに襲われる」
頬についていた食べカスを、フロマージュは自ら、親指で取ってあげる。
「間抜け面って・・・」
レイはそうつぶやいてみるも、その言葉は、フロマージュにとっては、ただの照れ隠しだということを、知ってた。
なんの照れ隠しか・・・?
それは言わずもがな、
「・・・それじゃあ、行ってくる」
レイに心配の眼差しを向けられたからである。