生き倒れの彼と。
「ちょ、本当に大丈夫ですか!?」
倒れていた銀色の長い髪の青年の体を揺らす。
レイが声をかけたときはまだ、息の根はあった。
それに、まだ少しは心臓の機能している。
心臓の動く、ドクドクという音を耳で確認すると、レイは生きていると判断し、とある行動にでた。
「起きてください!!まだ死んじゃだめぇぇぇぇぇぇ!!!!」
そう、その青年の体を起こし、思いっきり揺らす。という行動だ。
もちろん、揺らされている体に力など入っている訳もなく、レイがその体を前後するたびに、首がもげそうになるほど揺れている。
「レイ、やりすぎだ」
それをフロマージュが止める。
このままじゃ、まだいきている青年の心臓が止まってしまうし、
何より、レイが人殺しになってしまう。
フロマージュとしては、レイが犯罪者になるなど、許されぬべき事態。阻止すべきことなのだ。
「あ、ご、ごめん」
フロマージュが止めてくれたことによって、レイの激しい動きは止まり、青年の心臓はまだ動いたままだ。
とりあえずは、そのことに一安心し、
「俺達にできることがあれば言ってくれないか?」
と、先程までピクリとも動かなかった青年の体に、優しい言葉をかけてやると、
水を得た魚のように力が戻り、いきなり首がグルンと動き、その青年はフロマージュを見た。
「・・・め、飯・・・・・・・」
追いすがるかのような瞳で、フロマージュを一身に見つめる。
が、青年は会った時と同様に、フッと意識を手放したようにコクリと目を閉じ、また地面に顔をつけた。
「・・・まさか、この人、生き倒れ?」
「・・・の、ようだな」
「・・・どうする?」
こんな路上で体一つ捨てて、生き倒れている彼を一度は救おうとしたレイとフロマージュだったが、
「・・・このままにしておくか」
見知らぬ男に食わすほど、余っているお金はない。
余っていたとしても、くれてやらないだろう。
「・・・そうだね」
見ず知らずの奴におごるほど、お人よしではない。・・・のだが・・・。
グゥ~~~
「・・・レイ・・」
その音はフロマージュの隣にいるレイから聞こえてきたものだった。
・・・さらに正確に言えば、レイのお腹が声をあげた。と、いうことだ。
「し、仕方ないじゃん!この辺すっごくおいしそうなものがいっぱいあるんだから、そ、そりゃ、お腹の一つや二つ、鳴るに決まってるじゃん!」
「少なくとも俺は鳴らない」
「私は鳴るの!」
「・・・食いしん坊」
「うるさい、のっぽ!」
「レイが小さいだけだ」
「もーーー!!フロマージュ!!!」
ああ言えばこう言う。というように、レイとフロマージュの言い合いは続く。
聞けば、若干、フロマージュのほうが一枚上手のように感じる。
そして、このように口論している内にレイの中からは、生き倒れている青年のことなどすっぽ抜けていた。
「・・・レイが腹を空かせているのなら、レイのついでに、こいつの分まで食事を頼んだらどうだ?」
「・・・ついで、ねぇ・・」
これからのことを考えると、節約をしなければいけないのだが、
「・・・それは、私はご飯を食べていいってことね?!」
「・・・そこに食いつくのか」
レイはお金のことでなく、自分の食欲を優先するらしい。
食い意地は成人男性とはり合えるほどあるが、縦に伸びないのが彼女のコンプレックスとも言える部分だが、フロマージュはそれに対して、横に伸びないだけまだマシだ、と優しくフォローする。
「・・まぁそう言うことだ。おい、お前、レイの食い意地に感謝しろ」
「ちょっ、なんてこと言うのよ!失礼でしょ、私に!」
フロマージュは地面に顔をつけ倒れ込んでいる彼に、そっとてを差し伸べた。
「・・・あ、あり・・がと・・・」
いかにも生死をさまよっていたという、げっそりとした顔つきで、彼は差し出されてある、フロマージュの手にすがりつくように、その手を握った。
青年がフロマージュの手を握ると、フロマージュはそれを確認したかのように、力を込めて、彼のひっぱりあげる。
そして、近くの店に入るまで、フロマージュが青年に肩を貸しそこまで運んだ。
「おばちゃーん!!」
店に着き、席に座るなり、レイは店員である人物を呼び、呪文のように、メニューを唱えた。
「はいよ!」
レイよりも、フロマージュよりも、青年よりも、年を重ねているであろう店員が、レイの言ったメニューをメモし終わると、ちょっと待ってな!と言って、厨房に戻った。
そして、数分が経過し、机の上は、テーブルの柄が見えなくなるくらいまで食べ物で埋まっていた。
「・・・」
フロマージュはただそれに驚愕するばかりだった。
「「いっただっきまーす!!」」
青年は食べ物のにおいがすると、すぐさま目を覚ましたという。
レイは、そんな青年と声を合わせてご飯を頂く。
フロマージュはコーヒー一杯だ。
「・・・ところで、お前、名はなんと言う?」
「俺か?俺は・・・」
青年がもちゃもちゃとご飯をかきこんだ口を動かし、喋れるように、その口に入ってある食べ物をゴクリと飲み込み、
「俺は、ビラールだ。よろしくな、お二人さん」