第5話:お父様
衛兵が何人も近づいてくる。
「誰だ!」
「領主の城と知ってのことか!」
「ただで済むと思うなよ!」
槍を突きつけ誰何している。
ああ、みんな怒ってるわ。
でも…
「私です」窓の上から声を張り上げる。
「スフィアルィーゼ様?」
「ええ、なんでお嬢様が…」
集まっていた者は驚愕に包まれた。
「それより、お父様、お父様は?」
「何ごとだ!」
懐かしい顔、ここ一年お会いできていなかったお父様だ。
「お父様」
「スフィアか?」
「そうです!」
「何でこんなもので、お前王都に居るはずだろう!」
「大事なお話があります」
私の緊迫した声に、父様は頷いた。
『スフィア!』
降りようとした私にティテが声をあげる。
「な、なに?」
『下、下! 私が切っちゃったドレス!』
(あん…そうだった、ドレスが…)
眉根を寄せた私は、降りるのを手助けしようとしてくれた衛兵を押しとどめて。
衛兵に毛布をお願いした。
***
城に入るのすらもどかしかったが、私は毛布を身体に巻き、お父様の執務室に入った。
家令のビンセントも同席している。
「王妃となる、お前が一体どうしたんだ?」
「申し訳ありません。
王子に婚約は破棄されてしまいました…」
なんだろう、言葉にすると涙が出てきた。悲しいって今まで思って無かったのに…
父は執務席から立つと私に近づいてきた。
「何があったか、話してくれるね」
「はい、はいもちろんです。
でも、先にお伝えすることがあります」
「大事なことなんだね」
私は頷く。
「ここに、アルマリン領に王家の軍が攻め込んできます。
多くの妖精戦闘機がこちらに向かっているんです。
時間が、時間がありません。
明け方には来てしまいます」
私は、一気にまくし立てた。
「なんだって…」
お父様は私の目をじっと見ると、ビンセントに頷いた。
ビンセントは音もなくドアから出ていく。
「お父様?」
お父様は私を抱きしめると、頭を撫でてくれる。子供の頃よくそうしてくれたように。
「なんで、王家がそんなことをするのか解らないが。お前が言うんだ真実なのだろう」
「スフィア。妖精戦闘機には2種類有るのは知っているかい?」
私は首を振る。
「機械と妖精が惹かれ合って一つになるものと、人が無理矢理融合させたものだ」
「……」
私はティテに出会うまで、妖精戦闘機すら知らなかった。
「最近、後者がこの国で行われるようになったと聞いた」
騎士や衛兵が走り回り、城内が慌ただしくなってきたのが分かる。
「なんで、そんなことを…」
港街の方からサイレンが聞こえ始めた。
「この国は東方で始まった、妖精商船による、航空貿易に市場を取られ、衰退してしまった」
「はい、そう教えられました」
宮廷の王妃教育でも、学校でも教えられている。
「この国も、それを行おうとして急いているようだ」
「その手段が、妖精を無理矢理融合した?」
「その方法が確立したのだろう。お前の婚約破棄はそれに、巻き込まれたのかも知れないな」
「このアルマリンにも、妖精戦闘機部隊は有る。妖精が自ら選んだ戦闘機の部隊、だがそれだけに数は少ない」
「なぜ、王子はここを攻めようと…?」
「情報が漏れたのかも知れないな」
「なにか、あるのですか?アルマリン領に」
「スフィア。ここに行くんだ。あの妖精戦闘機は操縦できるのだろう?」
そう言って、お父様に地図を渡される。
「お父様は?」
「勧告でもしてくれれば話し合いできるんだがな、お前の様子を見るに無理だろうな。
市民を避難させる。
その時間を稼ぐしかないだろう」
「そんな…」
領主として当然の判断だと分かる。だが、でも。
「お母様は?」
「お前に連れってって貰いたいが、あの機体じゃあ無理だろう。
輸送機に搬送させる
可能なら援護してやってくれ」
「お父様、私も一緒に戦います」
「お前に戦いは教えていない…」
私はじっとお父様を見る。
「お前には、王妃となることを教えてきた。民を慈しむ王妃になってほしかった」
「お父様」
「そんなに震えてて戦えるわけ無いだろう。
お前は逃げて、アルマリンを絶やさないでくれ」
「父上!」
「準備が有る、お前ももう行くんだ」
「そんな…」
「お嬢様」
いつの間にか戻ってきたビンセントに、執務室から退席させられる。
「スフィア。母に会っていきなさい」
「は…い」
「それと、着替えてからい行きなさい。目のやり場に困る」
「…」
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