第4話:アルマリン領
『それで、兵士が森に火をつけると、妖精の国の外に出ていた私たちを…』
「捕まっちゃたの?」
『そう…兵士たちは見たこともない機械を持っていて、唸るような音が響いたかと思ったら意識がなくなってた…』
「そんな、酷い」
『大切な仲間と引き離され、こんな機械に閉じ込められて…』
「なぜ…妖精だってどうやって機械に…」
『みんなに会いたい…私は帰りたい』
「ティテ…ごめんなさい」
『なんで、スフィアが謝るの?』
「人がしてしまった過ちだから…申し訳ないから」
『謝らないで、スフィアのせいじゃないから。私は帰りたいだけ、仲間の元へ』
「ティテ。今の私と一緒なのね…」
そっと、操縦席を撫でる。
『スフィア!』
「何?」
ティテが突然声を張り上げた。
『前方に妖精戦闘機の編隊がいるわ』
「追いついたの!」
『そうよ、あの機影はキ43-IIね』
「王子はファルコンって呼んでたわ」
『スフィア。スロットルを上げて機首を上げて。上から追い抜くわよ』
「はい、わかったわ」
スロットルを上げると、操縦桿を引く。
ファルコン部隊に気づかれないように、高度を上げていく。現在高度三千五百、四千、四千五百、五千。
「ティテ…何か上昇速度下がって…ない?」
『速度と高さを変換するから仕方ないわ…スフィア?どうたの!」
「さ…寒くて、息も出来ないの、とっても眩暈がするわ…」
『スフィア!寝ないで、寝ちゃダメー!
風の膜を造るから、頑張って』
「はぁはぁはぁ…」
『大丈夫?』
私は頷くのがやっとだった。
『現在高度六千。ファルコン部隊は私たちの下、高度三千を巡航中よ。この夜間じゃ見つかることはまず無いわ』
私は斜め下を覗き込んでみる。黒に隠れて良く解らないが、たまに月の光を反射する。
「なんなの…この数は…」
『数百はいそうね…』
「なんで、一領地にこんな数を…」
私がいけないの?それとも私の領地に何かあるっていうの?
「早く、早く戻らないと…」
『ん、頑張ろう』
ファルコン部隊を追い抜いた、此方の方がだんぜん速い。このまま先行してみんなに知らせなければ…
そう思ったとき、影が指した。
この空に影?
嫌な予感がする。
私は操縦桿を動かし機体を傾けると、そのまま操縦桿を引いて斜めにループを行う。
『何、どうしたのスフィア』
「何か来る!」
『え?』
頂点に達する前に見えたのは、本来自分が進んでいたであろう地点に、光点が何回も横切り、妖精戦闘機が降ってきた姿だった。
私が水平に戻す前に、降ってきた妖精戦闘機は上昇を始めていた。
『に、逃げて!』
「うん」
私は、スロットルを上限まで入れる。妖精戦闘機は再度、高度を速度に変えて私の方に向かってくる。
『大丈夫、振り切れる!』
ティテの言うとおりだった。
私たちの方が圧倒的に速く、相手は追いつくことが出来ないみたいだ。
直ぐに見えなくなる。
「だけど…」
『気づかれた…』
『高度を五千迄落して。急ぎましょう』
***
アルマリン家の領地は王都から見て、南西に位置する。
海と山を頂く広大な領地だ。
ティテの言った迷いの森も一部接している。
夜で分かりづらいが、近づいているのが分かる。
「真っ暗で何も見えないわ」
高度もだいぶ落としているが、地上からは明かりがないので目印がない。
「ティテ。灯台で焚かれてる火を一緒に探して」
『うん…あ、あれかな?』
「見つけたの?」
『左10時方向』
地平線とも水平線とも解らないが、確かに灯りが見える。
「ありがとう」
私はその灯りに向かって飛ばすと。輝く水平線と浜の稜線が見えてきた。
『どう、分かる?』
「はい」
この灯台を目印に領主の館を目指す。
領主の館は、港街からなだらかな丘の上に建てられている。夜も警備のために灯りが点けられているはず。
灯台を通過して海の上で旋回し港街の上を通って丘の上を目指す。真っすぐ伸びた道が続いている。
領主館が見えた、石造りのお城がアルマリンの領主館だ。
低空低速で、飛行し窓を後方にスライドさせる、バリバリという大きな何かを爆発させている音が飛び込んでくる。
『中は私が音を抑えてるんだけど…キャノピーを開けると全ての音が聞こえるの』
「ホントは凄い音がしてたのね」
私は、領主館の上を通過する時に、大声で叫んでみたけど、衛兵の人も驚いているだけで私とは分からないみたいだ。
『スフィア、叫んでも無理よ』
「下に降りるわ」
話せなければ、ここまで来た意味がない。
『スフィア。飛行機で一番難しいことって分かる?』
ティテが質問してきた。私は首を振る。
『飛ばすことでも、飛び立つことでもないわ。降りることよ』
「でも、やる!」
『夜間、滑走路でもない道でやることになるわよ』
「ティテ貴方を信じてるわ、助けて」
『…んー分かったわ、やってみましょう。
ここまで来たんですものね』
城を通過して再度旋回して海を目指す。同じルートで着陸を試みる。
海から港街迄に速度と高度を十分に落とす。
港街もこの飛行機の音で目覚めた人が、灯りを点け始めたようで明るくなってきた。
地面との距離もよく分かる。
『主脚下ろして』
「はい」スロットル近くのレバーを操作する。
速度がガクンと落ちる。
『フラップ下ろして』
「はい」これも左手側のレバーを操作する。
更に速度が落ちるが風を掴んだ感じだ。
『良いわよ、もう直ぐ地上よもっとスロットルを絞って』
城が見えた。
『地面に着く!』
大きな振動が突き上がり。お尻が浮き上がった。
『スロットルカット』
「はい!」
『操縦桿を引いて』
「はい!」
『ブレーキ!』
「はいーーーー!」
私は思いっきり、フットペダルの爪先側を踏み込む。
城がどんどん近づき、夜中の爆音に気づいた者が、出てきていた。
「ティテー!止まれるのーー?」
『だから、難しいって言ったじゃない!』
正面に衛兵と城門が見える。
「ど、どいてーーー!」
窓から頭を横に出して、はしたなくも大声で叫ぶ。
機体は、衛兵をかき分け、門の手前で…止まった。
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