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令嬢戦記~断罪された侯爵令嬢、妖精戦闘機で天翔けて逆転する~  作者: 奏楽雅


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3/11

第3話:妖精ティテ

私を乗せた妖精戦闘機は、私の生まれたアルマリン領へと向かっている。


空には星々が瞬き、大きな満月が南中に輝いている。


逆に下を覗くと、黒い闇に塗りつぶされている。まるで吸い込まれそうで、とても…怖い…


『ねえ、操作方法は分かった?』

「はい、操縦桿で向きを操作。左右で回転、上昇したいときは手前に下降したいときは奥に倒すよね?」

『そうそう』

「スロットルは押せば早く、戻せば遅くですね」

『うん、大丈夫そうね。難しいこと、細かいことは私の方でやるから安心してよ』


「先に…着けますか?」

王国の飛行戦隊より前に着かなければ、意味がなくなる。


『向こうは夜明けの到着だと思うから、私たちは3時間前には着けるはずよ

…ただ』


「どうしたの?」


『飛ぶことに貴方の生命力を使っているから、距離が長ければ長いだけ貴方の負担が増えるわ』


「……いい、かまわないわ、私の命が尽きても、お父様に伝えないといけない。

妖精さんお願い」


『…無理はしないでよ。あと私の名前はティテ』


「私の名前はスフィアルィーゼ。スフィアと呼んでください」


『よろしく』


「…あの、ティテはなんで、助けを求めていたの?」


『…南の森って知ってる?』


「あ、えーと、幾つも伝説や伝承がある。”迷いの森"のこと?」


『貴方達はそう呼んでるのね。

そこはね、私たちの住む妖精の国に繋がる森』


「私の知っている伝説だと」

『うん』

「迷って出られなくなるとか、出てきた人は何年も経っていたとか、財宝やお嫁さんを連れて戻った話を、小さな頃に聞かせてもらったわ」


『それは、妖精の国を訪れた人たちのお話だわ』


ティテは弾むような声になった。

だけど、その後に続く言葉は衝撃的だった。


『あのね、その森を焼かれちゃったの。

スフィア位の女の子がいっぱい兵士を連れてきて、森に火を放ったの…』


私は、思わず操縦桿から手を離して口元を抑えてしまった。


『あ。スフィア、ダメ―!』


ティテが叫ぶと、まるで左側に巨大な重りでも付いたかのように、ガクンと機体が傾き、とたんに重い機首が下を向いて落ち始めた。

「きぃゃあーーー!」

『ス、スフィア!操縦桿、操縦桿!』

ティテの叫びに、私は急いで操縦桿にしがみつく。

『回転を止めてーー、機首を上げてーーー!』

目の前の高度計と速度計の針が、狂ったようにクルクルと回り続けている。

視界は闇へと吸い込まれ、どこが空で、どこが地上かも分からない。

『……落ち着いて!スフィア。足を、ラダーを踏ん張って。まずは回転を止めてから、ゆっくり操縦桿を引くのー!』

操縦桿が重い、だけどゆっくり左右に操作して回転を止めるように力を入れる、手応えが戻ってきた。そこから機首を上げると暴れていた計器の回転が穏やかになる。ようやく、窓の向こうに頼りない水平線が戻ってきた。

『あ、危ないわよ。スフィア……』

「ご、ごめんなさい…こ、怖かった…」

心臓がドキドキしていて、歯が嚙み合わない、顔が引き攣ってしまう。

涙まで出てきた。

「でも…」

『でも?』

「今のでなんか分かった気がするわ」

『?』

「すこしだけ、良い?」

『え、な…にぃーーー!』


私は、スロットルを押し込むと、機体を加速させる。背中がどんどん席に押し付けられる。

『スフィアーー。ど、どうしたのーー?』

一気に上昇させると、地平線が丸いことに気づく。満天の星空が迎えてくれる。そこから操縦桿を押し込んで降下させる。

高度を利用して速度に変換すると、速度がグングン上がっていく。

『速い、速いわよ!スフィア!ヤダー!どうしちゃったのーー!』

そこから操縦桿を半分ほど引いたままにすると、上から押し付けられるような感覚を受ける。機体は弧を描いて天と地が逆さになった。

そこでロールをして水平にすると、右に90度傾ける。

左の翼が天を、右の翼が地を指し示す。

右足に力を入れ再度操縦桿を引いて水平に弧の軌跡を描く。計器が南西を示したときに水平飛行に戻した。

「す、すごいわ、私に翼が生えたみたい!」

『な、なに、なんなの?どうしちゃったのよー?』

「さっきのことで、高さが速さに、速さが高さになるって分かったの」

『え、なんで?あれでわかったの?』

「はい」

自分でも興奮しているのが分かる。生まれて初めての感覚かもしれない。


『操縦桿を半分だけ引いたのは?』

首を傾げて思い出す

「何となく、危ないかなって」


私はこんな時なのに笑顔になっていた。


お読みいただき有難う御座います。

少しでも面白いと思っていただけたら、どうか★をお願いいたします。

作者が折れないため是非ご協力ください。

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